本文に移動

[週刊ハンギョレ21] セウォル号出動ヘリ511号機の初報告が削除されていた

登録:2015-04-14 20:36 修正:2015-04-15 07:03
 セウォル号参事1周年・ハンギョレ21通巻号

 海洋警察の調査・捜査資料を入手し分析
 初動対応の失敗を隠すため
 録音収録捏造の可能性
 海洋警察首脳部“世論操作”も企図
2014年4月16日午前10時頃、全羅南道珍島郡の屏風島付近でセウォル号が沈没すると、近隣の島の漁船が出動し救助活動を行っている。当時、海洋警察の救助勢力は100トン級警備艇1艘とヘリコプター3機のみだった 西海地方海洋警察庁提供//ハンギョレ新聞社

 1年間、セウォル号遺族と共に歩き記録してきたハンギョレ21は、4月16日のその日の真実を暴くことにした。 先ずセウォル号に関連した資料を収集した。 立法府、行政府、司法府が生産した各種のセウォル号記録を丹念に集めた。 その量は3テラバイト(TB)に達する。その記録を分析し、隠されたパズルを一つずつ合わせて真実を突き止める。

 その最初の記事として「消えた最初の現場報告」を掲載する。 セウォル号沈没事故の救助過程に関して監査院と検察で調査された海洋警察が、事故現場に最初に到着したヘリコプター511号機の最初の事故現場報告を捏造していたことが確認された。監査院と検察に海洋警察がそれぞれ提出した周波数共用無線通信(TRS)録音収録をハンギョレ21が比較分析した結果、海洋警察は「(乗客が)船内にいる」という最初の現場報告を削除したり、交信者を変えたり、これを土台に調査過程で偽りの陳述を日常的に行ったことがわかった。

 海洋警察が歪曲した記録であるTRSは、警察、消防、応急医療機関などが使う多重無線通信だ。 海洋警察首脳部(本庁、西海地方海洋警察庁、木浦海洋警察署)は、沈没事故の連絡を受け付けた直後の午前9時2分からTRSで現場救助勢力(警備艇123艇、ヘリコプター511・512・513号機)を指揮した。 TRSの交信内容は海洋警察首脳部の救助指揮が適切だったかを判断する主要な資料だ。

 ハンギョレ21が入手し分析したTRS交信録音収録は全部で4件ある。このうちの2件は録音収録原本の形態で、残りの2件は要約形態だ。 ところが、海洋警察が原本だとして提出した2件の録音収録は互いに内容が異なり、2件の要約もやはり別の内容が含まれている。 原本も要約も何れか一方が操作されているわけだ。

 海洋警察首脳部は“世論操作”も企図していたことが明らかになった。 ハンギョレ21が入手した123警備艇艇長、および乗務補助員13人に対する検察の捜査記録によれば、海洋警察首脳部は救助作業の真っ最中でなければならない4月16日以後、少なくとも3回にわたり“局面転換用”インタビューを指示した。 海洋警察広報官室は4月23日、海洋警察123艇乗務補助員イ警士にマスコミのインタビューを要求した。 イ警士が4月16日の事故当日、セウォル号に進入し救命ボートを展開するよう試みたことを知らせるためだった。 当時は123艇が船の上に上がらず船の周辺を巡り消極的な救助活動を行ったことに対する批判世論が強い時だった。 イ警士は検察の調査で該当インタビュー指示の目的について、「本庁広報官室が救命ボートを展開させたことを知らせ海洋警察に対する非難ムードを転換するために指示した」と述べた。

 海洋警察はまた、検察・警察合同捜査本部の木浦状況室に対する押収捜索が行われた4月28日には“局面転換用”として、急遽123艇長と乗務補助員に対して記者会見をするよう指示した。 キム・ギョンイル艇長はこの記者会見で、実際には退船放送をしなかったのに退船放送をしたと嘘をついた。 記者会見が開かれる2時間前からキム・ギョンイル艇長はキム・ムノン木浦海洋警察署長と6回にわたり22分間の通話をしていたことが確認された。

 キム艇長はこの日のインタビューで「セウォル号の海域に到着し、現場到着と同時に短艇を海面に下し、艦内放送装備を利用して『乗客総員退船せよ』、『海に飛び込め』という放送を数回実施した。 30分から35分まで数回放送したと思う」と話した。 これに伴い、7月の国政調査で海洋警察庁長は123艇がなぜ退船命令放送をしなかったのかという責任追及を避けられた。 キム艇長の嘘は検察の捜査過程で後になって明らかになった。

 海洋警察首脳部が最初の現場報告を脱落させて世論操作を企図した理由は、初動対応の失敗を隠すためと考えられる。 救助活動を指揮した海洋警察首脳部も、業務上過失を犯したと見る余地があるためだ。 それでも検察は、123艇だけを起訴し、残りには免罪符を与えた。 例えばキム・ギョンイル艇長を指揮しなければならないキム・ムノン木浦海洋警察署長の救助業務怠慢と関連した端緒は、ハンギョレ21が入手した検察捜査記録に見ることができる。 キム署長は非常体制が稼動した後の40分間いかなる指示も出さなかった。 9時47分に123艇が「(セウォル号)の傾斜が激しく、人が下降出来ずにいる。沈没すると見られる」と報告すると、「頑張ってみろ」と初めて指示を与えた。 「状況室が存在する理由は何か。 現場の状況をよく分析し、現場で見逃している状況について指示し、効率的な救助活動をしようということだ。(そのために)状況指揮は合理的でなければならない。 『がんばれ』と指示することが合理的なのか」。 監査院の指摘だ。(5月27日監査院問答から)

 西海海洋警察庁の状況室も安易な対応でセウォル号の非常脱出をきちんと誘導しなかったことが確認された。セウォル号が9時24分に珍島海上交通管制センター(VTS)に尋ねる。「本船が乗客を脱出させれば、そこで救助できるのか?」。 珍島VTSは「そちら側の状況が分からないので、セウォル号船長が最終的に判断し、乗客を脱出させるかを早く決めなさい」と答えた。 世論の批判があふれた珍島VTSの返答は、西海海洋警察庁状況室の指示に従ったものであったことが明らかになった。

 しかし、セウォル号事故に対して責任があると監査院が名指しした海洋水産部、海洋警察庁、仁川地方海洋港湾庁、韓国船級に所属する公職者34人のうち、29%だけが重懲戒を受けたことが初めて確認された。 ハンギョレ21が4月10日、チョン・ヘチョル新政治民主連合議員室を通じて入手したセウォル号事故関連公職者懲戒現況によれば、監査院が懲戒を要求した公職者34人のうち10人だけが重懲戒(罷免1、解任2、降格3、停職4)を受けた。 警告懲戒は15人(減給13、けん責2)、残り(警告3、異動1、未決定3、退職2)は9人だ。 特に監査院が要求した懲戒に比べて軽い懲戒を受けた公職者は14人もいた。 キム・ムノン署長が代表的だ。 監査院はキム署長の解任を要求したが、懲戒権者である国民安全処長は4月1日、彼を降格処分するにとどまった。 彼は現在、海洋警備安全教育院に所属している。

 詳しい内容はセウォル号惨事1周年通巻1号「ハンギョレ21」1057号「真実はこのように隠された」で確認できる。

チョン・ウンジュ、パク・スジン、キム・ソンシク ハンギョレ21記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/686788.html 韓国語原文入力:2015-04-14 16:29
訳J.S(3106字)

関連記事