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韓日関係の「岐路」…列強の隙間での力のバランスを立て直す機会

登録:2019-08-14 09:04 修正:2019-08-15 12:17
光復節74周年記念
北東アジアの地殻変動
 

米、覇権国家の義務を放棄し便益だけを追求 
米中対立激化で「キッシンジャー秩序」が崩壊 
韓日衝突も北東アジア勢力再編の一部分 
韓国、アジアの従属・独立変数への分かれ道
北東アジア各国の勢力再編の動き//ハンギョレ新聞社

 韓国と日本の「対峙状態」が続いている。表面的には昨年10月の韓国最高裁(大法院)の強制動員賠償判決と日本の韓国に対する輸出規制が直接的な導火線だ。しかし、構造的に見れば、数十年間維持されてきた東アジアの地政学的秩序が崩壊し、再編される過程で必然的に噴出せざるを得ない衝突だ。

 1990年代初めの社会主義ブロックの没落以降、アジアを規定した米国主導の地政学的秩序は崩壊している。ドナルド・トランプ米政権は中国の覇権の挑戦を容認せず、最小限の「公共財提供」という覇権国家の義務を打ち捨て、便益だけを追求している。

 現在、激変に直面したアジアの地政学的秩序は、遠くは米国と中国が和解した1970年代初め、近くは両国が本格的協力に入った1990年代初めに形成された。ソ連が崩壊した後、米中は経済協力をもとに米国が主導する資本主義分業体制という「自由主義の国際秩序」拡散の柱となった。

 「フィナンシャル・タイムズ」は5日、「アジアの戦略秩序が死にゆく」という社内コラムで、このような秩序を米中国交正常化を導いたヘンリー・キッシンジャー元米国務長官の名前を取って「キッシンジャー秩序」と名づけた。同紙は、最近アジアで起こった一連の事態は結局「キッシンジャー秩序の崩壊」だと規定した。中国の浮上による米国の相対的な弱体化で、このような秩序が破綻したということだ。

 米国が恐慌状態に陥った2008年の金融危機は変曲点だった。米国は中国の浮上を実存的に警戒し始め、中国は自身の浮上を米国が芽から摘み取ろうとしていると反発し、両者の戦略的不信が深まった。「G2」という用語が登場し、米中の公開的な競争構図が始まったのもこの頃だった。

 バラク・オバマ米政権は「アジア回帰」を掲げて中国牽制に入った。しかし「協力の中の競争」や「競争の中の協力」で両国関係を規定したことから分かるように、協力的な要素は残っていた。ドナルド・トランプ大統領の「米国優先主義」に至っては「協力」という言葉はなくなり、競争と戦争だけが残った。米中は4回の貿易交渉を行ったが、「未来の競争」である知識財産権や先端技術をめぐる双方の激しい意見の違いで、根本的合意に対する展望はますます希薄になっている。

 覇権は放棄せず、覇権維持費用はまるごと同盟国と友好国に転嫁するトランプ政府の外交政策の最大の引火点は、中国の位置する東アジアだ。経済戦争はすでに軍事分野にまで拡大した。米国は7月に入り、中国にとって最も敏感な台湾海峡に米空母を航行させた。中国もベトナムが領有権を主張する南シナ海海域に石油ボーリング船を送り、両国の戦艦の対峙を招いた。中国は初の東南アジア地域の軍事基地開発をカンボジアで進めている。

 特に、国際軍縮体制の一軸である「中距離核戦力」(INF)条約から2日に公式脱退した後、翌3日にマーク・エスパー米国防部長官は「中国のミサイル保有高の80%以上が中距離核戦力射程距離システム」だとし、中国を狙ったアジアの中距離ミサイル配置の意向を明らかにした。ジョン・ボルトン米国家安保補佐官は6日、韓国と日本が中距離ミサイル配置の対象国であることを明らかにした。

 中国とロシアの米国に対する公開的で強い共同対応は、東アジアの地政学秩序の亀裂を進ませている。中国は韓国・日本・オーストラリアを敵視し、「隣国が米国の中距離ミサイルを配備するなら黙って見過ごしはしない」と脅迫し、ロシアも強く反発した。特に中国とロシアは7月末に初の合同哨戒飛行を東海で展開しており、この過程でロシアの軍用機が韓国の独島領海を侵犯した。朝鮮半島周辺海域が米中対決の戦場になり得るというシグナルだ。

 日本は東アジア再編の過程で米国との軍事協力強化および中ロとの関係改善という「ツートラック」戦略を駆使している。日本の提案で始まった米国の「インド太平洋」戦略は、従来の同盟体制に対する米国の怠惰に対応した日本の自救策である。日本はこれを通じて、日米同盟における従属的地位を離れ、対等で独立した地位を狙っている。一方では、日ロ平和条約交渉、中国との関係改善、日朝交渉を推進しているが、成果は微々たるものだ。

 6月30日、歴史的な板門店南北米首脳会合があった翌日に、安倍政府は対韓国輸出規制を敢行した。与党の消息筋は、韓国の最高裁の強制動員賠償判決後、韓日が水面下の交渉もまともにできなかった背景には、北朝鮮問題に対する日本の執拗な妨害に気分を害した韓国側の不信があると伝えている。

 さらに根本的に、これは従来の韓日関係の枠組みの時効満了を意味する。1965年の韓日請求権協定に基づく従来の韓日関係は、基本的に米国は軍事安保で、日本は経済的側面で韓国を後見する体制だった。しかし、米国は過去のように軍事安保の責任を負おうとしない上に、韓国は力がついて「65年体制」に対する現状変更を試みている。

 結局、歴史問題と朝鮮半島の平和体制をめぐり、日本の戦略的利害が韓国に貫徹されない状況が、対韓国輸出規制に触発された韓日関係悪化の根本的な背景だといえる。歴史的なライバルである中ロという北方大陸勢力を牽制する橋頭堡である朝鮮半島が、自分の統制権から抜け出そうとすることに対する日本側の焦りの表れだ。

 韓国も、アジアの激変する地政学的秩序の中で未曾有の危機と機会に直面している。不確実性の時代には、周辺列強への従属変数では生き残れない。これは危機だ。しかし、うまく対処すれば独立変数になり得る。これは機会だ。立て直しに入るしかない韓日関係がまさにその指標だ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/asiapacific/905666.html韓国語原文入力:2019-08-14 07:21
訳M.C

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