登録 : 2015.09.26 02:13 修正 : 2015.09.27 16:20

9月14日に国会議事堂前で開かれ集会でSEALDsメンバーの20代女性が拡声器を持ってスローガンを叫んでいる。安保法案反対デモが行われた場所には、20代の若者たちが叫ぶヒップホップ風のスローガンを大人が真似して叫ぶ姿が話題になった=Rei Shiva提供//ハンギョレ新聞社
 安倍晋三首相と自民党が平和憲法を無力化する法案を通過させた19日、アジアに激震が走りました。多くのアジア人が、日本が再び軍国主義の道を歩むのではないかと、懸念しています。ところが、この日、日本の多くの国民にも衝撃を与えたことをご存知ですか?韓国の市民活動家が日本で数カ月間に亘り行われた市民たち抵抗を目撃し、文章を送ってきました。2008年のキャンドル世代が登場した韓国社会のように、日本の社会にも新しい波が広がっていそうです。

 第二次世界大戦後、日本と東アジアの平和を支えてきたのは、平和憲法(日本国憲法第2章9条で戦争のためのいかなる戦力も保持せず、交戦権も認めないと宣言した条項)だった。しかし、先週、平和憲法の基盤を根底から覆す法案が、結局国会を通過してしまった。17日、日本が集団的自衛権を行使できるようにする「安保法案」が参議院特別委員会(以下、特別委員会)で可決されたのに続き、19日には、本会議を通過した。これにより、安倍晋三首相が進めた安保法案は、4カ月間の議論の末、国会審議を通過して最終的に成立した。今年初めまでは安保法案が日本社会の大きな争点にならなかったことを考えると、まさに速戦即決の処理だった。安倍首相の宿願である「普通の国」、「戦争ができる国」に向けて、日本は大きな一歩を踏み出した。

 二つの抵抗があった。ほとんどのマスコミは、国会の中で対立する与野党に焦点を当てることに奔走したが、国会の外でも意味のある抵抗が見られた。場外の抵抗を率いたのは日本の市民社会団体だったが、実際の主人公は団体ではなく、市民たちの方だった。抵抗が芽生えた5月と抵抗が本格化した7月、安全保障法案が通過した今月19日まで、国会の前でその抵抗を目撃した。マスコミはあまり報じなかった日本の市民たちの生の抵抗の断面を伝えたいという思いで、この文章を書く。アジアの民衆が「日本人はみな同じ」だと思っている時、日本の民衆はアジアの平和のために戦っていた。

■産経新聞のデモ参加人数を計算する方法

 5月3日に開かれた憲法関連の集会(日本の「憲法の日」を記念した集会)までは、何の変哲もない抵抗に見えた。「戦争をさせない1000人委員会」、「解釈に憲法9条を壊すな!実行委員会」、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」という思想的背景が異なる3団体が、戦後初めて連携して「総がかり行動実行委員会」を結成したことが少し新鮮に映る程度だった。集会参加者はほとんど60代以上だったし、いつもの顔ぶれが集まるような雰囲気だった。

 ところが、6月初めから雰囲気が少しずつ変わった。6月3日、憲法学者166人が「安保法案の廃案」を求める声明を発表した。翌日の4日には衆院憲法審査会に出席した憲法学者3人が口を揃えて安倍首相の安全保障法案が「違憲」と答えた。その中には自民党が推薦した学者もいた。すると、まったく新しい部類が集会場を訪れ始めた。

 日本の母親たちが動き出した。7月5日、3人の子供の母親であり、大学院生のネチズンが、フェイスブックに「安保関連法案に反対するママの会」(以下、ママ会)というページを作った。開設してから9日目の7月13日まで、3700人が「いいね」を押した。「ママの会」は、「戦争に送りだすために子供を育てているわけではない。だれの子どもころさせない」と主張し、地域別に自主的な会を発足させた。

 母親たちに続いて学界が動き出した。憲法学者を中心に7月に「立憲デモクラシーの会」が発足し、大学教授を中心に「安全保障関連法案に反対する学者の会」が発足した。 毎日新聞が8月23日報道した内容によると、「安全保障関連法案に反対する学者の会」が集計した結果、所属教授と学生が安全保障法案に反対の意思を表明した大学が8月22日基準で約90校に達したという。

 憲法学者がなぜ安全保障法案が違憲なのかを説明し、大学教授が民主主義とは何なのかを改めて諭したことで、学生たちも立ち上がった。学生運動団体であるSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)がその中心に立っていた。若い学生たちは、大人の前で果敢にもヒップホップのリズムに合わせてスローガンを叫んでいた。ベビーカーを押していたママたちもヒップホップ風のスローガンを楽しんでいた。誰もが知っている有名な芸能人も集会に出て「戦争反対」を叫んだ。

