北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が10日、労働党創建75周年閲兵式(軍事パレード)の演説で「敬愛する南側同胞」という表現を用いて南北関係改善の意志を明らかにした。また、北朝鮮の住民に向けては「ありがとう」「面目ない」と頭を下げて、今後も経済を最優先する意を明確にした。北朝鮮核問題解決のための朝米交渉と南北対話が長期にわたり途絶えた状況で、金委員長の演説は軍事的緊張を高めない意志とみられたのが幸いだ。北朝鮮は、経済発展のためには南北間の経済協力が非常に重要だという点を再認識し、南北関係改善の動きを早く見せるよう願う。
今年の軍事パレードで、北朝鮮が新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を公開はしたが、まだ試験発射がなされたわけではないため、「挑発的行動」と規定することはないとみられる。また、金正恩委員長が「戦争抑止力の強化を続ける」としながらも「誰かを狙って抑止力を強化するわけではない」として、具体的に米国に言及しなかった点は、それなりに朝米関係を悪化させないという意思として読み取れる。11月の米大統領選挙以降に朝米関係の新たな摸索が考えられるだけに、北朝鮮の新型武器公開を過度に膨らませ行きすぎた対応をすることは望ましくない。
むしろ注目すべきは、北朝鮮の指導者としては異例的に住民に向けて「ありがとう」「感謝する」と12回も話し、「面目ない」として低姿勢をとった点だ。「最高尊厳の完全性」を重視してきた北朝鮮で、北朝鮮に対する経済制裁、新型コロナ、自然災害により苦痛を受けている住民たちに頭を下げたのは、金委員長の新しい統治スタイルを見せる象徴的事例であろう。今後も住民生活の改善など経済発展に国政運営の中心を置き続けるという意思でもある。
金委員長が「敬愛する南側同胞に暖かい気持ちを贈る。保健危機が克服され、北と南が再び手を携える日が来ることを期待する」と肉声で明らかにした点も肯定的だ。今すぐではないが、米大統領選挙後の適切な時期に、南北関係改善の意志を明確に示したものと評価できる。関係復元のためには、最近発生した西海(ソヘ)公務員襲撃事件の真相究明に北朝鮮当局が最善を尽くす姿を見せることの重要性を認識するよう願う。金委員長が重視する経済と住民生活改善のためにも、南北間の対話と協力の増進は必須だ。今後、北朝鮮当局の実践につながることを期待する。