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米陸・海軍参謀総長「現在の財政ではMD持続不可能」

登録:2015-07-06 00:23 修正:2015-07-06 14:56
 米首脳部「MD戦略」の修正を示唆
米陸海軍参謀総長が国防長官に送ったメモ  //ハンギョレ新聞社

 米国の陸・海軍首脳部はもちろん、ミサイル防衛局(MDA)内でも、米国の現在のミサイル防衛(MD)戦略が限界を迎えたという認識が広がっていることが確認された。国防費削減の圧力の中で、開発と購買にかかる莫大な費用を捻出するのも困難なうえに、兵器システムに対する信頼性への疑問も消えていないからだ。

 米国防総省でこの問題を本格的に提起したのは、レイモンド・オーディエルノ陸軍参謀総長とジョナサン・グリナート海軍参謀総長だ。2人の参謀総長は、昨年11月に当時のチャック・ヘーゲル当時国防長官に「弾道ミサイル防衛戦略の調整」という題名の1枚のメモを送った。四つ星の大将2人が書いたとして「8スター(八つ星大将)メモ」と呼ばれるこの文書は、今年3月、外部に漏洩された。

 ハンギョレが5日確保したメモによると、2人の大将は、潜在的な敵国の弾道ミサイルの脅威が日増しに強くなっており、米国の現在の防御システムを上回っていると診断した。彼らは「私たちの購入を基盤とした戦略は、現在の財政環境では持続不可能だ」と明らかにした。彼らは「今は米国本土ミサイル防衛と地域ミサイル防衛における優先事項に取り組む長期的なアプローチを開発する機会」だとしてから、このアプローチを「敵がミサイルを発射する前に打撃(left-of-launch)するための戦略と、他の非活動的な( Non-kinetic)防御手段を含め、より持続可能で費用効率の高い全体的なアプローチ」だと規定した。非活動的な防御手段とは、レーザー・妨害電波の発射などの電子戦やサイバー戦で、敵のミサイル制御を無力化することをいう。つまり、2人の参謀総長は、飛んでくる敵のミサイルを打撃する現在のミサイル防衛戦略には限界があるため、ミサイルを発射する前の段階で敵の制御司令部を無力化したり、ミサイルを打撃する戦略に転換することを求めたのだ。

 このメモに空軍参謀総長は署名していない。これは、空軍はミサイル防衛戦略に深く介入していないためと思われる。

米国のミサイル防衛(MD)システムの概念図

 国防長官にメモ送り
 発射前のミサイル直接打撃などへの転換を提示

 ミサイル防衛局トドロフ副局長
 「迎撃ミサイルの性能に疑問」示す

 THAAD、在韓米軍に配備後、韓国い販売する見込み
 「他国の購入で生産の維持を目指す」

 陸・海軍首脳部のこのような認識は、米国のミサイル防衛を主管するミサイル防衛局でも共有されていることが明らかになった。ケネス・トドロフ・ミサイル防衛局副局長(准将)は先月18日、ワシントンで開かれた行事で記者たちと会って、「現在のミサイル防衛戦略は、持続が可能ではない」と述べたと、軍事専門誌『ブレイキング・ディフェンス』が報じた。トドロフ副局長は、潜在的な敵が(米国に比べ)より多くのミサイルを保有している状況で、「すべてのミサイルを迎撃するのに必要な迎撃ミサイルを購入し続けることはできない」と打ち明けた。ミサイル防御用の迎撃ミサイルの購入が、潜在的な敵のミサイルよりもはるかに多くの費用がかかるが、米国の現在の財政環境ではこれを捻出するのは困難ということだ。

 彼はまた「戦闘員たちが頼れるとともに信頼できる能力を持つことが重要だ」とし「私たちは、購入を減らす代わりに、より多くの研究・開発・試験・評価を行わなければならない」と述べた。これは、現在のミサイル防御用の迎撃ミサイルの性能が疑問視されているだけに、購入の拡大に乗り出すよりは、まず、性能の改善に焦点を合わせるべきだという意味だ。 『ブレイキング・ディフェンス』は2人の参謀総長のメモの内容について、国防総省では相当の支持を集めているが、これを進めるためには、議会を説得必要があると伝えた。

 これとともに、米国当局が外国に米国のミサイル防衛のための兵器システムを販売することにより、国防予算の制約の突破口を見つけようという分析も出ている。これは、高高度防衛ミサイル(THAAD)の朝鮮半島配備問題とも関連している可能性がある。米国はTHAADを韓国に販売するのではなく、在韓米軍に配備すると主張するものと見られるが、これまでの経験からして、在韓米軍に配備してから、韓国に販売する手順を踏むと予想される。

 フィリップ・コイル元国防総長兵器運用・試験・評価局長はハンギョレに 「米国はミサイル防衛兵器を生産して購入する余力がない」とし「今、米国が期待しているのは、韓国やイスラエルなどの他の国々が代わりにこの兵器を購入することで、生産ラインを維持すること」だと述べた。

 マイケル・ギルモア現職の兵器運用・試験・評価局長は先月25日、ワシントンのシンクタンクの「アトランティック・カウンシル」主催のイベントでは、ハンギョレと会って2人の参謀総長のメモが、米国のTHAADの朝鮮半島配備にも影響を及ぼすだろうかいう質問に「2人の大将のメモは、米国本土防衛用のミサイル防衛を超え、ミサイル防衛政策全般を再検討しようということ」だと述べた。THAADの朝鮮半島配置にも影響を与える可能性があるという意味だが、自分は関連政策決定者ではないとし、それ以上の明言は避けた。

ワシントン/パク・ヒョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-07-05 20:05

https://www.hani.co.kr/arti/international/america/698941.html  訳H.J

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