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中国が米国を追い越すのが難しい理由…高齢化・債務など難題多数(1)

登録:2022-03-09 07:10 修正:2022-03-09 09:28
エコノミーインサイト_Economy insight 
ファイナンス|中国が米国を追い越すのが難しい理由
中国抗州の社会福祉センターで、中学教師出身の高齢者が他の高齢者たちに漢詩を教えている。中国の急速な人口高齢化は経済成長を困難にする一つ目の要因に挙げられている/EPA・聯合ニュース

 他人より優位に立とうとするのは、人間と国家の本能だ。だから歴史は覇権競争の記録なのかもしれない。今日も覇権競争は激しく行われている。ウクライナをめぐる米国とロシアの対立がその証拠だ。米国と中国の競争はさらに激しい。中国の経済力が米国を脅かす水準に到達したからだ。覇権は軍事力に劣らず経済力によって決まる。米国が中国の追撃に脅威を感じるのは当然だ。しかし、中国が米国を追い越すという西側の一部の主張は、おおげさな態度だとみなさなければならない。中国の弱点が思ったより多いからだ。

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人口構造の問題

 中国は大国だ。2020年時点での中国の人口は14億4000万人に達する。人口でみると、中国は3億3000万人程度の米国より4倍大きな国だ。国内総生産(GDP)は人口に生産性をかけた結果だ。人口が多ければ、GDPの規模を増やすことに確かに有利だ。過去の成長率の推移に照らし中国経済がまもなく米国を追い越すと見通すことは、大部分はその点に基づいている。しかし、そのような予想は、人口の質的側面を考慮しない単純な予測に過ぎない。中国の人口の質的側面は、次第に成長に否定的な方向に変わっている。

 パンデミック(感染症の大流行)は、多くの国で出生率を下げる要素として作用した。家族全員が家の中にだけ留まっていれば、大抵の家庭では未来に対する恐れが増幅される。そこに財政的な困難まで加われば、ストレスは強まる。生殖活動は活発にならない。他の国と比べた場合、中国の封鎖の度合いは極限に近い。外出は徹底的に禁止される。家庭でのストレスは強まらざるをえない。このような状況では、低い出生率が上向きになることはない。

 中国の出生率の下落は、パンデミック前に始まった。2016年に「一人っ子政策」を撤廃したが、それだけでは出生率を高めることには力不足だ。数十年の間、子供を一人だけつくるよう教育され、これに反すると罰を受けた記憶は、単に法規を変えても簡単には消えない。妊娠可能な女性(15~49歳)が一生に産むと予想される平均の出生率を示す合計特殊出生率は、今もなお1.3にとどまる。

 パンデミックで状況は悪化している。中国国家統計局によれば、2021年の出生数は1060万人程度だ。2020年は約1200万人だったため、各種の優遇策が作動しなかったことがわかる。2021年の出生と死亡は数が近い。外部から人口が流入しなければ、中国ではまもなく人口減少が始まるだろう。

 人口が減っても、GDP増加に暗雲が立ち込めるわけではない。生産性が向上すれば成長は可能だ。人口減少とともに高齢化が進むことが問題だ。若者層が労働市場に参加するペースより速く、高齢層が退出している。多くの国が抱えているこの問題は中国で目立つ。「習近平の中国」がこの問題を解決しないことには、米国を超えることを期待するのは難しいかもしれない。

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ソフトパワーの不足

 あえて米国が牽制しなくても、中国が米国を超えることは難しいだろう。それは、「ソフトパワー」の不在のためだ。国家の覇権や地位はソフトパワーで完結するといえる。文化商品で世界を支配せずには、覇権の掌握は不可能だ。現在の米国の文化商品は、独占的な地位にあり、世界各国で流通している。21世紀入っても、米国の映画とTVドラマの影響力は強大だ。中国はどうなのか。悠久の歴史と伝統があるといっても、有名な文化商品はない。

 中国の経済力は米国を脅かすほどだが、ソフトパワーはよちよち歩きの水準だ。改革・開放後の過去40年間、中国はわずか二つの文化商品を成功させた。劉慈欣のSF小説『三体』と短い動画サービスのTikTok程度だといえる。それさえ半分の成功だとみなさなければならない。

 劉慈欣は『三体』でSF界のノーベル賞と言われるヒューゴー賞を2015年に受賞した。アジア初だった。この小説が天才的な作品であることは明らかだ。ただし、いまだSF小説という限定された領域にとどまっている。底辺を広げられないだけでなく、後続作品も十分ではない。TikTokも同様だ。中国産コンテンツの不足により、文化を流通する窓口になれていない。

 アジア国家では、韓国、日本、台湾のソフトパワーが日々強まっている。韓国の大衆音楽や映画、ドラマは、すでに世界的なレベルになった。日本のアニメの影響力も相変わらずだ。一方、アジア文明の象徴だった中国のソフトパワーは、未発達の状態だ。理由は自明だ。国家が創意性を押えつけているからだ。

 『三体』が世界的な名声を得たのは、有名人がメディアを通じて積極的に広報したことが大きく寄与した。現在の中国ではそのようなことは期待できない。愛国的な内容や日常の内容を除く発言は、当局が徹底的に統制する。議論の道が詰まれば、創意性は消える。西側ではアジア文化の消費が日常になったが、そこに中国文化が占める割合は極めて小さい。

 中国は確かに、豊富ながらも躍動感あふれる文化を持っている。問題は政府だ。文化活動を奨励したり発展させることには、関心はあまりない。情報が安定を害すると考えている。このような状況では、中国文化を国外に広報することは難しい。外国の文物の流入も一部は遮断する。中国文化がグローバル化する機会は減らざるをえない。検閲だけでなく無関心も中国文化の孤立を強める。中国が自分だけの色に固執すること自体がソフトパワーの無気力を呼ぶ。これは結局、中国と中国企業の競争力低下につながらざるをえない。(2に続く)

ユン・ソクチョン|経済評論家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1033950.html韓国語原文入力:2022-03-08 09:09
訳M.S

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