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[ニュース分析]北朝鮮の「低強度」軍事パレード、米国も「原則論レベル」で状況管理

登録:2020-10-12 02:31 修正:2020-10-12 06:53
米当局者「北朝鮮の核、ミサイル計画優先に失望」 
専門家「軍事パレード、挑発的ではなく誇示的」「現状維持」 
「米大統領が誰になろうと来年初頭にICBM発射の可能性」
北朝鮮は10日の労働党創建75周年記念軍事パレードで、米本土を狙える新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を公開した。新型ICBMは、火星-15型より全長が長くなり、直径も太くなった。22個の車輪がついた移動式発射台(TEL)が新型ICBMを積んで登場した=労働新聞ホームページより/聯合ニュース

 米国のトランプ政権は10日(現地時間)、北朝鮮が労働党創建75周年記念軍事パレードで新型兵器を公開したことについて「失望した」と述べ、非核化交渉への復帰を求めた。北朝鮮が軍事パレードや金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の演説において、韓国と米国に攻撃的なメッセージを自制すると、米国も原則論レベルの反応を示し、それ以上の刺激は避けている様子だ。今回の軍事パレードが約20日後に迫った米大統領選挙(11月3日)に及ぼす影響もほとんどないとみられる。

 米政府当局者は、韓国時間のこの日午前0時から平壌の金日成(キム・イルソン)広場で行われた軍事パレードについてのハンギョレの質問に対し、「北朝鮮が、禁止されている核および弾道ミサイル計画を優先視し続けているのを見て失望した」と述べた。続いて「米国は、ドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長がシンガポールで提示したビジョンを維持しており、北朝鮮が完全な非核化達成に向けた持続的かつ実質的な対話に関与することを求める」と述べた。

 北朝鮮は軍事パレードで、米本土を攻撃できる射程距離を持つと推定される大陸間弾道ミサイル(ICBM)である既存の「火星-15型」より全長と直径が大きな新型ミサイルを公開した。また、昨年打ち上げた北極星-3型より直径が大きいと推定される新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も公開された。金委員長は演説で「自衛的正当防衛の手段としての戦争抑制力を引き続き強化していく」と述べた。

 米政府の反応は、北朝鮮が2018年以降、米国との対話が始まった後も核・ミサイル計画を固守していることに対して警告を発したものだ。しかし、これは米国が北朝鮮に対してこれまで示してきた態度と変わらない。米国防総省もジョン・サプル報道官の論評を通じて「我々は軍事パレードに関する報道を認知している。我々の分析作業が進められており、この地域の同盟国と協議している」という原則論的な反応を示したのみだった。

 トランプ大統領は10日夜現在まで、北朝鮮の軍事パレードについて言及していない。トランプ政権はこれまで、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル発射試験や核実験を、容認できない「レッドライン」と見なしてきた。北朝鮮は今回の軍事パレードで、かつてより進化した兵器を公開したものの、発射試験は行っていないため、大統領選挙を控えたトランプ大統領は、外部の状況を管理することに重点を置いているようだ。

 北朝鮮専門家で米海軍分析センター(CNA)敵対局分析局長のケン・ゴース氏は、ハンギョレの電話取材に対し「北朝鮮はどの方向に向かうか決めずに、新型兵器という選択肢を維持しながら米大統領選挙を待っている」とし「米国もこれを好戦的に受け取らず、以前から明らかにしてきた立場を再確認した」と評価した。そして「今回のことで米国と北朝鮮の緊張が高まることはないだろう。現状維持というわけだ」と述べた。ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員もツイッターに「軍事パレードは挑発的ではなく誇示的だった」と指摘した。『ニューヨーク・タイムズ』もソウル発の記事で「金委員長は大陸間弾道ミサイルを発射せず見せるだけにすることで、大統領選挙を控えてトランプ大統領を刺激しないようにしたようだというのが専門家たちの話だ」と伝えた。

 朝米が今年の軍事パレードを比較的落ち着いてやり過ごしたことには、金委員長とトランプ大統領の個人的な信頼関係も影響を及ぼしたようだ。金委員長はトランプ大統領夫妻が今月初めに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性判定を受けると、快癒を祈る見舞いメッセージを直ちに送っている。先月出版されたボブ・ウッドワードの著作『怒り(原題:Rage)』で公開されたトランプ大統領と金委員長の間の2018~2019年の手紙からも、二人の格別な関係が明らかとなっている。

 ただし専門家たちは、北朝鮮の兵器が進化したことについては憂慮を示している。核非拡散問題の専門家であるマサチューセッツ工科大学のビピン・ナラン教授はツイッターで「北朝鮮はシステム改善と増強に焦点を当てつつ、普通の核兵器大国へと進化し続けている」とし「彼らはそれをあきらめていない」と述べた。スタンフォード大学「開かれた核ネットワーク」のメリッサ・ヘナム研究員は、ロイター通信に「今回のミサイルは怪物だ」と語った。クリングナー研究員もツイッターで「明らかなメッセージは、米国の主張とは異なり、核の脅威が解決されていないということ。誰が米国大統領に選出さたとしても、北朝鮮は2021年初めに新たな大陸間弾道ミサイルの発射試験を行うと予想できる」との見通しを示した。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/965265.html韓国語原文入力:2020-10-11 12:54
訳D.K

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