今月1日、ドナルド・トランプ大統領が「6月12日、シンガポールで北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と会う」と明らかにしたことで、この会談を実行するための実務準備チームの面々に関心が集中される。朝米首脳会談は、朝鮮半島の冷戦の壁を崩すという歴史的意味に加え、「今世紀で最も難しい首脳会談」と言われるほど移動や警護、儀典、取材支援など、さまざまな実務上の難題が重なっており、これに備えなければならない実務準備チームの力量がいつになく重要だ。
米国の実務チームを率いるのはジョセフ・ヘイギン大統領副秘書室長だ。彼はロナルド・レーガン元大統領以降、すべての共和党の大統領経験者らの海外歴訪のスケジュールを担当してきた米国で最高の「儀典専門家」として知られている。ヘイギン副秘書室長は、前任のジョージ・W・ブッシュ大統領時代の8年間、ホワイトハウス副秘書室長として座を守り、トランプ政権が発足すると8年ぶりにホワイトハウスに復帰した。彼のミドルネームがホワイトハウス(Whitehouse)である点も興味深い。ホワイトハウスの仕事が天職であるわけだ。
米国のCNN放送は3日、「ホワイトハウスはヘイギンに首脳会談を開くのに一番よい場所など最高の選択をできる裁量権を与えた」とし、「彼がホワイトハウスの物流と人的資源の動員と関連したほぼすべての要素を管掌している」とした。ヘイギン副秘書室長など30人あまりの米国実務準備チームは、シンガポール南方の休養地であるセントサー島のカペラホテルで先月30日、北朝鮮の準備チームと接触する姿が確認された。
ヘイギンの元同僚たちはCNNに、今回のような難しい会談の準備に「彼ほどの適任者はいない」と口をそろえて言った。ジョージ・W・ブッシュ大統領の秘密警護局長を務めたラルフ・バシャムは「全世界の人のなかで(今回のように難しい首脳会談の)実務を指揮する人がいるとすれば、それはまさしくヘイギンだ」と述べ、ジョシュア・ボルトン前ホワイトハウス秘書室長も「このようなことを準備するためには数カ月がかかる。それに、思うほどスムーズには進まない」と述べながらも、「しかし、ヘイギンの存在によって信頼感が増す」と話した。
北朝鮮実務チームを率いるのは金正恩委員長の「秘書室長」あるいは「3階の書記室長」と呼ばれるキム・チャンソン国務委員会部長(74)だ。朝日新聞は彼について「先代の金正日(キム・ジョンイル)総書記時代から秘書室(書記室)で勤務しており、金氏一家の“執事”と呼ばれる。最高指導者の儀典や動線の決定に絶対的な影響力を持っているように見える」と指摘した。しかし、北朝鮮体制の特性上、金部長はヘイギン副秘書室長ほどの実務裁量権を与えられなかったものと推定される。
金部長は2月5日に金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長が金正恩委員長の特使として平昌(ピョンチャン)冬季五輪出席のために訪韓した時に随行し、チョン・ウィヨン大統領府国家安保室長が文在寅(ムン・ジェイン)大統領の特使として金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長兼統一戦線部長と会談する時も陪席した。金部長の「独特な」存在感が明らかになったのは、4・27南北首脳会談の時だった。韓国軍儀仗隊査閲を終え、南側の平和の家へ移動する文在寅大統領と金正恩委員長の後を金与正副部長と金英哲部長がついて歩いて行くと、金部長が近付いて彼らを動線から離れさせた。テ・ヨンホ元駐英北朝鮮大使館公使は、最近の著書『3階書記室の暗号』で「彼の元夫人のリュ・チュノクは、北朝鮮で有名な抗日革命闘士夫婦であるリュ・ギョンスとファン・スンヒの娘だ。リュ・チュノクは(金正日(キム・ジョンイル)総書記の妹である)キム・ギョンヒと親しい間柄だった」と、彼の出世の背景を書いた。