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産経ソウル支局長告発で日本極右に完敗した韓国極右

登録:2014-08-26 18:42 修正:2014-08-27 11:22
[チョン・ムンテの第三の目 (29)]
朴槿恵大統領を愛するある市民団体による産経新聞の告発は、外信の嘲笑の種となっている。外信はこの問題を、大韓民国大統領の名誉の問題ではなく、言論の自由の問題と見ている。今年1月6日春秋館で開かれた朴大統領の新年内外信記者会見。青瓦台写真記者団

 大統領は市民だ。大統領個人は保護されるべきだ。大統領も友人に会い、酒を飲み、恋をして、旅行をして、セックスをして、他の人と同じように全てのことをすることができる。大統領が一かけらの胸を痛めるロマンスを落としたところで、後ろ指を指されることもない。聖者ではない大統領に、道徳的基準を別に設けて駆りたてることもない。大韓民国憲法は大統領個人の人生を拘束したことはない。大韓民国憲法は、全ての市民の人生を平等に保護せよと命じている。

 しかし、大統領という職業になれば話が変わる。市民が作った5年分の臨時職公務員である大統領は、大幅な法的保護に途方もない月給を受け取るだけに、あらゆる締め付けに対して機嫌を伺わなければならない役回りだ。韓国社会がよく手本として例に挙げるアメリカとその大統領も同じだ。2009年大統領選挙の当選者バラク・オバマは、ホワイトハウスに入ると国家安全保障局(NSA)に個人の電話と電子メールを奪われ、それまで好んで使ってきたブラックベリーは、特殊符号を植えつけられた後も私的通信を20人ほどに制限された。大統領を「檻の中の権力」と呼ぶのは冗談ではない。

 「一挙手一投足を監視され記録される座から降りれば、気分がせいせいする」インドネシア初の民選大統領だったアブドゥルラフマン・ワヒドが2001年に政敵に弾劾されてから6か月ほど後に私に言った言葉だ。タイ元首相のチュワン・リークパイも「警護と儀式のようなものが度を越す場合が多く、守らなければならないことがあまりにも多い」と仄めかした事がある。すべて、私的領域を制限されて大変に疲れることを打ち明けた言葉だ。

「産経」だけが反韓ではない
「毎日」と「朝日」も根本は
すべて保守・右翼・反韓であるだけだ
韓国の新聞も同じではないか
反日と言う点では皆まったく同じだ

大統領の消えた7時間を追跡して
責任があるのなら問うのが正常だ
朴槿恵が名誉を毀損されたとすれば
私たちは294人の命を失った
それがこの事件の本質だ

お互いに愛国を前面に掲げた泥沼のけんか

 これは大統領や首相とて、自分が全てを好き勝手にできるわけではないという意味だ。例えば、大統領にも出退勤時間があり、職場を守らなければならない義務がある。国に何か事件が起きたら、町役場の上層部が席を守らなければならないように、大統領も抜け出すことはできない。市民社会には、大統領が時間通りに出勤しているのか、また勤務時間に仕事をきちんとしているのかなどを当然に知る権利がある。市民が大統領に月給を払い、国をうまく運営してほしいというのが民主主義だ。同じく市民がお金を出して大統領がよく働いているかを調べて知らせてくれと言って任せたのがメディアだ。だから正常な社会なら、大統領とメディアは必然的に敵対関係にならざるを得ない。それが正常な社会だ。世界共通のこの基本的道理さえ理解できないのなら、大統領をしてはならない。今月8月初め、市民団体が大統領朴槿恵の消えた7時間を記事に扱った産経新聞を告発したというニュースを聞きながら思ったことだ。

 最近は、告発屋とか市民団体がマスコミを告発したとしても驚くには当たらない。もとより市民社会がメディアを見張るのは健全な社会だから、そんなこともあり得る。しかし告発というものが、理性的論理が通じず合意点を見出すことができない場合に使う最も質の低い問題解決方法だということは考えて見なければならない。今回の告発建議の性格でもある。告発者である自由守護青年連合、被告発者である産経新聞、その新聞が記事の材料に使った朝鮮日報、名誉を毀損されたとひどく腹を立てる青瓦台、そして表には現われなかったがその土台にある安倍総理、これらは全て韓国と日本を代表する極右だ。今回の告発建議の本質は、まさに極右同士の愛国を前面に出した泥沼のけんかだ。だから初めから理性や合理性を期待することはできなかった。

