ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「マリウポリ解放」を宣言し、ウクライナ軍が最後まで抗戦している製鉄所アゾフスタリ一帯に対する攻撃計画を取り消し、封鎖するよう命令した。
ロシア大統領府は21日、ロシア軍はマリウポリを掌握したが、アゾフスタリにウクライナ軍2千人以上が入って抗戦しているというセルゲイ・ショイグ国防相の報告に対し、このように述べたと発表した。ロシア大統領府が公開した動画によると、ショイグ長官はプーチン大統領に「マリウポリ全体がロシア軍と『ドネツク人民共和国』(親ロシア武装勢力が建てた自称共和国)の兵力の統制下に入った」とし、「アゾフスタリに民族主義者と傭兵の残党がいるが、封鎖された状態だ」と報告した。
これに対し、プーチン大統領は「マリウポリ解放のための戦闘は成功裏に完了した」とし、事実上の「勝利」を宣言した。さらに、「提案された(アゾフスタリ)工業地帯への攻撃は不適切だと思う」とし、「取り消すよう命令する。工業地帯を封鎖せよ」と指示した。
ロシア軍は2月24日のウクライナ侵攻後、南東部の戦略的要衝地にあるマリウポリを占領するために激しい攻撃を行ってきた。ロシア軍は16日、「マリウポリの都心部全体が完全に掃討された」とマリウポリの制圧を宣言したが、その後もウクライナ軍は都市の南海岸地域のアゾフスタリ製鉄所で抵抗を続けてきた。ロシア軍の降伏要求にも、ウクライナ軍は拒否の意思を明らかにした。プーチン大統領はアゾフスタリへの攻撃を強行した場合、ロシア軍の人命被害も大きいと予想されるため、包囲封鎖を選んだものとみられる。ロシアのウクライナ侵攻の過程で死亡したロシア軍人の数は正確に把握できないが、西側では1万人以上と推定する専門家もいる。
封鎖により、マリウポリの民間人被害がさらに大きくなる恐れがある。AP通信は、約2カ月にわたり行われた都市全体に対するロシア軍包囲攻撃で、2万人以上が死亡したものと推定されており、まだ都市に残っている人も数千人に達すると報じた。プーチン大統領が封鎖を命令した製鉄所にも民間人約1千人が避難しているという。同通信は、ウクライナのイリーナ・ベレシュク副首相が21日、「民間人を乗せた避難バス4台が前日、人道回廊を通ってマリウポリを脱出した」として、引き続き民間人の避難を試みる方針を示したと報じた。