中国の習近平国家主席兼共産党総書記の特使として北朝鮮を訪問した宋濤中国共産党対外連絡部長が20日に帰国したが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長との面会に対する言及がなく、その背景に注目が集まっている。
宋部長が帰国したにもかかわらず、両国の官営メディアが面会に関する報道を行わないのは“異常信号”と言える。この5年間、宋部長の前に北朝鮮を訪問した部長(長官)級以上の中国高官は4人で、王家瑞全国政治協商会議副主席(2012年7月30日~8月3日、当時共産党対外連絡部長)、李建国全国人民代表大会副委員長(2012年11月29~30日)、李源潮国家副主席(2013年7月25~28日)、劉雲山政治局常務委員(2015年10月9~12日)などだ。彼らはいずれも金委員長と面会した。
「新華社通信」は20日、「宋濤部長が朝鮮労働党指導者らと会見・会談した」と報じただけで、金委員長の名前には言及しなかった。特に、宋部長は平壌(ピョンヤン)に到着した17日、北朝鮮権力序列第2位のチェ・リョンへ労働党副委員長と面会し、金委員長への贈り物を渡したと、「朝鮮中央通信」が報じた。以前の中国高官がいずれも金委員長に会って直接贈り物を渡したことからすると、最初から面会実現の可能性が高くなかったと推定することもできる。
今のところ、面会に関する発表が後に出る可能性も残っているが、もし面会が実現されなかったことが確認されれば、朝中関係がいつになく悪化の一途を辿っていることを示すものと言える。中国最高指導者である習主席の特使が訪問したにもかかわらず、北朝鮮最高指導者に会えなかったとすれば、これは中国の対北朝鮮外交の失敗を物語るもので、結局、北朝鮮核問題の解決に向けた国際社会の努力にも赤信号が灯らざるを得ない。
専門家らは、すでに朝中関係が史上最悪だという診断を下してきた。北朝鮮の核・ミサイル実験によって、国連安全保障理事会(安保理)の対北朝鮮制裁決議が相次いで採択されるたことをめぐり、北朝鮮は拒否権を持った中国が決議に参加したことに対する不満を滲ませてきた。何よりも核兵器を放棄しないという考えを強調してきた北朝鮮と、対話を通じた非核化を強調する中国の隔たりがあまりにも大きい状況だ。新華社通信が20日付で、宋部長と北朝鮮の指導者たちが「両党・両国関係、朝鮮半島問題など共同関心の問題について意見を交換した」と言及しただけで、「北朝鮮の核または朝鮮半島の核問題」という用語を使用しなかったことも目を引く。
北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「北朝鮮の核問題をめぐる朝中の立場の違いが大きいため、会ってもあまり役に立たない。不快な思いをするだけという判断の下、会わなかった可能性もある」と話した。ヤン教授は、金委員長との面会が実現しなかったのが事実なら、最近の中国の対北朝鮮圧迫・制裁に対し、北朝鮮が遠回しに不平不満を示したものかもしれないと分析した。
国立外交院のキム・ハングォン教授は、後に面会の事実を確認する発表が出る可能性が残っていると指摘した。しかし、「対北朝鮮制裁局面でも一定レベルの戦略的連携を維持することが朝中双方に有利な状況だが、特使としてきた宋部長が金委員長に会うのが難しい状況まで行ったのは、核心メッセージである北朝鮮の核問題とそれによる朝中関係において双方の利害関係の違いが大きいためと見られる」と話した。
以前は党大会後、中国が北朝鮮で権力序列最高位25人に該当する政治局員を送ったが、今度はそれよりも格が低い中央委員の宋部長を送ったのは、北朝鮮との意見の隔たりを縮めるのが難しい状況であることを考慮したためという分析もある。亜州大学中国政策研究所のキム・フンギュ所長は「第17~18回党大会以降は、中国政治局員が北朝鮮に行ったが、今度はそれより格が低い中央委員が派遣された。また、過去には党大会後に中国特使が北朝鮮を最先に訪問したが、今回はラオスとベトナムを訪問してから(北朝鮮に)行った。北朝鮮が不快感や不満を抱いた可能性もある」と話した。
北京/キム・ウェヒョン特派員、キム・ジウン、ノ・ジウォン記者