北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男であり、金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の腹違いの兄である金正男(キム・ジョンナム)氏(46)が13日午前、マレーシアで殺害されたと伝えられた。
韓国政府消息筋は14日、金正男氏の殺害の事実が大統領府などに報告されたと聞いていると語った。金正男氏は13日午前9時にクアラルンプール空港で女性2人に毒針を刺され殺害されたとされる。金正男氏は毒針で倒れて空港診療所に行き、病院に移送されたが、結局死亡した。
マレーシア警察は、死亡した金正男氏のパスポートには名前がキム・チョル(Kim Chol)と書かれており、1970年6月10日平壌(ピョンヤン)出生となっていると明らかにした。現在警察はマレーシア内での金正男氏の動線や彼が会った人物に対して調査を進めており、2人以上の女性とされる容疑者の後を追っている。
マレーシア警察は、金正男氏が2月6日にマレーシアに入国し、マカオに出国する計画だったとし、金正男氏が出国場で待機していたと明らかにした。
正男氏の暗殺には、北朝鮮関連当局が介入した可能性が高いという推定が多い。一時、金正恩委員長と権力継承をめぐる競争関係にあったからだ。世宗(セジョン)研究所のチョン・ソンジャン統一政策室長は「金正男氏暗殺は、金正恩の直接承認や同意なしには成しえないこと」とし、「これまで金正男氏の監視を務めてきた北朝鮮偵察総局が直接関与したものと判断される」と話した。
今年で5年を経た北朝鮮の金正恩体制は、昨年36年ぶりに第7回党大会を開き、党組織を整備するほど安定的という評価もあるが、昨年から核・ミサイル開発にともなう各種の対北朝鮮制裁の局面で内外の危機を迎えている。そのような理由から、最小限の脅威要素でも取り除かなければという必要性が高くなったという観測が流れている。
まず、金正日総書記の長男である金正男氏が北朝鮮の権力世襲を批判してきたという点で、金正恩委員長が腹違いの兄を暗殺したのではないかという話が出ている。2011年12月に金正日総書記が死亡する前までも、金正男氏は北朝鮮の権力世襲に対する批判的発言を公然としてきた。彼は2010年10月11日、テレビ朝日とのインタビューで「個人的に3代世襲に反対する」と述べ、2011年1月、東京新聞とのインタビューでも同じ趣旨で話した。しかも、金正男氏は一時、有力な次期後継者とされていた。腹違いの弟である金正恩委員長より認知度も高く、後継授業を早くから受けてきたという話も多かった。
彼が追いやられた決定的な事件は2001年に起きた。偽造パスポートを所持して日本に入国しようとして摘発され、国際的な恥をさらした後に権力から遠ざけられたという。後継構図から押し出された金正男氏は、マカオや中国を転々としながら、北朝鮮の外で待機していた。ただ、彼はマスコミとのインタビューで、金正恩委員長が後継者とされたことについては、「父が決断したものだと思う。もともと残念でもなく、また関心もなかったので全然気にならない」と明らかにするなど、慎重な態度を取った。金正日総書記の死亡後、金正恩委員長が権力の座に上がった後、彼は外部への発言を自制してきたが、外国マスコミとはたまに接触したりした。金正恩委員長の脅威から自分を防御するため、国際社会に自分の存在を喚起させたというのが専門家の分析だった。
金正男氏の死は、悪化した中朝関係と無縁ではないという指摘も出ている。金正恩委員長が最高指導者の地位に就いて5年が過ぎたが、まだ中朝首脳会談は行われていない。中国政府から公式な認定を受けられていない状況で、金正恩委員長は中国が金正男氏を立てて、いわゆる「傀儡政権」を樹立する可能性を最も恐れているという観測が提起されてきた。北朝鮮に急変事態が発生する場合、比較的開放的かつ柔軟な思考を持った金正男氏を前面に掲げる可能性が大きいというものだった。このために海外をさまよう金正男氏の身柄を保護してきた背景には中国があるというのが専門家の一致した見解だった。そのようなことから、今回の金正男氏の死は、2013年12月に電撃的に行われた金正恩委員長の叔父のチャン・ソンテク氏の処刑と同じ延長線上に置かれているといわれる。チャン・ソンテク氏は北朝鮮の代表的な「親中人物」だった。
韓国語原文入力:2017-02-15 00:27