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膠着状態に陥ったウクライナ戦争2カ月…ロシアの「戦術核使用」呼ぶか

登録:2022-04-26 05:53 修正:2022-04-26 08:54
[ウクライナ侵攻2カ月] 
ロシア、首都キーウをめぐる第1段階の戦闘で事実上敗北 
ドンバス・クリミア半島など東南部を掌握する第2段階に入り 
民間の被害が多くなり、交渉が切実…相互不信から「強硬対応」に
ロシアは23日(現地時間)、ウクライナ南西部の主要港湾都市オデーサにミサイル攻撃を行い、生後3カ月期の乳児を含む少なくとも8人が死亡した。ある女性がロシアの攻撃で壊れた建物から消防隊員の助けを得て逃れている=オデーサ/AFP・聯合ニュース

 「私は戦争を止めることを願う。(私たちの前には)外交的な道と軍事的な道がある。精神が完全な人であれば、難しいとしても常に外交的な道を選ぶはずだ。これは、数千、数万、数十万、もしかすると数百万人の命を救うことができるからだ」

 ロシアの侵攻で始まったウクライナ戦争の2カ月目を翌日に控えた23日(現地時間)夜、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が開戦以来初めて、キーウ(キエフ)のある地下鉄の駅で、国内外の記者を相手に会見に応じた。ゼレンスキー大統領がこの日に切実強調したのは、人命の被害を最小化できる戦争の「外交的解決」だった。「和平交渉につながるのであれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に会うのは怖くない。会えればよいというのではなく、会わなければならない」。しかし、ロシアによる民間人虐殺などの残虐行為のためなのか、「友好国は信頼しているが、ロシアは信頼していない」と述べ、複雑な本音をみせた。ゼレンスキー大統領は2時間にわたる会見を終えた後、会見の動画に英語の音声を添え、自身のフェイスブックに公開した。

 2月24日に始まったウクライナ戦争は、2カ月という「長いと言えば長く、短いと言えば短い」期間の間に、核を使用しない21世紀の従来型の戦闘が示せる様々な姿を演出した。

 ロシアは、戦争初日からキーウに空輸部隊と機甲戦力を集中投入し、ゼレンスキー政権を除去しようとした。ロシアの強大な戦力の前で、ウクライナは「風前のともし火」かのようにみえた。ゼレンスキー大統領は開戦翌日、キーウの夜道で「指導部は首都で決死の抗戦をしている」と述べ、国民の抗戦の意志を励ました。ウクライナ人が驚くべき勇気をみせた抗戦に乗りだすと、米国と欧州も積極的に取り組みだした。ロシアに過酷な経済制裁を科し、全面的な兵器支援に乗りだした。抵抗に直面したロシアは、機甲部隊の行列が道路に70キロメートル以上並んだ姿を露呈させるなど、補給と作戦運用で大きな弱点をみせた。

2カ月目のウクライナの戦況。ピンクはロシア軍占領地域、黄色はロシア軍進出推定地域、青色はウクライナ軍奪還地域、赤矢印はウクライナ人難民数。難民の総数は22日時点で516万3683人=資料:CNNなどの外信およびUNHCR//ハンギョレ新聞社

 キーウをめぐる戦線が膠着状態に陥ると、ロシアとウクライナは戦争収拾のための和平交渉に乗りだした。ロシアは3月29日、イスタンブールで開かれた5回目の和平交渉で、「進展があった」と述べ、キーウ周辺の軍事活動を減らすことを明らかにした。しかし、ウクライナが東部のドンバスとクリミア半島の領有権問題で強硬な態度を崩さず、交渉は事実上決裂した。その過程で、ロシアがキーウ郊外のブチャで残忍な虐殺を行った事実が明らかになった。キーウをめぐる「第1段階」の戦闘が終わり、ドンバスの運命を交渉ではない実力で決める「第2段階」の戦闘が始まったのだ。

 第1段階の戦闘はロシアの敗北だと評せるが、全体の戦況をみる場合、ロシアが敗れたと評価するには早い。米国ランド研究所のスコット・ボストン上級軍事アナリストは、「ロシアの当初の苦戦は、ロシア軍の能力というよりも、指揮部の判断の問題のようだ」とし、「ウクライナ軍を甘くみていた。ロシアがそのような失敗をそのまま繰り返すようなことはない」と述べた。

 第2段階の戦闘の舞台である東部戦線は、親ロシア派分離主義勢力の根拠地であるドンバスで、南部戦線にはロシアがすでに併合したクリミア半島がある。補給路が短く8年間も戦闘が続き、ロシア軍や分離主義勢力が慣れている場所だ。戦争前にドンバスの親ロシア派分離主義勢力が占領した地域は3分の1程度だったが、最近になってロシア軍はルハンシク(ルガンスク)州の80%程度を占領したと推定される。ロシアは21日、ロシア本土と2014年3月に併合したクリミア半島を結ぶ最大の要所マリウポリを掌握したと宣言した。ロシアはこれを越え、黒海に面したウクライナ南部地域をすべて掌握し、ウクライナを内陸地域に孤立させようとする企みまでみせている。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が23日夜(現地時間)、キーウのある地下鉄の駅でウクライナ戦争開戦以来初となる国内外の記者対象の会見に応じている=ウクライナ大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 ロシアがその目標を達成できるかどうかは明らかではない。米国防総省は、2月末の侵攻初期に比べてロシア軍の戦力は75%にまで低下したと評価している。軍事情報サイト「オリックス」によると、ロシア軍は戦車や装甲車など約3000台の装備の損失を被った。西側が支援した対戦車用携帯用ミサイル「ジャベリン」などの攻撃によるものだ。米国などは、ロシア軍の全面攻勢に対抗できるよう、戦車・曲射砲・自走砲・戦闘機・ヘリ・装甲車などの大型攻撃兵器を相次いで供給している。米国のロイド・オースティン国防長官とアントニー・ブリンケン国務長官は24日、キーウでゼレンスキー大統領と会談する。米国がこの戦争に対する介入と支援を質的に強化するという意味だ。米国はこれまで、ウクライナに合計34億ドル(約4400億円)、欧州連合(EU)は15億ユーロ(約2100億円)の軍事支援を決めた。

 ロシアは、第2次世界大戦の戦勝記念日である5月9日までに勝利を宣言する計画だが、米国などの全面支援を背景にウクライナが激しく抵抗すれば、目標達成に失敗する可能性もある。ロシアがその過程で、耐えることのできない国家の威信の失墜を覚悟しなければならない状況に陥れば、「戦術核」を使う冒険に乗りだしかねないと懸念する声もある。ウクライナは戦闘で勝てば勝つほど、いっそう大きな被害を甘受しなければならず、最終勝利は入手できない「ジレンマの状況」に置かれている。英国のボリス・ジョンソン首相は22日、「戦争が来年末まで続き、ロシア軍が勝利する現実的な可能性もある」と述べ、積極的な支援を強調した。ゼレンスキー大統領の主張どおり「外交的な解決策」が必要な時期だが、相互不信がどちらも強く、戦争は当面の間、強硬対応の対決が続くものとみられる。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1040234.html韓国語原文入力:2022-04-25 11:23
訳M.S

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