 これは日本では非常に新しい風景だった。3年前から日本に住んでおり、日本の市民運動を観察して、様々なテーマの集会にも参加したが、このような姿は見たことがなかった。以前は主に集会の発言者が男であり、2時間の集会のうち1時間30分は著名人の演説だった。しかし、(その風景が)変わった。具体的には下記のように、私の頭の中に記録されている。

 シーン1: 2015年8月30日午後

 総がかり行動実行委員会は8月30日、「10万人国会包囲行動と全国100万人大行動」という目標を掲げて、大規模な集会を開いた。午後2時から開始する集会にもかかわらず、午前11時から多くの人々が国会前に集まり始めた。

 ある子供が自分の体ほどの大きさのスケッチブックに「子供を守ろう」とクレヨンで書いたプラカードを首にかけていた。続いてデートの場所として集会場を選んだような男女のカップル、「憲法9条を守ろう」と書いたプラカードを持ってきた中年夫婦、透明のビニール傘の上に「安保法案反対」という文字を付けてきた高齢の男性、「戦争法案反対」旗を自転車につけて、国会周辺を回り続ける人々、雨の中でもベビーカーをおして子供と一緒に出てきた母親たちが国会前を埋め尽くした。

 以前は見られなかったデモ風景に、翌日、日本のマスコミは大騒ぎになった。ほとんど新聞社が朝刊の1面に、この日のデモの現場の記事を載せた。1960年安保闘争(1960年米国主導の冷戦に加担する日米相互防衛条約の改正に反対して起きた大規模な運動として、日本の民衆運動史の最盛期と評価される)のときの様子と2015年8月30日を比較した記事を載せた新聞も少なくなかった。参加者数は主催側の推算では12万人、警察の推算では3万3千人だった。東日本大震災後に行われた2012年9月23日の「さようなら原発1000万人アクション」で20万人が集まって以来、最大規模の集会が開かれたのである。

 興味深かったのは、日本の保守新聞も韓国のように集会の参加者数に疑問視する報道を行う姿だった。保守性向の産経新聞は8月30日付の記事で「安保法案反対デモ、本当の参加者数を本社が計算」というタイトルで「正門前で警備に当たっていた警察車両の前に機動隊員が15人立っていた航空撮影写真を基準にして3万2400人になる」という内容を報じた。

 8月30日に国会前の10万人のデモ隊が集まったことで、これまでなかった車両の壁が国会前に登場した。参議院の審議を中継しなかったNHK放送局には抗議が殺到した。結局NHKは9月、正規放送を中断して、参議院特別委員会審議会の中継放送を行わざるを得なかった。

 1960年以後、静かだった日本の街
 安倍首相の「安保法案」の通過に対抗
 市民たち、国会前で長期間の戦い
 「全共闘世代」だらけだった集会が
 若者のヒップホップ風のスローガンに覆われた

 連休には鎮静化するとの予想を
 23日、2万5千人が出て覆した
 40〜50代、学生団体のSEALDSにちなんで
 「ミドルス」を作り抵抗を続ける
 変わった社会の雰囲気、今後も続くか

■人気のない野党に向かって「頑張れ」

 シーン2:2015年9月17日の夕方

 「皆さん、用意はいいですか?」。ヒップホップのリズムに合わせて人々がそれぞれ両手にプラカードとサイリウムを持って振り始めた。愛らしいデート服に身を包んだ女子学生と野球帽をかぶって髭をはやした男子学生2人が舞台の上に上がってきた。安保法案デモで最も注目されたSEALDSの登場だった。人々は国会議事堂を見つめながら叫び始めた。

 「民主主義って何だ?」

 「これだ。ここに私たちが集まったこと。民主主義って、私たちが戦って勝ち取るもの」

 「民主主義がどうやって生まれた?」

 「民主主義はこうやって生まれる」

 「野党頑張れ!」

 「安倍辞めろ!」

 最も印象深かったスローガンは「野党頑張れ」というコールだった。韓国で第1野党がその影響力に比べて市民社会であまり人気がないように、日本の民主党と共産党も、ここではあまり人気がない。しかし、今、市民たちは自発的に野党を応援していた。その時刻、国会では野党議員たちが法案阻止のために首相をはじめ、防衛成長、参議院議長などに対する問責決議案を提出し、その理由を説明しながら、可能な限り時間を稼いでいたからだ。

 集会の途中、参議院や衆議院の野党議員たちがデモ隊を訪ねて国会内の状況を伝えた。「皆さんの声が国会議事堂でも聞こえる」と言われたデモ隊の声はさらに大きくなった。デモ隊の周辺で“カフェ”を開いて無料ドリンクを配ってくれた人たち、小型の移動式発電機を持ってきて、スマートフォンやタブレットPCを充電できるようにした“発電所の人々”の声もより一層大きくなった。

