(1のつづき)
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債務と不平等
中国の天文学的な債務と深刻な不平等も、中国の成長を阻害する主要な要素だ。後者はそれ自体も問題だが、国家の物理力でそれを解決するということが、さらに大きな問題だ。一緒によい暮らしをするという「共同富裕」は、結局は成長の潜在力を損なうだろう。中国企業の活力を落とすことが明らかだからだ。中国の私企業は、国家の統制によって急速に公企業化している。当局は中国式資本主義を夢見るが、このような手法は企業家精神を弱め、最後には競争力を失うことになりうる。初期段階の産業を成長させるために有効なこの手法は、創意性と挑戦が必要な産業の成長には否定的な影響を及ぼす。
社会不安を触発せず、経済と金融のシステムを再設計しようとしているが、支配体制の変化なしにそれが可能かは疑問だ。不平等の根源は結局は支配体制にあるからだ。習近平国家主席は、成長と平等という二律背反的かもしれない目標を同時に満たさなければならない。中国の指導者たちが何世紀にもかけて達成しようとしてきた目標だ。不幸なことに、それは今もなお遠い道であり、不平等はよりいっそう激しくなっている。
債務もやはり難題だ。特に、地方政府のそれが深刻だ。不動産市場は中国経済の主要な動力だった。GDPの約30%を占める。恒大集団(エバーグランデ・グループ)の破産で始まった債務の爆発は、地方政府に広がりうる。これまで地方政府は、不動産事業の施行企業に土地を売り、不足した予算を埋めていた。今ではそれはほぼ不可能になった。地方政府の財政は次第に悪化し、地域間格差がいっそう広がるだろう。裕福な海岸地方と貧しい西側の地方の間の対立が露呈し、社会不安につながりうる。
中国政府は清零(ゼロコロナ)、経済成長率5%、債務縮小を3大主要政策の課題に設定した。一つはすでに撤回されている状況にある。債務縮小と安定化のための緊縮政策は、経済沈滞への懸念により、なかったことになっている。他の二つの目標は達成できるだろうか
ゼロコロナ政策は、感染力の強いオミクロン株の登場により脅かされている。中国では感染者が少なく、自然免疫を持つ人はほとんどいない。中国製ワクチンの効果も疑問だ。ゼロコロナのための厳格な封鎖は、それ自体が成長を害する。もし封鎖が失敗すれば、パンデミック初期の経済的な混乱状況が起きかねない。世界各国が新型コロナで疲弊しているのに、中国だけが無風地帯であるはずはない。経験しなければならないことは、必ず経験することになる。そのような状況で5%成長は可能だろうか。
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パックス・アメリカーナの長寿
一時、日本が米国を追い越すだろうと言われていたが、夢想に過ぎなかった。日本は高齢化前に裕福な国になった。中国はどうだろうか。豊かになる前に高齢化が進行する。高齢化が社会不安につながらないようにするには、天文学的な費用が必要だ。今の中国が耐えられるかは疑問だ。それに加えて、習近平国家主席は経済成長の中心である企業を圧迫している。何より中国は、もはや低コストの労働力を強みにできる国ではない。労働集約的な産業で競争力が失われる。それでも、高付加価値の先端産業で競争力を備えるということもできない。これらすべてが社会の不安要素になる。
このような状況では、中国が米国を追い越すというのは根拠が貧弱な希望に過ぎない。中国が米国との競争で優位に立つには、基本的にはこのような問題を解決しなければならない。現在の支配体制でそれをやり遂げられるかは疑問だ。支配層の自浄機能には限界がある。システムが解決しなければならない。牽制を受けない権力にそのような期待をすること自体が矛盾だ。それならば、米中覇権競争の結末はわかりきっている。パックス・アメリカーナ(米国が主導する世界平和)は思ったより長く持続しうる。