米国は先端半導体などをめぐる対中輸出統制に韓国など同盟を引き入れようとしており、韓国企業などの対中投資において不確実性が高まっていると、米国専門家が指摘した。
ケビン・ウルフ元米商務省次官補(輸出統制担当)は5日、ワシントンの韓国特派員たちとのインタビューで、米国企業の先端半導体製造装備やスーパーコンピューター技術などの販売禁止は「中国の兵器開発と生産、現代化計画」の深刻性に対する認識のためだと述べた。 ウルフ氏は、中国は商業用技術の軍事転用に積極的であるうえ、ウイグル族の監視など人権侵害にもそれらの技術が使われるため、(米国の)軍民「二重用途(デュアルユース)」の製品と技術に対する本格的な輸出統制が始まったと説明した。
バラク・オバマ政権で次官補を務めたウルフ氏は、冷戦終結後、効用性が低下したように見えた輸出統制は、ロシアのウクライナ侵攻により米国が主導し、韓国など計37カ国が加わった対ロ輸出統制で再点火されたと述べた。さらに「ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が9月の演説で、冷戦終息以来初めてロシア以外の国である中国に対して、戦略的目的を体制するための輸出統制を公に呼びかけた時」が重要な転機となったと語った。氏は「サリバン補佐官は先端コンピュータ機能、先端半導体、複雑で精巧な設計作業に必要なコンピュータアプリケーションに言及した」とし、「10月7日に米国が発表したのは、そのような巨大な戦略政策のビジョンにともなう実行規定」だと説明した。
ウルフ氏は、米国がまず自国企業だけに半導体装備などの輸出統制を課しているが、このままでは自国企業だけが損害を被り、統制効果は減少しかねないため、同盟国の参加を求めていると述べた。氏は「米国政府には類似の統制を施行できる他の同盟国を確保する努力が非常に重要だ」として、主要半導体装備と製品の生産国である米国、韓国、日本、オランダ政府の間に「共通の利害に基づき、類似の統制で歩調を合わせるよう求める」動きがあると伝えた。
ウルフ氏は、中国に進出しているサムスン電子とSKハイニックスが米国産半導体装備の購入問題で1年間の適用を猶予されたものの、その後は不確実性がかなり高いと述べた。また、半導体の投資は数年を見越して行うとしたうえで、「1年後に中国にファウンドリ(半導体委託生産)工場がある(中国企業以外の)4社と取引することは、違法となる可能性がある」と語った。さらに、米国が巨額を投資した韓国企業などの事情を踏まえ、中国が先端半導体の生産能力を確保できなければ、韓国企業に対する猶予措置が数年延長される可能性があると予想した。
ウルフ氏はまた、輸出統制対象は中国企業などがまだ本格的に参入できないレベルの製品・技術なので、それ自体では経済的影響は小さい可能性があり、米国政府もサプライチェーンへの衝撃の最小化に努めていると語った。だが、企業が追加規制をはじめとする不確実性を懸念し、対中投資をためらうなど、「実際の規制の範囲を越える心理的影響」を受けると予想した。
同盟国の不満を招いた「インフレ抑制法」に関しては「この法と輸出統制は完全に異なる政策目標を持っている」としながらも、「同盟国が米国に対して二つの問題を結び付けて反応することは納得できる」と述べた。ウルフ氏は、バイデン政権が「二つの問題に対する同盟国の懸念を非常に敏感にとらえるだろう」としたが、「まだ答えを持っていないものとみられる」と話した。