イスラエル軍が29日(現地時間)、ガザ地区北部とイスラエルを結ぶ唯一の通路であるエレズ検問所周辺地域に侵入し、ハマスと交戦するなど地上軍浸透作戦を強化した。イスラエル軍は25日、ガザ地区北部の限られた地域を対象にした浸透作戦を本格化してから、浸透作戦の強化を図ると共に、徐々にその範囲を広げている。
AP通信などの報道によると、イスラエル軍は同日、エレズ検問所近くの地下トンネルを抜けるハマス戦闘員たちと交戦したと発表した。イスラエル軍は、この戦闘でハマス戦闘員4人が死亡し、1人が負傷しており、近隣地域の戦闘でも数人のハマス戦闘員を射殺したと明らかにした。戦闘過程で迫撃砲数発の撃ち合いが続き、ガザ地区国境近くのイスラエル地域に空襲警報が鳴った。「タイムズ・オブ・イスラエル」が報道した。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は同日、ガザ地区北部で射殺されたハマス戦闘員たちは戦術司令部所属で、現場指揮を担当していたと述べた。また「地上軍を援護し、テロ組織の基盤施設を除去するため、大規模空爆も行った」と説明した。さらに「我々は地上軍の活動を徐々に拡大し、軍の(作戦)範囲も広げている」とし、「地上戦の作戦は極めて複雑であり、わが軍の安全確保に必要なすべての措置を取っている」と付け加えた。
ハマスも北部国境地域で戦闘が行われたことを確認し、ハマス戦闘員たちがイスラエル軍に迫撃砲を発射し、戦車をミサイルで攻撃したと主張した。この地域の中心都市ガザ市のハマス側の公務員シャバン・アメド氏は「イスラエルが我々を世界から孤立させ、完全に掃討しようとしているが、抵抗する戦闘員たちがイスラエル軍を数メートル先で阻止したことを誇りに思う」と語った。
イスラエル軍は同日、ガザ地区北部に浸透したイスラエル軍が作戦を展開する映像も公開した。この映像には複数の戦車が小さな砂丘を横切り、ブルドーザーで鉄条網などの障害物を片付ける様子などが収められている。黒い煙が上がる丘で歩兵たちが戦車に続いて進撃する場面もある。ロイター通信は、最近の動きを見る限り、イスラエル軍がガザ市の完全な包囲を目指しているようだと指摘した。
イスラエル軍のガザ地区北部への攻撃が激化したことで、ガザ市のアル・クッズ病院に避難している民間人1万2千人余りの命が危険にさらされていると、パレスチナ赤新月社が警告した。赤新月社はソーシャルメディアのX(旧ツイッター)への投稿で、「病院から50メートルの場所が空爆を受けた」とし、病院で治療を受けている数百人の患者と1万2千人余りにのぼる避難民が危険な状態にあると指摘した。赤新月社のマルワン・ジラニ事務局長はBBCとのインタビューで、「病院の近くで大きな爆撃が起きた」とし、病院から数メートルしか離れていないところにミサイルが落下したと述べた。「アルジャジーラ」は、この病院の前庭には避難場所を求める住民が大勢集まっており、イスラエル軍の爆撃を避けるため、住民数百人がこの病院に身を寄せていると報じた。
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長も、イスラエル側がアル・クッズ病院からの退避を通告したことについて、強い懸念を示した。テドロス事務局はソーシャルメディアのXへの投稿で、「患者の生命を危険にさらすことなく、多くの患者を抱える病院から退避することは不可能であることを改めて指摘する」とし、「国際人道法によると、病院は常に保護されなければならない」と強調した。しかし、イスラエル軍のハガリ報道官は同日、最終通告に近い発言で北部住民に迅速な退避を求めた。ハガリ報道官は「我々はこの2週間、北部住民に南部への一時退避を要請してきた。もうこれは(本当に)緊急要請だ」と述べた。