米国をはじめ世界各国が新型コロナウイルスワクチンの普及を促進するため、製造業者に免責措置を取っているなか、ワクチンの副作用に対する被害補償には相対的に消極的であることが分かった。
ブルームバーグ通信は3日(現地時間)、先月26日までに米国でコロナ感染症と関連し、被害を受けたとして連邦政府に補償を申請した事例は445件と集計されたと報じた。ワクチンと直接関連した被害を訴えた事例は全体の25%程度で、半分以上は感染症の治療過程での被害に対する補償要求だ。感染症患者を適切に治療しなかったため患者が死亡したとし、補償を要求したケースも50件ある。しかし、補償金が支給されたケースはまだないと同通信は伝えた。
同通信によると、米政府が新型コロナに適用している補償プログラムは、以前から被害補償に対してに消極的なものであり、補償がきちんと行われるかどうかに疑問を呈する声も出ているという。
米議会調査局が今年3月に出した報告書によると、連邦レベルのワクチン関連補償プログラムには、ワクチン全般の被害を扱う「国立ワクチン被害補償プログラム(VICP)」と、政府の緊急措置に関連する被害を補償する「対応措置被害補償プログラム(CICP)」の2つがある。米保健省は昨年2月、新型コロナに対応措置補償プログラムを適用することにし、ワクチン製造業者に対しては副作用の責任を負わせない免責措置を取った。これによって、コロナワクチン接種の副作用の被害者は、ワクチン製造会社を相手取って訴訟を起こすことはできず、政府補償のみが申請できることになった。
対応措置補償プログラムは、緊急事態対応措置のために死亡または深刻な肉体的損傷を受けた場合、適正医療費、所得損失分、死亡補償金を支給することを内容とする。弁護士費用や精神的苦痛への補償は要求できない。所得損失分は1年に5万ドル(約5500万ウォン)が上限で、最大死亡補償金は37万376ドル(約4億750万ウォン)。
議会調査局の発表によると、2005年に始まった同プログラムによる実際の補償事例は、全申請件数551件の6%に当たる29件にすぎない。一方、1986年に作られたワクチン被害補償プログラムは、2万3902件のうち40%に当たる7874件に対し補償が決定された。議会調査局は、「コロナワクチン接種対象が妊婦や児童にまで拡大されるならば、議会はコロナ感染症をワクチン補償プログラムで補償することを検討する余地がある」と指摘した。
イタリアのシエナ大学の研究者が昨年3月に発表した論文によると、世界的にワクチン被害補償制度を備えている国はドイツ、英国など欧州16カ国、韓国、日本、ニュージーランドなどアジア・オセアニア7カ国、米国とカナダのケベック州など計25カ国だった。
カナダ政府は昨年末、コロナワクチン接種を控え、ケベック州の制度と同様の補償プログラムを全国的に導入した。アイルランド政府も同じ時期に補償プログラムを作ることを明らかにしたが、ワクチン接種が本格化した4月中旬になっても具体案を出していないと「アイリッシュ・タイムズ」は伝えた。
オーストラリアでも最近、補償プログラム導入の声が高まっている。世界保健機関(WHO)の助言を担当するシドニー大学社会科学部のジュリー・リスク教授は最近、あるラジオ番組に出演し、「非常に稀だが深刻なワクチン反応に対する補償策が急がれる」と指摘した。このほか、南アフリカ共和国は800~2000人のワクチン副作用の補償要求が提起される場合に備え、補償資金を準備している。
ワクチン補償プログラムがあっても、ワクチン後遺症を立証する過程で問題が発生する可能性も高い。米議会調査局は、副作用を主張する人が、ワクチン接種後一定期間以内に副作用が現れたことと、副作用がワクチンの直接的な結果だということを示さなければ補償は受けられないと指摘した。