「戦争拡大、高コスト、長期戦」
死去したイランの最高指導者が立てた戦略がドナルド・トランプ米大統領の虚を突いた。「低価格無人機」を掲げたイランが中東全域を戦争に引き込むことで、国際エネルギー価格や物価の急騰を誘導し、11月の中間選挙を控えたトランプ大統領を圧迫しているものとみられる。
3日(現地時間)付の「フィナンシャル・タイムズ」などの報道によると、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師と軍の指導部は昨年6月に「12日間戦争」後の中東地域のエネルギー施設と航空運航に打撃を与える計画を立てた。中東全域を火の海にし、原油など国際市場に激変をもたらすことで、米国とイスラエルが負担を感じて攻撃を中止せざるを得なくする戦略だ。
先月28日、米国とイスラエルの攻撃で最高指導者らが死亡したことを受け、この戦略は直ちに実行された。イランは米軍基地や大使館、中東諸国のエネルギー施設、国際空港、港、ホテルなどに対する広範囲な攻撃を行った。イラン政権内部の関係者は「我々はすべての人が状況を直視できるように戦争の拡大を選び、大きく火をつけるしかなかった」とし、「イスラム共和国の首長が標的になったのに、何も起こらないと思っているのか」と同紙に語った。
イランの反撃が大胆かつ迅速だったのは、政府と軍の指導部が有事に備え意思決定権を分散させる準備をしていたからだ。昨年6月の戦争時に突然の打撃で指揮部の空白が生じたことを補完したものだ。当時地下バンカーに避難していたハメネイ師が、今回はわざと首都テヘランの官邸に留まり「殉教者」になる道を選んだのではないかという分析もある。ハメネイ師が死亡しても、イラン政権が安定的に維持され、反撃できるように備えていたという意味だ。米国とイスラエルの爆撃で死去した後に形成されたハメネイ師に対する追悼ムードは、イラン国内の反政府デモの拡大の原動力をかなり抑える役割も果たした。
イランは戦術的には低価格の無人機(ドローン)で高価な防空ミサイルを消費させることで、米国の「戦争コスト」を引き上げる戦略を採用している。ガーディアンは2日、先月28日の開戦以降、イランが1000機以上のシャヘド136など自国製の無人機を飛ばしたと報じた。約5万ドルのシャヘド136を撃墜するために、400万ドルに達する防空ミサイルが2、3発使われることもあった。今後、防空ミサイルを使い果たした場合、イランが蓄えていた超音速ミサイルでイスラエルの指導者の官邸や中東諸国の海洋淡水化施設などを攻撃し、戦局を揺るがすのではないかという懸念もある。トルコのアナドル通信は、米国が先月28日の一日だけで7億7900万ドルを投入したであろうと報じた。
より根本的に、イランは「長期戦戦略」でトランプ大統領が負うべき「政治的コスト」を高めることで圧力をかけていると、ニューヨーク・タイムズ紙が分析した。戦争が長期化するほど国際エネルギー価格が上昇し、米国を含む世界各国に物価上昇をもたらす可能性がある。また、長期戦と米軍の死傷者の増加は、トランプ大統領の主な支持層であるMAGA(アメリカを再び偉大に)勢力や若者層が望むことではない。イランはこれにより大統領支持率を下げ、11月に行われる米中間選挙に影響を与えようとしている。特にロシアのガスへの依存度を減らすため中東産エネルギーの購入を増やしてきた欧州が、米国に早期終戦に向け圧力をかけるだろうと同紙は見通した。一方、米国はイランの核プログラムや弾道ミサイルの脅威を取り除き、イスラム共和国体制の崩壊などの主要目標を達成する前に後退することを受け入れないだろうという見方もある。
現在、イランの国政運営権を握っているとされるアリ・ラリジャニ最高国家安全保障委員会事務局長は2日、ソーシャルメディアのXへの投稿で、「米国とは異なり、イランは長期戦を準備してきている」としたうえで、「私たちはどんな代償を払っても6000年の歴史の文明を守り抜き、誤った判断を下した敵に後悔させる」と綴った。