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韓国が契約した4つのワクチン…あなたが接種するワクチンは?

登録:2020-12-11 02:19 修正:2020-12-24 07:48
グラフィック=パク・ソンミ//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が購入契約を交わしたグローバル製薬各社の4種の新型コロナウイルス感染症ワクチンは、接種方式、価格、承認状況などがそれぞれ異なるが、効果や開発スピード、安全性などで世界トップクラスにあるという共通点がある。政府は、早ければ来年初めにもワクチンの導入が可能だと見て、準備作業に入った。特に、英国など、実際にワクチン接種を開始した他国の状況を見極める計画だ。

ファイザー…開発速く効果は高いが、高額で不安定

 米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンで、英国では今月8日から西欧圏で初の接種が開始されるなど、速度の面で最も先を行っている。

 ファイザーのワクチンは、これまで開発されたことのないmRNA(メッセンジャーRNA)を用いて作られたものだ。メッセンジャーRNAは細胞においてDNA情報を伝達する物質であり、タンパク質を作る際に重要な役割を果たす。この物質がコロナウイルス表面の突起であるスパイクタンパク質を作り、体内で免疫反応が起きて抗体が生成されるように設計されている。

 これまでのワクチンは、ウイルスの一部(抗原)を直接体内に注入するものだった。少量のウイルスを体内に入れて免疫システムを誘導したのだ。ファイザーのワクチンはこれとは異なり、遺伝子を注入して抗原を作り出し、そこから抗体生成へとつなげる方式だ。

7日、米ニューヨーク・マンハッタンのファイザーワクチンの広告の前を、ある市民が通り過ぎている=ニューヨーク/ロイター・聯合ニュース

 この方式は大量生産が可能なものの、ウイルスより微細な遺伝子を用いるだけに不安定だ。そのため保管と輸送にはマイナス70度以下の超低温施設が必要で、価格も1回当たり19.5ドルと割高だ。他のワクチンの2~5倍ほどだが、ファイザーのワクチンは1人当たり2回接種しなければならない。

 予防効果はかなり高い。先月9日に西欧圏では初の第3相試験の中間結果が発表されており、免疫効果は95%にのぼる。同試験は次のような方式で行われた。

 ファイザーの第3相試験には、合わせて4万3000人あまりが参加した。半数にはコロナワクチンを投与し、対照群である残りの半数には塩水で作った偽ワクチン(プラセボ)を投与した。一定時間経過後にコロナ感染の有無を調査した。感染した人は170人だった。このうち、偽ワクチンが投薬された人は162人、本物のワクチンを接種した人は8人だった。もしワクチンの効果が全くなかったとしたら、ワクチン群からも162人ほどの患者が発生したはずだが、8人にとどまった。これを計算すれば、ワクチンの効果は94.5%となる。ファイザーは特に「65歳以上の年齢層でも、ワクチンは94%ほどの効能を示した」とし、高齢層でも予防効果があったと明らかにした。

モデルナのワクチンのイメージ/AFP・聯合ニュース

モデルナ…1回当たり3万ウォンで最も高額

 米モデルナは、ファイザーが第3相試験の結果を発表した1週間後の先月16日に第3相の結果を発表するなど、開発スピードの面でファイザーを猛追している。モデルナもファイザーと同様にメッセンジャーRNA方式で開発している。そのため保管と輸送が難しく、価格も1回当たり25~37ドルと最も高額だ。モデルナのワクチンもファイザーと同じく、1人当たり2回接種しなければならない。ただし、保管に必要な温度はファイザーよりやや余裕のあるマイナス20度だ。

 免疫効果はかなり高い。3万人あまりが第3相試験に参加し、本物のワクチン群と偽ワクチン群に分けて接種した結果、計95人の患者が発生した。内訳は、ワクチン群では5人、偽ワクチン群では90人だった。ワクチンの効果がなかったとしたら、ワクチン群からも90人ほどの患者が発生しているはずだが、5人にとどまった。ワクチンの効果は94.5%だ。

 ファイザーとモデルナのワクチンは、1回当たり20ドルを超えるほど高額であり、高性能の冷凍施設がなくてはならないなど、保管と輸送も難しい。このため、アフリカや南米、東南アジアなどの低所得国では、大衆的な活用が容易ではないとみられる。韓国は両社のワクチンをそれぞれ2000万回分(1000万人分)ずつ確保する計画だ。

