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ロシア、「防衛」の名分掲げ核脅威のレベル高めるか…西欧と「チキンゲーム」

登録:2022-09-29 06:10 修正:2022-09-29 08:04
ウクライナ戦争、新たな局面に突入
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領/ロイター・聯合ニュース

 ロシア軍に占領されたウクライナ4州で23~27日に行われた住民投票で、予想通り「編入賛成」の結果が28日に出たことで、ウクライナ戦争はもはや以前とは全く異なる局面に入ることになった。ロシアがこの地域を編入した後、これらの地域に向けたウクライナの攻勢を「自国」に対する攻撃とみなし、核脅威のレベルを極端に引き上げることも可能になったためだ。ウクライナ東南部4州を巡るロシアと西欧の巨大な「チキンゲーム」が始まったわけだ。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は21日、予備軍に対する部分的動員令を発表する国民向け演説で、「我々の領土的完全性が脅かされるなら、ロシアとロシア人を守るため、可能なあらゆる手段を確実に使う」と警告した。それと共に「これは脅しではない」とも付け加えた。ウクライナがロシアに編入済みのルハンスク、ドネツク、ヘルソン、ザポリージャの4州を奪還するために攻撃してくるならば、核で報復しうると威嚇したのだ。ロシア国家安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長も27日、「大規模な攻撃行為で我が国の存立を脅かしたウクライナ政権に、最も恐ろしい兵器を使うことを想像してみよう」と述べ、改めて露骨な核脅威を加えた。しかし、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、国連総会の演説で、失われた領土の回復だけでなく侵攻の責任があるロシアとプーチン大統領に対する処罰まで求めている状況だ。

 住民投票に対する立場もはっきり分かれている。ロシアは住民の意思が適法に表現された結果という立場である一方、米国など主要7カ国(G7)の外相らは21日に発表した共同声明で、「すべての国に投票結果を認めないよう求める」と呼びかけた。米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は同日、さらに一歩進んで投票の効力を認めないという安全保障理事会決議を進める方針を示した。

 表には出さないが、今回の住民投票により西欧とウクライナは事実上、核戦争の危険性を受け入れてまで戦争を続けるべきかという大きな実存的な悩みを抱えることになった。これまでプーチン大統領とロシア当局者の発言を踏まえると、これを単なる脅しとは言い切れないからだ。

 米国と欧州同盟国はまず、ロシア軍に対する偵察と情報活動の強化に乗り出した。「ポリティコ」は27日、ロシアの核戦力および使用戦略に関する情報にアクセスできる匿名の米当局者の話として、米国が「(ロシアを)より密着して監視している」と報じた。彼らが注意深く観察する地域は、ポーランドとリトアニアの間に挟まれたロシアの域外領土であるカリーニングラードだ。米軍偵察機が先週、偵察活動を強化するため、この周辺地域を飛行した。ここにはロシアのバルト艦隊の司令部があり、通常弾頭と核弾頭をいずれも搭載できる「二重用途」の兵器が配置されている。ロシアは今年5月、ここで核搭載が可能な「イスカンデル」ミサイルの模擬発射訓練を実施した。

 米国軍・情報当局は、ロシアがメガトン級の爆発力を持つ戦略核兵器を使用し、全面的核戦争の危険を冒す可能性は極めて低いとみている。しかし、ウクライナの軍事的標的や都市、または荒れ地に戦術核兵器を使用して抗戦の意志をくじき、西欧の支援を遮断する可能性は完全に排除できない状況だ。 ロシアは戦術核弾頭約1900発を保有していると推定される。 さらに大きな問題は、戦術核兵器の発射可能性を事前に探知することが事実上不可能だという点だ。軍用機だけでなく野戦砲やクルーズミサイル、魚雷など他の多様な運搬装置を使うことも考えられる。

キル・ユンヒョン記者、ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1060542.html韓国語原文入:2022-09-29 02:30
訳H.J

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