米国がロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約から脱退して16日めで中距離巡航ミサイルを初めて試験発射した。米国は待っていたかのように中距離ミサイルの開発に積極的に乗り出し、世界の軍備競争が本格化するとの憂慮が高まっている。このミサイルのアジア配備の有無をめぐり緊張感も高まっている。
米国防総省は19日(現地時間)、報道資料を出し「日曜日の18日午後2時30分、カリフォルニア州サンニコラス島で通常兵器として設定された地上発射型巡航ミサイルの飛行試験を実施した」とし、「試験ミサイルは地上の移動式発射台から発射され、500キロメートル以上を飛行し、正確に目標物を打撃した」と発表した。国防総省は発射場面の写真と動画も公開した。ロバート・カーバー国防総省報道官は「(今回のミサイルは)トマホーク地上攻撃ミサイルの改良型」と話した。国防総省は「この試験で収集されたデータと教訓は、国防総省の今後の中距離能力開発に役立つだろう」と明らかにし、さらに高度化された中距離ミサイルの試験発射が続くだろうと予告した。国防総省は11月に射程距離を延ばした中距離弾道ミサイルの試験発射も計画している。
今回のミサイル試験発射は、中距離核戦力全廃条約の下では禁止されていた行為だ。だが、米国はロシアが2017年に実戦配備した9M729ノバトール巡航ミサイルを条約違反事例として挙げ、2月に「ロシアが協定遵守に復帰しなければ、6カ月後に脱退する」と予告し、今月2日に脱退を実行した。米国の主張を否認してきたロシアも、同じ日にこの条約を脱退した。中距離核戦力全廃条約は、1987年12月、ロナルド・レーガン米大統領とミハイル・ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が合意した条約で、射程距離500~5500キロメートルの地上発射型中・短距離弾道・巡航ミサイルの生産、実験、配備を全面禁止した。
米国はこの条約からの脱退を宣言した日から「地上発射巡航・弾道ミサイルの開発作業をすでに始めた」として意欲を見せた。特にマーク・エスパー国防長官は3日、中距離ミサイルをアジアに配備する意向を明らかにしたのに続き、「該当地域の同盟らと協議して配備するだろう」と述べた。
米国の今回のミサイル試験発射に対して、ロシア上院国防委員会所属のフランツ・クリンツェビッチ議員は、RIAノーボスチ通信に「中距離核戦力全廃条約が公式に終了した後、2週間で米軍がミサイルをテストしたことは、国際社会に対する厚かましい冷笑であり嘲弄」だと話した。彼は「もちろん私たちは米国がこうした種類の武器で優位を持てないよう、最短期間内に最善を尽くすだろう」とし、ロシアは軍備競争に入る意図はないと付け加えた。だが、8日のロシア海軍施設での爆発事故がウラジーミル・プーチン大統領が自慢してきた新型核推進巡航ミサイル試験と関連があるとの観測が出るなど、米-ロシアの軍備神経戦はすでに加熱している。中国まで加わり軍備競争が悪循環するという懸念も出ている。米国は、核弾頭数を制限するためにロシアと2010年に合意した新戦略兵器削減条約(新START)を2021年の満期以後に延長することにも消極的なので、全世界が核武装競争に突入する可能性もある。
米国が中距離ミサイルを韓国、日本、オーストラリアなどアジアに配備する可能性は、すでに地域内の火薬庫となっている。特に韓国配備の可能性に対し、ロシア、中国、北朝鮮が強く反発している。チェ・ヒョンス韓国国防部報道官は5日「米国側と議論したり自主的に検討したこともなく、そのような計画もない」と話した。