 シーン3:2015年9月19日午前2時18分

 9月19日午前0時を過ぎて再開された審議会に耳目が注がれた。議員たちの投票が始まり、国会前の人々は結果を待っていた。中央ステージでタブレットPCを通じて刻々と伝わるニュースに耳を傾けていた。そしてしばらくして、「戦争反対、絶対反対」を叫んでいたスローガンが「採択撤回」に変わった。安保法案が参議院本会議を通過したのだ。続いて出てきたスローガンは「選挙に行こう」だった。日本の民衆が「政治は生活であり、継続が力となる」ことに気づかされた瞬間だった。

 「強調しておきたいことがあります。それは私たちを含め、これまで政治的無関心といわれてきた若い世代が動き始めているということです。これは誰かに言われたからとか、どこかの政治団体に所属しているからとか、いわゆる動員的な発想ではありません。私たちはこの国の民主主義のあり方について、この国の未来について、主体的に一人ひとり個人として考え、立ち上がっていったものです」。15日に開かれた参議院特別委員会中央公聴会に出席したSEALDsの奥田愛基氏(23、明治学院大学4年生)の発言の一部だ。

 SEALDsが社会的に注目されたことで、日本の地上波放送であるテレビ朝日のバラエティ番組が「シールズを解剖する」というテーマで番組(『ビートたけしのTVタックル』)を放送した。その番組は大きく分けて3つのテーマで構成された。(1)出会い目的で集会に参加するのでは?(2)裏で財政支援する特定の政党や団体があるのでは?(3)今後、自分の進路に有利だから参加するのでは(国会議員出馬など)?同番組はSEALDsに参加した大学生たちをインタビューして、彼らの正体を把握しようとするものだった。

 SEALDsのメンバーが最も不快感を隠さなかったのは、1番目の質問だった。一言で言えばそのような目的なら、クラブや他の所に行けばいいため、あえてデモしには来ないということだった。もちろん、2番目と3番目の質問についても、上記した奥田愛基氏の発言に既に答えがある。このような荒唐無稽な番組が作られたことは、若者の政治的な発言や行動に日本社会がいかに驚いたのかを裏付けているかも知れない。実際、集会に出た私の周りの20代の若い友人たちは、「原宿や渋谷にいるような同年代の友人が今スローガンを叫んだりするのはもう珍しくない」と言ったり、「思ったより面白い」、「新鮮だ」などの意見を示した。

今月19日未明、東京の国会議事堂前のデモ隊が持って出てきたハート形の日の丸=東京/ホ・ジェヒョン記者//ハンギョレ新聞社
■「デモは怖いもの?もはや日常」

 1960年安保闘争以降、日本社会で“デモ”は怖いものであり、特定の人たちが行うものだった。もはやそうではない。もうデモは日本社会で珍しいものではなく、日常となっている。政治が自分の生活といかに密接な関係があるのか気づく契機になったと発言する20代の若者たちも少なくない。

 SEALDsは19日未明、安保法案が通過した直後、(法案に賛成した議員たちに対する)「落選運動を行う」と発表した。同日、憲法学者など約100人で原告団が構成され、「憲法9条に違反した」として、今後国を相手に集団訴訟を提起することを明らかにした。そして170人の様々な分野の研究者と学者が「憲法9条の下で持続してきた平和主義を捨て去る暴挙」だとする声明を発表した。

 9月19日から23日まで、日本ではいわゆる「シルバーウィーク」と呼ばれる大型連休があった。政府関係者と与党は、公の場で連休が始まったら、人々が安全保障法案を忘れてしまうと発言した。与党が未明に法案通過を強行した背景には、そのような認識も少なくなかったというのが大方の意見だった。

 連休の最終日の23日、2万5千人の市民が再び安全保障法の撤回を求めて、東京代々木公園に集まった。同日、マスコミが発表した世論調査では、第2次安倍内閣が任期中で最も低い支持率を記録したことが明らかになった。そしてまだ80%以上の国民は、「安全保障法に対する説明が尽くされていない」と答えた。

 もちろん、今の抵抗の雰囲気が来年7月の参議院選挙まで続くかどうかについては、疑問視する声も少なくない。しかし、SEALDsの活動に刺激を受け、40〜50代がミドルス(MIDDLEs)というネットワークを作り、安全保障法案に反対した研究者や憲法学者、母親たちは今「法案」ではなく「法」となった安全保障法制に引き続き反対するという意志を表明して、団体名から「案」を抜いてそのまま活動を維持する方針を示した。

 近い将来に10万人が集まるデモを再び目の当たりにするのは難しいかもしれないが、少なくとも「デモがもはや珍しいものはなく、日常生活」という社会の雰囲気が作られた今、日本社会が新しい時代を開いていることだけは間違いないようだ。

東京/ホ・ミソン・ピースボート活動家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-09-25 19:49

http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/710548.html 訳H.J

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