北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏(46)殺害事件を捜査中のマレーシア警察は24日、金正男氏の遺体から神経系に作用する毒性物質のVXが検出されたと発表した。毒性物質が発見されたことで、金正男氏が毒殺された可能性はさらに高まり、「心臓ショックによって死亡した」という北朝鮮の主張は信ぴょう性が低くなった。
カリド・アブ・バカル警察庁長は同日、声明を発表し、科学技術革新部化学局化学兵器センターから、金正男氏の顔と目の粘膜から採取したサンプルを分析した結果、VX神経物質と呼ばれる「エチールS-2-ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホンチオレート」(Diisopropylaminoethymethylphosphonothiolate)を検出したという暫定的な分析報告書を受けたことを明らかにした。バカル庁長はVXが化学兵器禁止条約(CWC)によって化学兵器に分類された物質だと説明した。
VXは「毒性物質X」(Venomous agent X)の略語で、大量殺傷用化学兵器に使用される。VXは液体と気体状態で存在しながら、主に中枢神経系に損傷を与える。カボチャの色で粘性が強く、気化性が小さいため、液体状態で散布でき、目や呼吸器、皮膚などを通じて人体に吸収される。一定時間内に実験対象の半分が死亡する「半数致死量」は皮膚によって収された場合は10ミリグラム、呼吸によって吸い込まれた場合は30~50ミリグラム(min/平方メートル)だ。
西江大学化学科のイ・ドクファン教授は「金正男氏にVXを使用したなら、目に深刻な問題が発生したはず」だと話した。日本のフジテレビなどが公開したクアラルンプール国際空港第2庁舎の監視カメラには、攻撃を受けた金正男氏が空港案内デスクで目をこするようなしぐさをして何かを説明するシーンが含まれている。
マレーシア警察は、ベトナムとインドネシア出身の女性容疑者2人が今月13日、空港で、素手に毒性物質をつけて正男氏に近づき、彼の顔を手でこすった直後、化粧室に行って手を洗ったと明らかにした。
警察は2人の女性容疑者の一人がVXの使用による苦痛を訴えていると伝えた。地元メディアの「ザ・スター」は、バカル警察庁長が「ある女性が数回嘔吐した」と述べたが、具体的な内容は明らかにしなかったと報道した。
VXが特定人を殺害することに使われたのは1994年12月、日本のオウム真理教信者たちが大阪の町で自分たちの組織に侵入した疑いのある28歳の青年の首にVXをばら撒いた事件が初めてであり、唯一とされている。当時の青年は、犯人を90メートルほど追いかけたが、倒れて昏睡状態に陥り、10日後死亡した。
マレーシア警察は、原子力許可委員会にクアラルンプール空港にVXの跡が残っているか確認するための捜索を要請する計画だと地元メディアは伝えた。警察はVXがどのようにマレーシアに入ってきたのか調査していると明らかにした。
これに先立ち、警察は22日夜、クアラルンプールのあるマンションで30代のマレーシア人の男性を逮捕し、付近の他のマンションから化学物質と多数の手袋、靴などを押収した。警察はすでに逮捕された容疑者らを調査する過程でこの男性の身元を把握した。