本文に移動

米・英・中・ロ、ワクチン製造国「ゼロサムゲーム」…信頼性めぐり熾烈な争い

登録:2021-04-30 02:46 修正:2021-04-30 07:11
欧州対外行動庁が中国とロシアに関する報告書を公開 
「ブラジルによるロシアのワクチンに対する承認を米国が妨害」疑惑も
ある医療スタッフがコロナワクチンの入った注射器を見ている/AP・聯合ニュース

 新型コロナウイルスワクチンの信頼性をめぐり、ワクチンの製造国同士の水面下での争いが熾烈になっている。中国とロシアは、虚偽の情報によって西欧圏のワクチンの信頼を貶める作業を行ったと睨まれており、米国はロシアのワクチンのブラジル進出に制動をかけようとしたとの疑惑が持ち上がっている。問題は、このような疑惑も相手側が提起したものであるため、正確な事実であるかどうかは明らかでないということだ。

 欧州連合(EU)の欧州対外行動庁(EEAS)は28日(現地時間)、中国とロシアが西欧圏のワクチンの信頼を貶めるため、虚偽の情報を流布しているとする報告書を公開した。計13ページからなる同報告書は、コロナワクチン普及が本格化した昨年12月から今年4月までを調査対象としている。

 ロシアと中国は、官営メディアや政府寄りのメディア、フェイスブックやツイッターなどのSNSなどのあらゆる手段を動員した。ファイザーやアストラゼネカなどの西欧のワクチンの副作用についての内容をふくらませて報道したり、陰謀論に近い内容を報道したりするやり方だ。例えば、ファイザーのワクチンを接種した後に死亡した23人のノルウェーの療養病院の患者の死をワクチンの副作用と結びつけたり、コロナウイルスが米軍の秘密研究施設に由来する可能性があると報道したりするなどだ。

 EEASは「ワクチン外交がマスク外交に完全に取って代わった」中、ロシアと中国は「ゼロサム論理に基づき」自国のワクチンの信頼性を高めるため、米国や英国などの西欧圏で製造されるワクチンとこれらの国々のワクチン戦略について、虚偽情報や捏造などを用いて中傷していると主張した。

 ロシアと中国の反対側に立つ米国も、相手のワクチンを攻撃しているとの疑惑も持ち上がっている。ブラジルの保健当局は26日、ロシアが開発したワクチン「スプートニクV」の承認を拒否したが、その背後に米国がいるという主張がなされのだ。ブラジルは「科学的決定だ」との立場だが、「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、ブラジルが1月に中国の製薬会社シノバックの臨床結果が不透明なコロナワクチンを承認したことを考えれば不可思議な決定だと報じた。加えて、米国が1月に発刊した保健福祉省(HHS)の年次報告書に、国際問題の担当部署(OGA)がなすべき外交的努力の一つとして「ロシアのコロナワクチンを拒否するようブラジルを説得する」という内容が記されていることが、今年3月に明らかとなっている。巧妙にも1カ月あまりでこうした「努力」が現実となったことから、ロシアは米国の「工作の可能性」を強く主張している。

 他国のワクチンの承認も選択的に行われている。特に米国の場合は、自国の製薬会社が開発したワクチンは迅速に承認したものの、英国が開発したアストラゼネカのワクチンは承認手続きを引き延ばしている。米国はファイザーを筆頭として、モデルナとジョンソン・エンド・ジョンソンの子会社ヤンセンファーマの開発したワクチンに対しては、非常に迅速な承認を行っている。しかし、英国の製薬会社アストラゼネカのワクチンに対しては、昨年から臨床過程をきちんと報告していないことなどを理由として、承認手続きを延ばし続けている。英国の医薬業界では、米国が欧州をけん制するためのものだと指摘している。

 世界的に使用承認を受けているコロナワクチンは10種あまりにのぼる。米国はファイザーなど3社、英国はアストラゼネカ1社、ロシアはスプートニクVの開発会社など2社、中国はシノバックなど4社にのぼる。

チェ・ヒョンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/993188.html韓国語原文入力:2021-04-29 15:23
訳D.K

関連記事