 導入は来年2~3月から開始されるとみられ、接種時期はまだ確定していない。国内におけるコロナ流行の動向と国外のワクチン接種状況を見極めた後に、弾力的に決定する方針だ。

先月30日、インド・プネーにある世界最大のワクチンメーカー、セラム研究所にて。同研究所では英アストラゼネカのワクチンを受託生産している=プネー/ロイター・聯合ニュース

アストラゼネカ・オックスフォード…安定的かつ安価

 英アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発中のワクチンで、先月23日、西欧圏のワクチンとして3番目に第3相試験の結果が公開された。数十年前から使われている「ウイルスベクター」方式で開発され、安全性が高く保管と輸送も比較的容易だ。1回当たりの価格も4ドルと最も安い。

 アストラゼネカのワクチンは、チンパンジーに風邪を引き起こす「アデノウイルス」を運び屋(ベクター)として用いる。このウイルスにコロナウイルスのスパイク(突起)タンパク質を作る遺伝子を植え付ける。こうして作ったワクチンを人体に注入すれば、細胞はこれを本当のコロナウイルスと認識して免疫反応を起こす。この方式は数十年前に開発され、マラリア、結核、エボラなどのワクチンを作るのに用いられた。安全性が確認されている方式だ。

 加えてアストラゼネカは今年7月、利潤を得ずにワクチンを普及させると約束し、中・低所得国の希望となっている。

 免疫の効果はファイザーやモデルナよりもやや低い。先月23日に同社が発表した第3相試験の中間結果では、効果は70%だった。しかし、接種方式の違いによる効果の差が大きかったため、同社は追加試験を行うことにしている。1次接種の際に半量のみを接種した実験群において90%の効果が現れた一方、全量を投薬した実験群においては効果が62%に過ぎなかったのだ。アストラゼネカは、別の接種方式を意図したものではなく、接種量を誤ったものだったと明らかにし、疑問をふくらませている。

 今月8日、医学学術誌『ランセット』に、アストラゼネカの発表を検証する論文が掲載された。研究陣は同社のワクチンに効果があることを確認し、無症状感染を予防する効果があることも明らかにした。ワクチンを半量のみ接種した実験群では、無症状感染の予防効果は59%、全量を接種した実験群では4%だった。ファイザーとモデルナは、無症状感染に対する予防効果は分析していない。

製薬会社ヤンセンファーマのロゴ=ヤンセンファーマのウェブサイトより//ハンギョレ新聞社

ヤンセンファーマ…開発は遅いものの接種は1回のみ

 上の3つのワクチンとは異なり、ヤンセンはまだ第3相試験の中間結果を発表していない。速度の面ではやや遅れているものの、世界最大の医薬品メーカー、ジョンソン・エンド・ジョンソンのグループ会社で、4社の中で最多の6万人あまりを対象とした第3相試験を行っており、まもなく信頼できる効果を出すことが期待される。現在、カナダや欧州連合(EU)などで承認に向けた審査が進んでいる。

 ヤンセンのワクチンは、アストラゼネカのワクチンと同じく「ウイルスベクター」方式が用いられている。保管と輸送が相対的に容易で、費用も1回当たり10ドルと割安だ。何よりもヤンセンのワクチンは、他のワクチンとは異なり接種が1回だけなので手軽だ。ヤンセンの親会社であるジョンソン・エンド・ジョンソンは、コロナ・パンデミック期間には利潤を得ずにワクチンを供給すると発表している。

チェ・ヒョンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/973584.html韓国語原文入力:2020-12-10 10:01
訳D.K
英国で8日(現地時間)、世界で初めて一般人を対象としたコロナワクチンの接種が開始された。同日朝6時31分、コロナワクチンの一般接種者「世界第1号」となった英国の90歳の女性マーガレット・キーナンさんが、イングランド・コヴェントリー大学病院で看護師のメイ・パーソンズさんに、ファイザーとビオンテックが共同開発したワクチンを打ってもらっている。キーナンさんは「今まではほとんど一人で過ごしていたが、新年には家族や友達と会えると思ったら、前もって最高の誕生日プレゼントをもらったような気がする」と語った=コヴェントリー/AP・聯合ニュース

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