日本の高市早苗内閣の景気浮揚策が発表された。コロナ禍後では最大規模となる財政支出21兆3000億円を含め、総額で42兆8000億円に達する。政府債務比率が高いにもかかわらず、成長に集中することになったため、追加の国債発行は不可避となった。
今回の経済対策は、生活安全保障および物価高対応▽リスク管理投資および成長投資による「強い経済」の実現▽安全保障および外交強化の3つの目的を掲げて実施される。6四半期ぶりにマイナス成長を記録した日本経済の回復に、少なからぬ貢献をすることになるだろう。
今回の経済対策を主導した高市首相は、「女性版安倍」と呼ばれるほど、安倍元首相の政治・経済的方針を継承する人物だ。しかし、高市首相が推進している拡張財政を大枠とした対策が、安倍晋三元首相の在任時と同じ方向に進むのかどうかは、簡単には断言できない。安倍元首相在任時とは明らかに異なるインフレ環境にあるためだ。
物価環境の変化は、日本銀行の通貨政策やタームプレミアムの変化などを通じて、金融市場に影響を与える。そして何より市場金利に影響を及ぼすが、安倍元首相時代に比べると、日本の市場金利の水準は大きく変わった。
アベノミクス時代の2020年、日本の国債市場のベンチマークである10年物国債の利回りは、おおむね0%を少し上回る程度で、ときには小幅のマイナスにまで落ちたが、0%を軸に大きく外れることはなかった。しかし、現在の10年物国債の利回りは1.9%台まで上昇しており、超長期国債である30年物の利回りは3.5%に迫り、当時と比較すると300bp(3ポイント)近く上昇した。
金利上昇は、国債発行を通じて資金を調達しなければならない政府の立場としては、コスト上昇を意味する。全世界の国のなかで最も高い政府債務比率を記録している日本は、高水準の元金だけでなく、いまや利払いにも配慮しなければならない状況に追い込まれている。
コスト上昇以外にも、別の懸念材料がある。日本は他の中央銀行に比べ、市場金利の統制能力が優れているという評価を得てきた。量的緩和やイールドカーブ・コントロールなどのような非伝統的な通貨政策の手段の総合版を自任したのが日本銀行だった。
このような優れた市場金利統制力は、これまで日本がインフレではなくデフレ環境にあったために可能だった。現在の日本はインフレによって基準金利の引き上げを準備している段階にあり、急上昇する金利に対応するため、再び国債を購入するという矛盾を繰り返している。
最後に、財政投入はそれ自体がすでに強力なインフレを招く要因だ。政府が成長をけん引するために資金を直接投入するというのが財政政策だが、このように供給された資金がインフレの原因になることは、極めて当然の帰結だ。