 告発者が問題視した産経新聞ソウル支局長の加藤達也記者が書いた8月3日付の記事「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」という記事は、朝鮮日報7月18日付のチェ・ボシク記者が書いた「大統領をめぐる風聞」をタイトルだけ変えてそっくりそのままつぎはぎしたレベルだ。産経新聞が「朝鮮日報を引用したのにどうして私たちだけ?」と食い下がることが恥を知らない所業だとすれば、いかなる返事もできない告発者と青瓦台も大差がない。

朝鮮日報も妥当とは言えない。朝鮮日報は8月9日付「日本産経の挑発…連日韓国・朴大統領を卑下」というタイトルの下、産経新聞が自分たちの記事を引用したという事実には触れず「証券街の噂を引用」と言って責め立てた。東亜日報のような韓国メディアもその尻馬に乗って産経新聞の反韓を集中的に叩いた。朝日新聞、読売新聞を含む日本のメディアは「非正常的な外信告発」「国際社会で韓国イメージ損傷」「朴槿恵政権の特性」などと吐き出して、産経新聞に肩入れした。両国のメディアの戦いが広まった格好だ。

反韓で悪名高い産経新聞インターネット版には「韓国人殺害は不法ではない」といった言葉が堂々と上ってきている。朝鮮日報インターネット版にあふれる低俗な反日文章とあまり違うところもないが、とにかく日本メディアを見てみよう。そこには親韓派はいない。産経新聞だけが反韓なのではない。毎日新聞や朝日新聞は別だと見る人もいるが、実際は事案に従う「表情進歩」であるだけで、根っこはすべて保守・右翼・反韓であるにすぎない。韓国の新聞も同じだ。政治指向は異なっても、反日という点ではみな全く同じだ。これが両国のメディアの現実だ。両国のすべての新聞が親日とか親韓では絶対に食べていけない社会の雰囲気のためだ。

ふとしたきっかけで親日や親韓と睨まれた日には、それで終わりになることをよく分かっているからだ。だから両国の新聞は死ねとばかりに相手を罵ってきたし、その材料には大統領とか首相ほど望ましいものはなかった。今までお互いにそうしていたのだが、安倍の登場後から二つの極右政権がぎくしゃくすると、今回の産経新聞告発の件で爆発したわけだ。青瓦台は告発のニュースが流れるや否や、スポークスマンまで出て来て「民事・刑事上の責任を問う」と戦意を燃やし、日本政府はなりふり構わず新聞一つに関して外相まで出て来て「日韓関係に影響を及ぼしかねない」と外交まで揺さぶり問い詰めた。これが産経新聞の告発で現われた両国の極右乱闘劇の実際だ。

「国の品格」の座標は言論の自由

 国を愛して朴槿恵を愛する極右がそれで得たものは何か? 一国の大統領がその程度の極右新聞一つといざこざを起こして、何を得るというのだろうか? 見よ、むしろその告発で朴槿恵は消えかけていた件がぶり返したのみならず、大韓民国という国まで笑いものにさせてしまった。その告発には、すでに日本は言うまでもなく、アメリカと中国メディアまで飛びついた。外信版の常識から見れば、韓国大統領が関わったこの件を記事にしないソウル特派員はいない。ソウル外信版の動きが尋常ではないという声が、すでにバンコク外信版にまで広がっている。

今後、国内外のメディアが蜂の群れのように押しかける法廷でも大騒動だ。外信版ではこの件を朴槿恵の名誉よりは言論の自由の問題として扱っている。国際メディアというのは、お互いに政治的指向が異なり事業面では熾烈な競争を行うが、言論の自由の前では戦闘的な仲間意識を見せる習性をもつ。一国の大統領の名誉程度を言論の自由と交換する国際メディアはない。同じく産経新聞が告発されたといって、親朴や親韓に変わらないのは明らかで、日本のメディアが怖気づいて保身を図ることもない。私の経験だが、ミャンマー軍事政権のブラックリストに載せられて16年間入国を禁止され、また記事のためにアメリカ、イスラエル、タイ、インドネシア、 スリランカを含むあらゆる政府から抗議と脅迫を受けたりしたが、それでも変わったことは何もない。

