米国が中東の紛争で繰り返し活用してきたクルド人を再び呼び寄せている。
イラクにいるイランのクルド人反政府勢力がイランの領内に入ったという「FOXニュース」の4日付報道は、イラン戦争勃発以来言及されていた米国の「クルド人投入説」が現実化していることを示している。イラクのクルド自治政府側はこれを否定しているが、両国の国境地域でイラン系クルド人が戦闘や妨害作戦を準備しているものとみられる。
CNNは3日、米国中央情報局(CIA)がイラン情勢を不安定化させるための秘密作戦の一環として、数か月前からイランのクルド人勢力を支援してきたと報じた。彼らにはすでに一部の武器が提供されており、イラクにいるイランのクルド人勢力がイランに進入し、新たな戦線を開く武装部隊を準備していると、ニューヨーク・タイムズなどが4日付で報道した。CIAのクルド人武装工作はイラン政府を揺さぶるための長年のもので、目新しいことではない。このため、イラクにいたイラン系クルド人がイランに入ったとしても、今のところはかく乱のための象徴的なレベルとみられる。
にもかかわらず、クルド人を動員した地上工作はイラン政府にとって大きな負担となることは明らかだ。開戦初日から米国とイスラエルは、クルド人が居住するイラン北西部を空爆し、軍事・警備施設や主要道路を破壊した。クルド人の侵入を助け、イラン政府軍の作戦を妨害するためだ。
イランのクルド人がイラン国内で本格的に戦闘を展開し、地上戦線を開くことは、大きな危険要因をはらんでいる。イラン政府の大規模な反撃と報復を受ける可能性があるためだ。1991年の湾岸戦争以降、中東戦争に動員されたクルド人が直面していた典型的な代償だった。
トルコ、イラク、シリアなど周辺国も(クルド人の動員に)敵対的だ。これらの国々、特にトルコは地域のクルド人の自治と独立を最大の安全保障上の脅威とみなしている。クルド人が中東戦争に動員され、戦争後に何度も報復を受けた理由は、クルド人問題においてこれらの国の立場が一致しているからだ。
クルド人も介入に慎重な態度を示している。特に、地域内の4カ国の中で最も安定した地位を占めるイラクのクルド自治政府のクバド・タラバニ副首相は声明を発表し、自分たちの地域は「地域紛争の一部ではない」とし、「中立の立場を取る」と述べた。イラクのクルド人はイラン戦争に巻き込まれた場合、得るものより失うものの方が大きいとみている。イラク国内のイランのクルド人の一部指導者も米国との協力に躊躇していると、ニューヨーク・タイムズは報じた。
米国は1991年、イラクのサダム・フセイン政権によるクウェート占領が引き金となった湾岸戦争の際、イラク北部のクルド人を扇動して反乱を起こしたが、その後関係を断絶した。フセイン政権はクルド人を残忍に鎮圧し、数万人が死亡したと推定されている。2003年のイラク戦争の際も、イラク北部でクルド人武装勢力ペシュメルガと米軍特殊部隊が同盟を結び、第2の地上戦線を開戦して成果を上げた。しかし、イラク戦争における米国のクルドおよびシーア派への支援は、結果的に内乱と内戦をさらに悪化させる要因でもあった。イラク内戦はシリア内戦へとつながり、2014年にはクルド人地域でスンニ派の準国家的武装勢力であるイスラム国(IS)の急速な台頭へと発展した。米国はシリアのクルド人武装勢力の人民防衛隊(YPG)を中心にシリア民主軍(SDF)を結成し、ISを追い出すための戦争を行った。その最中にも、トルコはシリア民主軍を攻撃し、あからさまにけん制した。
ISが敗退した後、シリアのクルド人は北東部で自治政府を樹立できず、当時の政権とトルコのけん制を受けた。昨年トルコの支援を受けたアフマド・シャラア(現シリア暫定大統領)が率いる反政府勢力(シャーム解放機構)がアサド政権を倒し、政権を掌握した後、シリアのクルド人はトルコとシャラア政権から攻撃を受けている。今年1月初め、シャラア政府軍はアレッポ周辺でシリア民主軍(SDF)を攻撃し、敗退させたことで、シリア北東部に形成されていたクルド自治地域ロジャバを事実上解体した。
中東戦争の際に繰り返し利用されてきた歴史を考えると、クルド人がトランプ米大統領の「代理戦争」の要求に全面的に応じるのは容易ではないとみられる。さらに、イラク内のイランのクルド武装勢力を米国が支援した場合、トルコなど周辺国の反発が大きくなる可能性がある。