中国の浮上に対抗して米日が安全保障と経済の両方から「対中包囲網」を強化している中、日本でも懸念の声が高まっている。力と力がぶつかる「強対強」の対立では平和を得られないという指摘だ。
朝日新聞は24日付の社説で、「透明性を欠く軍拡を続け、既存の秩序に挑む中国の対外政策が、地域に緊張をもたらしているのは紛れもない」としながらも、「力による対峙を強め、経済安全保障の名の下に、相互依存関係の切り離しを進めるだけでは、平和と安定は保てない」とし、「米国の前のめりな姿勢を抑え、対話や信頼醸成の取り組みを交えた共存の道を探ることこそ、中国の隣国でもある日本の役割だ」と指摘した。
23日、米日は首脳会談を開き、両国の安保同盟を高度化し、中国牽制のための「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を発足させた。経済と安保の両方で「中国締めつけ」に乗り出したのだ。
同紙は特にバイデン大統領が首脳会談の記者会見で「台湾の類似した事態が発生した場合、米国が軍事的に関与するか」という質問に「そうだ」と答えたことについて、「その影響をどこまで吟味したうえでの発信だったのか」と批判した。同紙は今年2月末に始まったウクライナ戦争を取り上げ、「ロシアの侵略に正当性は全くないが、北大西洋条約機構(NATO)など西側諸国が、ロシアを(包囲・圧迫するのではなく)巻き込んだ秩序づくりに成功していれば、違った展開もありえただろう」と指摘した。さらに「互いの意思疎通を欠いたまま、包囲網ばかりを強め、力に傾斜した先に何が起こりうるのか。欧州の歩みからくみ取れる教訓もあるはずだ」と付け加えた。
東京新聞も中国に軍事力を中心に対応することの危険性を警告した。同紙は社説で、「日本の防衛力強化や防衛費増額が周辺国に脅威と映り、軍拡競争に拍車をかけることになれば本末転倒だ」と指摘した。特に、日本が直接攻撃力を持つ「敵基地攻撃能力」保有と関連し、「周辺国から先制攻撃の意図ありと疑われ、地域の緊張を高める要因にもなり得る」と強調した。柳沢協二元内閣官房副長官補も同紙に「(軍事力による)抑止は万全ではない。外交がなければ戦争を防げないことを認識すべきだ」と述べた。