ウクライナ戦争で守勢に追い込まれたロシアが、30万予備軍動員令に続き国防次官を更迭するなど、戦列の整備を急いでいる。動員令に対する国民の抵抗が激しくなると、戦闘を拒否した場合、最大10年の懲役刑に処する刑法改正案も承認した。
24日、ロシアの「タス」通信によると、ロシア国防省は同日、テレグラムに「ドミトリー・ブルガコフ国防次官が解任され、国防管理センター指揮官のミハイル・ミジンツェフ陸軍大将が新次官に任命された。ブルガコフ次官は新しいポストに移るために役職を解かれた」と発表した。新たに任命されたミジンツェフ次官は、5月の開戦以後2カ月間にわたり激しい激戦が続いたウクライナ東南部の港町マリウポリを巡る攻防戦で、戦闘指揮を成功させた人物として知られている。ウクライナ軍はミジンツェフ氏を「マリウポリの虐殺者」と呼んでいる。
今回の人事は、ウクライナが今月に入って東北部戦線を中心に9000平方キロメートルに達する領土を奪還する驚くべき軍事的成功を収めたことを受け、ウラジーミル・プーチン大統領がロシア軍の物資補給を担当してきたブルガコフ前次官に責任を問うたものだと、英国のBBCは説明した。ブルガコフ氏は2008年からロシア軍の物資補給作戦を指揮し、2015年のシリア派兵の時も円滑に業務を遂行した。しかし、今年2月末のロシア侵攻で始まったウクライナ戦争で、ロシア軍が弾薬と燃料不足で大きな困難を負い、物資補給を担当した同氏に対する批判が続いた。BBCは、そのような理由でロシア内の強硬派とプーチン大統領の側近は同氏の更迭とミジンツェフ将軍の任命を歓迎していると報じた。しかし、CNNの報道によると、米国当局者はこのようなプーチン大統領の人事介入について、「ますます乱れるモスクワの指揮構造によってプーチン大統領が戦争でより積極的な役割を担うことになった」と分析した。
プーチン大統領は同日、軍人事とともに予備軍動員令に不満を持った若者たちを締め付けるための法改正にも乗り出した。敵に自ら投降したり脱走したりするなど、命令に従わなければ、最大10年の懲役刑に処するロシア刑法の改正案を承認したのだ。ロシア刑法第352条1項に「自発的降伏」条項を新たに設けた今回の改正案は、24日にロシア政府の法律情報公式ポータルに掲載された。この条項に違反すれば、懲役3~10年の処罰を受けることになる。ただし、初犯の場合は監禁されている間に他の罪を犯さなければ刑事責任を免れる。21日に30万人の予備軍動員令を発表した後、多くのロシア国民が反戦デモに参加し、近隣国家への脱出を試みていることを受け、軍の綱紀を引き締めるために今回の改正案を通過させたものと解釈される。
さらに、プーチン大統領はロシアで1年間軍服務をするすべての外国人に市民権を与える法案にも署名した。ロシアでは外国人が市民権を得るためには5年間領土内に居住しなければならないが、その期間を大幅に減らしたのだ。また、予備軍徴集に反対する大規模デモが行われたことを受け、誘引策として金融支援にも乗り出した。ロシア中央銀行は予備軍動員令の対象者に債務返済を猶予するよう、都市銀行と融資機関に勧告した。動員対象者は延滞した債務の返済が猶予され、住宅ローンを返済できず住宅を差し押さえられた場合でも、立ち退きを免れる。
にもかかわらず、市民の反戦デモは続いた。ロシアの人権団体「OVDインフォ」は24日、ロシア全国32都市で動員令に反対してデモが行われ、少なくとも750人が逮捕されたと発表した。首都モスクワで380人、第2の都市サンクトペテルブルクで150人などが警察に逮捕された。21日には全国38カ所で1300人余りが逮捕された。同日、モスクワである女性は大雨の中、ベンチに上って「私たちは弾よけではない」と叫び、直ちに警察に連行された。