15日(現地時間)、インドネシアのバリ島で開かれた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と中国の習近平主席の韓中首脳会談は、両国首脳が2019年12月以来2年11カ月ぶりに顔を合わせ、関係改善と疎通強化の意志を固めたという点で意味がある。しかし、25分間の短い会談で、両首脳は北朝鮮の核・ミサイルの脅威や米国主導のサプライチェーンの再編など懸案に関する認識の相違を表わした。
両首脳は温かい言葉で会談を始めた。尹大統領は今年が韓中国交正常化30周年であることを想起し、「ソウル梨泰院(イテウォン)で起きた惨事に哀悼の意を表していただき感謝申し上げる」と述べた。これに習主席も「両国は非常に近い隣人であり、切っても切れないパートナー」だと応えた。先月起きた韓国の梨泰院惨事に関しても「心からのお悔やみ申し上げる」と語った。
両首脳は対話の枠組みの新設に共感するなど、対立要素を管理し意思疎通を強化することで合意した。大統領室は「(尹大統領が)韓中両国間の高官級対話を定例かつ活発に進めていくことを提案した」とし、「これに対して習主席は、高官級対話の活性化に共感を示し、韓中両国間の(半官半民の)1.5トラック対話体制も構築しようと述べた」と伝えた。
しかし、主要懸案をめぐる隔たりはあまり埋まらなかった。特に北朝鮮の核とミサイル問題に関して、尹大統領は習主席に積極的な役割を要請した。尹大統領は「北朝鮮が前例のない頻度で挑発を続け、核・ミサイルの脅威を高めている」とし、「安全保障理事会常任理事国であり隣接国として、中国がもう少し建設的な役割を果たすことを期待する」と述べたと大統領室が伝えた。
これに対して習主席は「韓中両国は朝鮮半島問題において共同の利益を持つ。平和を守っていかなければならず、韓国が南北関係を積極的に改善していくことを望んでいる」と述べ、中国ではなく韓国の役割を強調した。習主席はさらに、北朝鮮が非核化の決断をすれば経済支援を行うという内容を盛り込んだ尹大統領の「大胆な構想」についても、「北朝鮮の意向がカギだ。北朝鮮が呼応した場合は、大胆な構想がうまく履行されるよう積極的に支持し、協力する」と述べた。「北朝鮮の呼応」を前提に支持するという「条件」をつけたわけだ。中国は北朝鮮の核問題に関して、米国の責任もかなりあるという態度を堅持している。実際、中国は4日、北朝鮮の弾道ミサイル発射など武力示威に対する国連安保理の追加制裁に反対した。
尹大統領が「韓国政府の外交の手段と方法は普遍的価値と国際的なルールに基づいている」とし、「アジアと国際社会の自由、平和、繁栄の増進において、中国の役割が非常に重要だ」と強調した点も微妙だ。これは中国に「普遍的ルール」の順守を遠回しに要請したものとみられる。
サプライチェーンなど経済分野でも習主席は強硬な態度を示した。中国官営の「中国中央テレビ」(CCTV)は、習主席が「グローバル産業網とサプライチェーンの安全と安定、円滑な流れを共に保障しなければならない。経済協力を政治化し、汎安保化することに反対すべきだ」と述べたと報じた。習主席はさらに「(韓中)二国間自由貿易協定(FTA)の(2段階)交渉を加速化し、先端技術製造業、ビッグデータ、グリーン経済などの分野の協力を深め、国際自由貿易体系を共同で守護しなければならない」と付け加えた。半導体サプライチェーン協議体(CHIP4)をはじめ、対中国封鎖のために米国が主導する多国間協議体への参加に対して向けられた発言とみられる。これはまた、13日に韓米日首脳が北朝鮮だけでなく中国に対する牽制を鮮明にした「インド太平洋における韓日米3カ国パートナーシップに関するプノンペン声明」への強い反感を示したものとも言える。3カ国首脳は、サプライチェーンの強化などに向けた韓米日経済安保対話の新設とインド太平洋経済枠組み(IPEF)における協力の強化を声明に盛り込んだ。
習主席は「中国は韓国と共に中韓関係を維持発展させ、主要20カ国など多国間プラットフォームでの意思疎通と協力を強化すると共に、真の多国間主義を共に作り上げ、世界により多くの肯定的なエネルギーと安定性を提供することを望んでいる」とし、「真の」多国間主義を強調した。これは中国側が米国の対中国圧迫戦略を「保護貿易」と「一方主義」と批判する時に主に登場する用語だ。韓国の対外政策基調が急速に米国寄りになっていくことについて、習主席が尹錫悦政権を遠回しに批判したものとみられる。
両首脳は互いに訪問を要請した。大統領室は「習主席はこれまで新型コロナウイルス感染症のパンデミックで韓国を訪問できなかったが、新型コロナの状況がある程度落ち着けば、尹大統領の訪韓招請に喜んで応じるとし、互いに都合の良い時期に尹大統領が中国を訪問することを希望した」と伝えた。ただし、解釈によっては習主席自身が訪韓するよりは尹大統領に訪中することを要請したともとれる。習主席の訪韓は、朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2014年7月が最後。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代は文大統領の訪中があっただけで、習主席が訪韓したことはなかった。尹大統領と習主席は、両国の若い世代間の交流拡大を通じた歴史、文化をめぐる意思疎通を強化することで意見が一致した。
25分という短い時間のため、両国の対立要素になっている在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備で浮き彫りになった外交的対立など、残りの2国間懸案については具体的な議論ができなかったものとみられる。直近の2019年12月、北京で開かれた文在寅大統領と習主席の首脳会談は、55分の会談と80分の昼食会など2時間以上続いた。