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[ニュース分析]金正恩の“招待状”に、直ちにOKしたトランプの計算は?

登録:2018-03-09 23:23 修正:2018-03-10 08:23
「非核化意志」など対話条件充足と判断 
決定権者1人と対話するという勝負師気質 
11月中間選挙控え、北朝鮮核解決が得点の機会と判断
チョン・ウィヨン国家安保室長が8日(現地時間)、ドナルド・トランプ米大統領と会い話を交わしている=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮労働党委員長がドナルド・トランプ米大統領に会おうという「招待状」を送ったことも予想を越えるカードだったが、トランプ大統領が8日(現地時間)これを電撃的に受け入れたことはさらに驚くべきことだという反応が出ている。トランプ行政府の高位関係者もこの日、匿名の電話ブリーフィングで声が多少浮き立っていた。

 トランプ大統領はこの日午後、ハーバート・マクマスター国家安保補佐官などに訪朝の結果を説明したチョン・ウィヨン大統領府国家安保室長とソ・フン国家情報院長に「はやく会いたい」と述べ、突然の面会を提案した。執務室のオーバルオフィスでチョン室長から「トランプ大統領と直接会って話を交わせば大きな成果を上げられるだろう」と金委員長が言ったという話を聞いた後、直ちに「そうしよう」と応え予想をはるかに越える積極的意志を見せた。

 まず、北朝鮮核解決という技術的観点のみから見れば“破格に破格”で応酬したトランプ大統領の決定の背景には、自身が設定した朝米対話の要件が充足されたという判断があったと見られる。トランプ大統領はこの間、最大の圧迫を強調しながらも「適切な条件ができるならば」いつでも対話する用意があるとして扉を開けていた。金委員長が対北朝鮮特別使節団を通じて非核化の意志とともに、核・ミサイル試験の自制意思を明らかにし、「適切な条件」が熟したと判断したと見られる。

 特に、トランプ行政府はこの間、北朝鮮の非核化意志に対する懐疑的見解を示してきたが、チョン室長がトランプ大統領に会い「金委員長に会ってみたところ率直に言って真正性が感じられた」と説得したことが功を奏したとみられる。ただし、トランプ行政府が北朝鮮の非核化の可能性と意志に深い不信を見せてきた点を考慮すれば、対北朝鮮特使団がメディアに公開されていない“プラスアルファ”をトランプ大統領に話したのかも知れない。

9日午前、米ワシントンのホワイトハウスでチョン・ウィヨン国家安保室長(真ん中)がドナルド・トランプ米大統領との面談内容を発表している/AP聯合ニュース

 「非核化」が前提になる限り、北朝鮮のミサイル試験自制も米国としては損をすることはない。米国の情報機関は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が米本土を攻撃できる力量を備えるまでに数カ月しか残っていないとし、緊急性を強調してきた。弾道ミサイルのモラトリアム(一時猶予)は、まだ大気圏再進入技術が完成していないと判断される北朝鮮のミサイル能力の高度化を縛り、またはその速度を遅らせることができる。

 実務会談を経ずに首脳会談の形式を直ちに受け入れたことには、金委員長と直接“談判”を行うという勝負師的気質と交渉に対する自信、ビジネス取引で鍛えられた機会を捕らえる感覚があまねく作用したと見られる。米国行政府の高位関係者も電話ブリーフィングで「トランプ大統領は交渉に対する自身の名声を作ってきた」として「過去のあきあきする苦闘を繰り返す代わりに、実際に決定を下せる一人(金委員長)の招待を受け入れた」と明らかにした。

 そのうえ、とりわけ“歴史的なこと”が好きで自身を目立たせたいトランプ大統領特有の気質まで作動したかもしれない。ノーベル平和賞を念頭に置いて“歴史的な”朝米会談を描いてみたのかも知れない。

 米国内の政治日程の側面から見れば、トランプ大統領は11月の中間選挙を控えて点数を稼がなければならないタイミングだ。特に、下院選挙は大統領支持率に大きな影響を受ける。トランプ大統領の支持率は40%を下回り、下院での多数党の地位を奪われかねないという展望が高まっている。側近が相次いでホワイトハウスを脱出し、“ロシアスキャンダル”の捜査網が参謀と家族にまで迫ってきている。彼の立場としては、乱麻のようにからまった中東問題よりは北朝鮮核問題に勝負をかけられるならば、こうした国内イシューをぼやかし得点を上げられると判断することができる。ク・ガブ北韓大学院大学教授は「中間選挙を控えて朝米の外交的成果が役に立つか、最悪の葛藤へ進むことが役立つか、計算してみただろう」とし「北朝鮮の提案を拒否するには名分もなく、拒否したとすれば米国がかえって孤立しただろう」と分析した。

 トランプ大統領は、チョン室長らと会った後、異例にもホワイトハウス記者室に立ち寄り「韓国が北朝鮮と関連して重大発表をするだろう」とし、自らムードを盛り上げた。ある記者が「北朝鮮と関連した話か」と尋ねると、「それ以上だ。信じても良い」と強調した。

ワシントン/イ・ヨンイン特派員、ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/835405.html韓国語原文入力:2018-03-09 20:21
訳J.S

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