米国のジョー・バイデン次期米大統領の就任を控え、東南アジア4カ国の歴訪の途についた中国の王毅外相が、最後の訪問国であるフィリピンを経て16日に帰国した。王毅外相は米大統領選挙を控えた昨年10月にも東南アジア5カ国を歴訪したが、2回の歴訪でASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国のうちベトナムだけは除外した。
17日のロイター通信などの報道を総合すると、王毅外相は歴訪で、新型コロナ防疫▽地域経済回復▽一帯一路(陸・海上シルクロード)事業などの地域協力案などを集中論議した。特に新型コロナの感染者が多いミャンマー(約13万人)とフィリピン(約49万人)に、中国国営製薬会社シノファームのワクチンをそれぞれ30万回分と50万回分、無償で支援することにした。
感染者が85万人を超えたインドネシアは、王毅外相の訪問を控え、中国のシノファームのワクチンの緊急使用を承認した。インドネシアはすでにシノファームのワクチン300万回分を輸入した状況だ。王毅外相の歴訪期間中の15日、カンボジアのフンセン首相は、中国がシノファームのワクチン100万回分を援助することにしたと明らかにした。ASEAN各国を相手に中国の“ワクチン外交”が盛んだという意味だ。
これに先立ち王毅外相は昨年10月11~15日、カンボジア・マレーシア・ラオス・タイ・シンガポールなど東南アジア5カ国を歴訪した。当時の中国外交部の華春瑩報道官は「中国・アセアン間の貿易量は今年に入り10月までに前年同期比で3.8%成長し、史上初めて欧州連合(EU)を追い抜き、ASEANが中国の最大の貿易相手に成長した」と明らかにした。
興味深いのは、王毅外相の2回の東南アジア歴訪から、10のASEAN加盟国のうち唯一ベトナムだけが訪問国から外れているという点だ。昨年の新型コロナウイルスの感染拡大のなかでも、ベトナムはドイツを抜いて中国の6大貿易相手国に浮上している。これについて「サウスチャイナ・モーニングポスト」は、「ベトナムはASEAN加盟国のなかで一番最初に中国の通信企業の華為技術(ファーウェイ)を拒否し、新型コロナの初期に中国国境を封鎖した」とし、「南シナ海の領有権問題とメコン河流域の開発問題をめぐり神経を尖らせるなど、両国間の政治的緊張が高まった点が作用したのだろう」と指摘した。