国家情報院が大統領選挙世論操作の疑いを受けている職員キム・某氏の行跡を外部に知らせた現職職員を罷免して前職職員と共に検察に告発したという。 キム氏の行跡を前職職員に知らせた行為が国家情報院法上の政治関与禁止と国家情報院職員法の職務上の秘密漏洩に該当するという理由だ。 盗人猛々しいの一言に尽きる。 政治的中立を守らねばならない国家情報院職員として、大統領選挙関連コメントを作成したキム氏の活動自体が政治関与禁止に違反した行為であるから、これを知らせたことは逆に保護さるべき公益的行為と見るのが当然だ。
国家情報院が "公益的内部情報提供" をした職員を罷免して検察に告発までしたのは、マスコミを通じて国家情報院の不法行為が次々と露呈するや、内部を統制するためにとった措置と見られる。 国家情報院のこのような行態は根が深い。 昨年末と今年初めにポッドキャスト放送<ナコムス(私はセコイ)>の進行者たちとピョ・チャンウォン前警察大教授を告訴したのに続き、今月初めには<ハンギョレ>記者とホームページ管理者などを告訴した。 それに今回の職員懲戒と告発まで、すべて掌で天を遮ろうとする浅はかな行為と言わざるを得ない。
これまで明らかになったコメント内容を見れば、今回の事件を「対北心理戦」だとする国家情報院の主張はとんでもない詭弁といって過言でない。 キム氏と潜伏したイ・某氏が書いた文は大部分、対北心理戦というよりは対南心理戦に近いものであり、政治関連の文は概して野党や野党候補を批判し政府与党や与党候補を擁護する内容だった。 国家情報院自らキム氏が心理情報局所属であることを認めた以上、そこに所属したという3~4個のチーム60~70人余りがほとんどキム氏のような活動をしたものと推定するのが常識に合っている。 ならば組織的に政治介入、選挙介入をした可能性が大きい。 単に国家情報院法違反の次元を越え、国紀紊乱に該当し得る事案だ。 国家情報院長の裁可なしでなされたとは見難い。
このように疑惑が雪だるまのように膨らんでいるにもかかわらず、朴槿恵(パク・クネ)当選者とセヌリ党は「我関せず焉」を決め込んでいる。 しかし国紀紊乱の容疑をそのままにして新政府が順調にスタートできると期待することは難しい。
民主党がキム・ヨンパン ソウル警察庁長を告発したのに続いて今回国家情報院が前・現職職員を告発した以上、もはやボールは検察の手に移ったわけだ。 警察は何ヵ月も事件を引きずりながら「もしやと思ったらやはり」の限界を露呈している。 検察が "政権の侍女" の役割をしてきた過去の不名誉をそそごうとするならば、今度こそまともに捜査しなければならない。 心理情報局の活動全般と「対北心理戦」を誰が企画・指示したのかも明らかにすることを望む。