本文に移動

[コラム] 李明博の本当の費用

登録:2015-02-17 21:32 修正:2015-02-18 15:26

 この頃李明博(イ・ミョンバク、MB)前大統領の自叙伝『大統領の時間』とそれに対抗する『MBの費用』が世間の関心を集めている。『MBの費用』の著者が主に指摘しているように、MBは4大河川、資源外交、富者減税などを通して国庫を100兆ウォン(1円=9ウォン)以上浪費し、貧富格差を拡大させ、さらに経済成長も達成できなかったことは明らかだ。ところで、私はMB政権末期に「MB政権は本当に失敗したのか」という問いを投げかけ、MB政権は国民には荷物を抱かせた政府かも知れないが、主な支持者である金持ちたちの要求は「忠実に聞き入れた」政権だったと話したことがある。 ところが今になって考え直してみれば、MBの費用はこのような金額で推算できない本当に莫大なもので、それは次世代までずっと支払い続けなければならないものだという気がする。

 まずMBは“富者減税”、企業フレンドリー政策で20大財閥には500兆ウォン以上の収益を抱かせたが、MB政権の5年間に家計負債は300兆ウォン程度増え、労働所得分配率が低下するなど社会分裂の後遺症が深刻だ。 資本主義社会で資本とは単純に金額の問題ではなく支配関係であるが、政権が政策を通じて富を上層に移転させれば、大資本がすべての経済主体や社会構成員を一層一方的に支配し、中小企業の技術開発余地を挫折させ、労働者の勤労意欲が失われるのはもちろん、市場の強者が弱者を没落させ搾取できる持続的な土台が形成される。 貧困層の高い自殺率と財閥2世の“強者の振るまい”は単に外にあらわれた現象に過ぎず、世襲資本主義の固着による経済生態系の荒廃化、消費低下、自営業者の没落など不平等による国民の苦痛、それに伴う社会経済的費用は計算自体不可能だろう。

 第二に、MBは国家情報院、検察など国家安保と正義を生命とする機関を、国内政治の道具として活用し、反対派を敵と見なして深刻な腐敗前歴者でも“味方”なら無理にでも登用しようとした。 そのために国家の指導層と公共機関の信頼は激しく下落した。 昔も今も企業が活力を持つためには、政治が透明で法が公正でなければならず、政府が税金を多く集めて福祉を拡大するには必ず政治社会勢力との間に妥協の文化が作られなければならず、国民が政府を信頼してこそ可能であるのに、権力機関が政治の道具と化して法が偏向的に執行されれば、金持ちが投資を忌避したり脱税をするだろうし、官僚のモラルハザードを防止することはできないだろう。すべての先進福祉国家は、社会的妥協と政府の透明性、社会信頼の上でのみ可能だったが、政府が嘘をつき公安機関が横行し批判勢力を敵と見なすような国が“福祉国家”になることは絶対にできないわけだ。

 第三に、非現実的な対北朝鮮強硬政策に固執して、開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)に投資した企業らに大きな損失を負わせ、第2開城工業団地建設など対北朝鮮経済交流の道を遮って数十兆の追加収益を放棄した。 そして対北朝鮮強硬論は、北朝鮮の延坪島(ヨンピョンド)砲撃正面対抗で南北間の緊張を高め、結局米軍の駐留コスト増大と追加武器購買の名分を作り、韓国が北朝鮮を携えてユーラシアに進出できる機会を失った。 結局、南北関係で自分の足を打ち、足の治療費に代金を払って、長期治療のために主治医に金を抱かせたことと同じだ。

キム・ドンチュン聖公会大学社会科学部教授 //ハンギョレ新聞社

 朴槿恵(パク・クネ)大統領も口さえ開けば「経済、経済」と言うが、経済は決して社会と分離して一人でうまくいくものではない。 土壌が良くてこそ植物が育ち花が咲くように、健康な社会経済生態系、信頼、社会統合などの資源があってこそ経済も生き返る。 財閥企業の総資産がいくら増えても、それが土壌を砂漠化した結果として得たものならば、実際の社会的総損失は短期利益を圧倒するだろうし、将来その企業や国家経済も持ちこたえることはできないだろう。

 “旧時代の末っ子”である盧武鉉(ノ・ムヒョン)が任期を終える頃、韓国は民主化と産業化を越えて地球化、サービス経済、少子高齢化時代に合わせた新しい経済モデルと福祉国家建設に進むべきだった。ところで今の朴槿恵政権はどうなのか?

キム・ドンチュン聖公会大学社会科学部教授

韓国語原文入力:2015/02/17 19:11

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/678890.html
訳J.S(1856字)

関連記事