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「トランプ大統領の在韓米軍撤退の主張、ポンペオ長官が説得して止めた」

登録:2022-05-13 09:52 修正:2022-05-13 10:23
エスパー元国防長官、回顧録で明らかに 
「トランプ大統領、何度も在韓米軍の撤退を主張」 
THAAD部隊や米軍の処遇めぐり韓国と対立も 
ワシントン・ポスト紙「思ったより乱暴な韓国政策」
ドナルド・トランプ元米大統領が4月23日、オハイオ州デラウェアで演説している=デラウェア/AP・聯合ニュース

 米国のドナルド・トランプ前大統領が在韓米軍の完全撤退を主張した際、マイク・ポンペオ前国務長官が「2回目の任期での課題にしよう」と説得したという証言が出てきた。

 マーク・エスパー元米国防長官は、10日に発刊した回顧録『聖なる誓い』で、トランプ大統領(当時)が2019年に韓国に対し在韓米軍駐留経費の負担金の5倍引き上げを要求し、交渉が難航した際の状況を振り返った。

 エスパー元長官は、トランプ大統領が「韓国人たちを相手にするのはうんざりだ」として、何度も米軍の撤退を主張したと明らかにした。同元長官は、在韓米軍は米国の安全保障とも関連があり、トランプ大統領を引き止めるため努力したと書いた。ポンペオ国務長官(当時)が助け舟を出して「大統領、(在韓米軍の撤退は)2期目の優先課題にした方がいいと思います」と言うと、トランプ大統領は気をよくして「そうだ、そうだ、2期目にね」と答えたという。エスパー元長官は、このようなやり方で危機を乗り越えるのは自分にはできないことだったと書いた。彼はトランプ大統領が行った奇異な提案として、在韓米軍の撤退を代表的な事例に挙げ、これを防ぐことが自身が辞任しなかった理由の一つだったと主張した。陸軍長官を経て2019年7月から国防部を率いたエスパー元長官は、トランプ大統領任期満了を2カ月余り後に控えた2020年11月に解任された。

 同書の冒頭を北朝鮮の話で始めたエスパー元長官は、トランプ大統領任期初期、北朝鮮との戦争は「実在する可能性」だったと書いた。2017年11月に陸軍長官に就任した彼は「当時トランプは、世界が朝鮮戦争以来経験したことのない紛争を触発しかねないマッチを、不注意に扱っていることに気づいていない状態」だったと回顧した。2カ月後、対北朝鮮戦争準備態勢を点検するため、アラバマ州の兵器庫を訪問した彼は、国防部から「大統領が韓国の全米軍軍属に対する疎開令を午後に発表する予定」だという連絡を受けた。当時「金(正恩)がハワイにミサイルを発射したのか?北朝鮮部隊が非武装地帯(DMZ)に移動するのか?彼らが米軍船を撃沈したのか? 平壌(ピョンヤン)が米国に弾道ミサイルを発射したのか?一体何だろう」と戸惑ったという。しかし、誰かの説得で発表が取り消されたと聞いたという。

 エスパー元長官は「幸いにも北朝鮮と北東アジアの緊張はトランプが金(正恩)にもう少し外交的なアプローチを始めたことで和らぎ始めた」と振り返った。彼は2018年6月、シンガポールで開かれた第1回朝米首脳会談について「多くの人々がトランプが金に望むものを与えたにもかかわらず、見返りをもらえなかったと批判した。いろいろな面で事実かもしれないが、トランプの関与のおかげで、我々が敵対行為から抜け出し、任期末まで統制可能な状態を保つことができた。それはいいことだ」と評価した。

 エスパー元長官は、慶尚北道星州(ソンジュ)のTHAAD(高高度防衛ミサイル)基地の米軍駐留状況をめぐり、韓国と対立したことについても具体的に書いた。彼は2020年10月、ペンタゴンで開かれた韓米安保協議会(SCM)会議で、韓国のソ・ウク国防長官に「怒りのあまり、声を荒げた」と明らかにした。2017年からTHAAD基地に配置された米軍が劣悪な環境に置かれていたことに抗議し「あなたの息子や娘にこのような環境で生活し、仕事をしてほしいと思うか」と問い詰めたという。この過程でマーク・ミリ統合参謀本部議長に「90日以内に、THAADを撤収した場合の影響に関する研究を進め、朝鮮半島からその派遣部隊を引きあげることに対する他の選択肢を提示してほしい」と述べたという。彼は圧力が功を奏し、問題が解消されたと明らかにした。

 エスパー元長官はまた、安保は米国に、経済は中国に依存する韓国が「中国の方へ漂流していくこと」を懸念していたと書いた。また、韓国が北朝鮮とは近づきながらも、日本とは不和になったことが不満だったと振り返った。その一方で青瓦台を二度訪問して面会した文在寅(ムン・ジェイン)前大統領については、「スマートで博識な人」だと評価した。文前大統領が「会話の中で、時折笑顔と共にユーモアのセンスを覗かせた」と書いた。

 ワシントン・ポストのコラムニスト、ジョシュ・ロギン氏は同書の内容に対して「トランプの韓国政策は私たちが思っていたより乱暴だった」とし、「彼は2期目を迎えていれば、全く統制が利かなかっただろうし、誰も自分本位で乱暴な彼の本能を静めることはできなかっただろう」と指摘した。

ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1042386.html韓国語原文入力:2022-05-1113:01
訳H.J

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