 タイ政府がよい例だ。タイ政府はこれまでハンギョレとBBCを含む数多くの外信を押さえつけ追い出し悪名を馳せたが、結局、何も得たものはない。かえって批判の強度をより高めさせただけだ。「国境なき記者団」(RSF)が2014年の報道の自由度ランキングで、タイが戦争中のアフガニスタンより2ランク低い130位になったことは、決して偶然ではない。韓国も深刻な状況にまで来た。57位だ。報道の自由度ランキングが飯を食わせてくれるものではないが、国際社会が一国を見る最も重要な定規と感じているという事実を、告発者や青瓦台が考えてみたのかは分からない。いつからか国の品格という言葉がしばしば口に出るようになったが、まさにその国の品格の座標が言論の自由だ。それで今この状況を楽しんでいるのは安倍政権であり日本の極右だ。韓国極右が日本極右に負けたという意味だ。極右たちの大統領と国を愛する方法がいかに変かという話だ。

 話題に上ったついでに、大統領の名誉と衝突した言論の自由を確認してみよう。これはセウォル号という船が転覆して子供たちが死んでいくなかで、大統領が7時間も所在を隠して騙したことから始まった。原因も過程も結果も、大統領が提供したという意味だ。大統領が誰かと密かに会っていたなどは、朝鮮日報や産経のように本来そういうことを楽しむ極右新聞が持ち出した枝葉末節に過ぎない。健全な市民はそのようなことには関心もない。そんなことより、国中が沈むというのに、警護や機密を盾にして大統領の動向を明らかにできないという権力濫用が問題だ。大韓民国憲法と警護法のどこにも、そのような状況で動向を隠しなさいという項目はなく、市民がそんな権力を大統領に握らせたこともない。大統領近辺の動向だけでなく、遠くでの動向のなかにも、警護に必要な部分があることなどは、あえて言わなくとも市民が分からないことではない。だから国会も市民社会も大統領の行動をすべて話せと言っているのではなく、その7時間のみを取り出して問うている。誰が見ても、大統領にその日だけは、その子供たちの生命を救い出す仕事よりさらに重要な仕事などあり得ず、よってその7時間、大統領が出て来られない、警護上重要な事を想像できないからだ。市民は適切に大統領の消えた7時間を知らされなければならないし、責任があれば問うのが正常だ。産経新聞の報道で朴槿恵は名誉を失ったと思うかも知れないが、私たちは300人ほどの命を失った。これが本質だ。

時には「朝鮮日報」を支持できる理由

  したがって、大統領の名誉より市民を守らねばならない言論の自由が、より一層重要にならざるをえない。名前を聞いただけでもじんま疹が出る極右産経新聞だが、そんな部類の存在でさえ否定することはできないという意味だ。それがたとえ反韓でも極右でも、それは日本側の事情にすぎないからだ。反日と極右のチャンピオンである朝鮮日報が韓国で一番多く売れる新聞であるように、産経新聞も100万人以上の日本人が読んでいる。市民には新聞選択の自由があり、市民社会に必要なのは言論の自由だ。この世に言論の自由よりさらに優れた大統領監視の道具がないからだ。だから朝鮮日報が日本の首相を咎めて告発されれば、私は自分の政治指向とは関係なく、言論の自由という大義の下に朝鮮日報救援運動に乗り出す用意がある。原則的に国内のメディアであれ外信であれ、区別なく言論の自由を言えるからだ。それが国際社会で韓国の言論の自由の指標を高めて韓国のメディアが保護を受ける道だ。それが国と大統領を愛する私たちの方法でもある。極右の国を愛する方法と大統領を愛する方法を受け入れることができない理由も、そこにある。

チョン・ムンテ国際紛争専門記者

▲チョン・ムンテ:1990年からタイを拠点に仕事をしてきた国際紛争専門記者。23年間アフガニスタン、イラク、コソボを始めとする40か国ほどの紛争の前線を走り、アブドゥルラフマン・ワヒド インドネシア大統領、フンセン カンボジア首相など最高位クラスの政治家約50人にインタビューをした。著書に「前線記者チョン・ムンテ 戦争取材16年の記録」(2004年)、「現場は歴史だ」(2010年)などがある。一週間おきに国際ニュースの裏面をハンギョレ読者に語る。

http://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/652356.html 韓国語原文入力:2014/08/23 10:56
訳 M.S(5388字)

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