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フィンランドとカナダでベーシックインカムの実験…汎欧州の運動に発展

登録:2020-06-09 06:34 修正:2020-06-10 06:06
2009年、アフリカのナミビアと
ブラジルのサンパウロで小規模な実験 
世界の関心を集めたフィンランドの実験は
福祉効果を確認、雇用促進は未知数 
欧州連合全体でベーシックインカムを取り入れようとする運動も
2016年6月5日のベーシックインカム国民投票を控えた5月14日、スイスのジュネーブ市内に「所得の心配が減ることになれば何をしますか?」との大型の横断幕が登場した。スイスの基本所得国民投票は77%の反対で否決された//ハンギョレ新聞社

 外国のベーシックインカムの議論は、1980年代の欧州の一部の学者を中心に福祉制度の改善策を探すところから始まり、全世界的な貧富の格差の拡大とともに世界的な争点に発展してきた。特に2017年には、フィンランドやカナダなど一部の国家で小規模な実験を進める段階まで発展した。最近は、個々の国家のレベルを越え、欧州連合(EU)全体に統一された制度を取り入れようとする動きも現れている。

 小規模な実験としては、2009年にドイツの援助団体がアフリカのナミビアの低所得者を対象に実験を行い、犯罪減少と児童の教育機会の拡大などの効果を確認したことがある。ほぼ同時期にブラジルのサンパウロでも小規模な実験が試みられた。

 世界的に注目された事例としては、2017~2018年のフィンランド政府の実験が挙げられる。実験内容は、2016年11月に失業状態だった25~58歳の労働者の中から無作為に2000人を選び、2年間、毎月560ユーロ(約73万ウォン、約6万9000円)を支給するものだ。この実験の主な目的は、ベーシックインカムの雇用促進効果を分析することだった。

 フィンランド政府は先月7日に出した最終報告書で、ベーシックインカムが失業者の幸福感増加など福祉に及ぼす効果は明らかな一方、雇用促進効果は大きくなかったと指摘した。ベーシックインカム受給者586人と対照群である一般失業者1047人に対するアンケート調査の結果、ベーシックインカム受給者の生活満足度は10点満点で7.3点である一方、一般失業者は6.8点だった。

 一方、労働時間については両集団間の差は微小だった。ベーシックインカムを受けた人たちは、2017年11月から2018年10月まで、比較対象集団より平均6日程度多く働いたことが明らかになった。さらに2017年1~10月の場合は、両集団間の労働時間に違いはなかった。

 最終報告書の結果に対する解釈は、見方によりそれぞれ異なる。ベーシックインカムの支持者は、当初のベーシックインカムの目的は雇用促進ではなく、実験期間中に政府が雇用政策を変更したことにより雇用誘発効果を十分に評価できなくしたと指摘する。一方では、ベーシックインカム受給者の生活満足度が期待より高くないとの評価も出ている。

 カナダのオンタリオ州は2017年、低所得層4000人に毎月1320カナダドル(約115万ウォン、約10万7000円)を与える3年の期間の実験を始めたが、財源が枯渇して1年後に中断した。この実験は雇用を得ることになれば支援対象から除外される形式のため、フィンランドの実験よりさらに制限的だ。

 国家全体レベルの議論はスイスの事例が代表的だ。スイスは2016年、全国民に毎月2500スイスフラン(約300万ウォン、約28万円)を支給する法案を国民投票にかけたが、77%が反対して否決された。否決の原因としては、不確実な財源確保案と一部の財源を既存の社会福祉基金から転用する可能性に対する懸念が挙げられた。

 最近では、EUレベルでベーシックインカムを取り入れるための運動も力を得ている。EUの欧州委員会は先月15日、国際活動家が提案した「条件のない欧州ベーシックインカム」の議論を正式な市民発の議題として採択した。1年以内にこの提案がEU加盟国7カ国以上で最低基準値以上の同意を含めた合計100万人の同意を得れば、EUはこの問題を正式議題として検討することになる。

シン・ギソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/948473.html韓国語原文入力:2020-06-08 22:25
訳M.S

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