イスラエル国防軍(IDF)の地上作戦が、ガザ地区を一定期間南北に分断する結果を生むという予測が出ている。
イスラエルが「ハマス根絶」のために北部攻略に焦点を合わせており、軍事作戦が終わった後に明確な政治的解決策を提示するのも難しいからだ。こうなると、ガザ地区は「当面の間」イスラエル軍が占領した北部と避難民が集まっている南部に分断される可能性がある。
ワシントン・ポスト紙は30日(現地時間)付で、「イスラエル軍、秘密に包まれたガザで地上攻撃の初期段階へ」という見出しの記事で、イスラエルの軍事専門家の話として、「イスラエル軍は大規模なDデー攻撃(一斉攻撃)の代わりに、慎重に数マイルまたは100ヤード(約90メートル)ずつ前進し、ハマスが隠蔽した爆発物とトンネルを見つけだすことで、(北部の主要都市)ガザ市周辺に戦車と兵力を迅速に配置できる道を作っているものとみられる」と報じた。
海外メディアは、イスラエル軍の最近の動向を、地域をナイフで薄く切り取るように清掃し掌握していくという意味で、「スライス戦法」と呼んでいる。
イスラエル軍はこれと共に、ガザ地区北部の住民に繰り返し「南部への退避」を強く勧告している。これはイスラエル軍が、ひとまずガザ地区の首都に当たるガザ市の位置する北部地域を掌握した後、そこに集まっているハマスの戦力と基盤施設の完全な破壊を目指していることを強く示唆するものだ。
軍出身で国防長官などを歴任したナフタリ・ベネット元首相も28日、「ガザ封鎖計画」と題したソーシャルメディアへの投稿で、イスラエルはハマスが降伏し、すべての人質を解放する時まで、ガザ地区を半分に分けて北部を掌握すべきだと主張した。
また、ガザ地区内部に境界に沿って幅2キロメートルの安全地帯を作ることを提案した。ガザ地区を南北に分断し、北部に住んでいた住民を南部に移住させ、そこを事実上の「無人地帯」にしようという案だ。
イスラエルのニュースサイト「シチャ・メコミット」も同日、イスラエルの最終目標が伺える興味深い文書を示した。同サイトの記事によると、イスラエル情報省は13日、ガザ地区の南北を分け、長期的に住民をエジプトのシナイ半島に強制移住させることを提案する報告書を作成した。
つまり、ガザ地区北部に大規模な空爆を含む攻撃を浴びせ、住民の大半を南部に移住させた後、次第に南部に対する圧迫を続け、220万人にもなるガザ地区の住民をエジプトのシナイ半島に押し出すという内容だ。
情報省は「残りの二つの案である(西岸地区を統治する)パレスチナ自治政府のガザ地区の統治と、(ハマスに代わる)新しい地域政権の樹立は、現実性に欠ける」と一蹴した。しかし、イスラエルが実際にこのような対応に乗り出した場合、「ガザ地区の問題はガザ地区で終わらせなければならない」としてパレスチナ難民の流入を強く牽制するエジプトとの摩擦が予想される。
この報道に対しイスラエル首相室は、同文書は仮説的な概念を提示したものに過ぎないと説明した。国防省も、ガザ地区問題に対する初期の考えに過ぎず、戦後は考慮されていないと反論した。しかし、文書を暴露した「シチャ・メコミット」は、住民に南部への移動を求めたイスラエル軍の通告や最近の作戦の様子から、この計画が結果的に実行されていることが分かると主張した。