ロシアの侵攻で始まった戦争が199日目となる10日、ウクライナ軍がハルキウの位置する北東部戦線で領土奪還に成功するなど、意味ある軍事的成果を得た。ロシア軍は直ちにミサイルを撃つなど反撃に出ながらも、「交渉の可能性」をほのめかすようなメッセージを出した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日、自国軍が北東部のハルキウ州の約30カ所の村を取り戻したことを明らかにした。ワレリー・ザルジニー総司令官は翌日、ウクライナ軍が「今月(9月)に入って3000平方キロメートルの領土を取り戻した」と公開した。この発表が正しいとすれば、この10日間でソウル市の面積(605平方キロメートル)の5倍に達する広大な領土を奪還したことになる。ザルジニー総司令官は、軍が北東部地域の国境側に進撃し続けているとし「ロシア国境まであと50キロ」だと明らかにした。オレクシー・レズニコウ国防長官も「フィナンシャル・タイムズ」に、ウクライナの反撃が「丘を転がる雪の塊がだんだん大きくなるよう」だと自信を示した。
今回の反撃でウクライナ軍は東部ドンバスに近いハルキウ州の主要都市イジュームと、もう一つの補給拠点であるクピヤンスクを奪還した。クピヤンスクでは兵士たちが国旗を掲揚する姿も公開された。
英「ガーディアン」は、東部戦線を維持するのに必要不可欠な重要補給都市であるイジュームを奪還されたロシア軍が、弾薬や装備などを放置したまま退却したと伝えた。ロシア国防部も10日、「イジュームに展開していた部隊を再配置することを決めた」とし、後退したことを間接的に認めた。
ロシア軍は直ちに再反撃に出た。ウクライナ空軍は11日、公式ツイッターアカウントを通じて「ロシアが日曜日(11日)夕方、ウクライナ東部地域に巡航ミサイル11発を発射した」と明らかにした。ウクライナ空軍は、東部地域の航空司令部がドニプロペトロウシク州で7発、ポルタバ州で2発を撃墜したと明らかにした。残りの2発はこれらの地域の主要施設を打撃した。この過程で火力発電所が燃えて周辺地域に停電が発生し、ハルキウ、スミ、ポルタバを行き来する列車に遅れが出た。
ガーディアンは、9月初めのウクライナ軍の攻勢にロシア軍が押された理由について、南部ヘルソン州に精鋭兵力を移動配置し、北東部戦線が弱くなったためだと指摘した。ウクライナの立場でいえば、ヘルソン州にロシアの精鋭兵力を引き入れた後、防御が弱くなったハルキウに大規模な反撃攻勢をかけた形だ。同紙は軍事専門家の話を引用し、ウクライナが7月初めに喪失したルハンスク州に突入する可能性もあるとの見通しを示した。
その上で、今回の戦争の戦況に根本的な変化が生じるのではないかという見方まで出ている。ガーディアンは12日、ハルキウ州地域の奪還が「戦争の様相を変え、ロシアを動揺させている」と伝えた。
こうした中でロシアが「交渉の可能性」をほのめかすようなメッセージを出した。セルゲイ・ラブロフ外相は11日、国営放送「ロシヤ1」とのインタビューで、「ロシアはウクライナとの交渉をあきらめていない。交渉が遅れるほど合意を導き出すことはさらに難しくなるだろう」と述べた。ラブロフ外相はロシアが戦況を有利に導いていた7月末には「停戦交渉は無意味だ」と述べていた。
一方、ロシア政府と軍当局は北東部戦線の戦況について沈黙しており、ロシア民族主義者や軍事専門家らが怒りを噴出させているという。チェチェン自治共和国政府首長のラムザン・カディロフ氏は、テレグラムのメッセージを通じて「私は(ロシアの)国防総省のような戦略家ではないが、彼ら(ロシア軍)が失敗したことは明らかだ」と指摘した。