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[寄稿] 増税なき普遍福祉論の運命/キム・ヨンハン

登録:2013-01-15 19:40 修正:2013-01-16 00:24
キム・ヨンハン成均館(ソンギュングァン)大教授・経済学

 大統領選挙が終わった年末、国会では以前には見られなかった珍しい光景が広がった。 与野党が予算案に合意したのだ。 更に意外な風景は、福祉予算を当初政府が申請した金額より2兆2000億ウォンも多く使っても良いと与野党が合意し増額したのだ。 その結果、2013年国家総予算の342兆ウォンの内 100兆ウォン以上が福祉予算に配分されたが、このように人情に厚い心で外観上は我が国が普遍的福祉国家のように見えるようにした与野党政治家たちは果たして‘善良なサマリア人’なのか?

 すでに2013年予算配分が終えられた無償保育、半額授業料、庶民社会保険支援規模をはるかに跳び越える2014年から実施予定の4大重症疾患治療費国庫負担、基礎年金導入、高校無償教育、小学校終日学校などの普遍的福祉事業の合理的な予算確保方案まで用意した政治家たちならば、彼らは本当に‘善良なサマリア人’であるに相違ない。

 しかし寒々しい現実は、来年から予想される幾何級数的な財政負担増は別にしても、直ちに2013年度の福祉予算増額が財政赤字につながらないようにする合理的な税収拡大方案に関する議論が全くないという点だ。 わずかに非課税および租税減免の縮小など間接増税案が提示されたものの、実際に予想される財政負担増加額に比較すればはるかに及ばない。 すなわち、つじつまが合わない算法を根拠に‘善良なサマリア人’のフリだけしたい、実状は‘悪いサマリア人’に近く見える。

 すでに約束した普遍的福祉財政を充当するためには相当規模の増税が避けられないという点を国民に説得する正攻法を選ばなければならない。 もし高所得層など既得権層の抵抗が恐ろしくて付加価値税のような間接税収入を高める方式で予算を充当する姑息な手を用いる場合、このような普遍的福祉が結果的に貧富格差および社会的葛藤をより一層深化させることは自明だ。

 普遍的福祉体制に進む唯一の道は、不要不急な予算浪費を最小化する努力と共に、高所得層に対する増税しかないことは否定できない現実だ。 もし高所得層の租税抵抗を説得する政治的真正性がないならば、この‘対策なき’普遍的福祉スローガンは持続可能な政策目標ではなく、単に大統領選挙用得票戦略であったことが明らかだ。

 ほぼ同じ時期に大統領選挙を行った我が国と米国を比較してみれば、いろいろ興味深い特徴が発見される。 結果的に米国では進歩政権が当選した後に保守-進歩の間隙が大きくなっているが、我が国では保守政権の当選後、保守と進歩の別なく全て普遍的福祉を叫んでいる。 しかし本来憂慮すべき点は、普遍的福祉政策を実行する方法、すなわち必要な予算を確保するためには富裕層に対する増税が避けられないという点を誰も説得しようと努力していないということだ。 反面、米国の進歩政権は‘財政の崖’の危機に処しても高所得層の税率引き上げが避けられないという真実を有権者に説得しようとする努力を怠らなかった。 この点が私たちと彼らの差異だ。

 6000年余りの人類の歴史を振り返ってみれば、費用が支払われない便益はなかった。 犠牲のない歴史発展がないことも言うまでもない。 去る選挙過程だけでなく、選挙が終わった今日までも続いている分裂した私たちの社会の傷跡を治癒しようとする普遍的福祉政策は、富裕層など既得権層の‘犠牲的寄与’なしには不可能だ。

 もう租税減免恩恵縮小や地下経済陽性化のような対策なき議論ではなく、増税に対する富裕層の同意を勝ち取る正攻法を選ばなければならない。 そのような政治的力量と真正性がないならば‘普遍的福祉’を云々する政治的偽善は4大河川事業の失敗よりはるかに早くその終末を迎えることになるだろう。

キム・ヨンハン成均館大教授・経済学

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/569768.html 韓国語原文入力:2013/01/15 19:19
訳J.S(1696字)

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