韓国政府が「規模」を強調して打ち出した17兆ウォン(約1兆9500億円)の半導体融資プログラムが、実際には韓国国内で需要先を探すのは難しいだろうという展望が出ている。韓国の半導体産業の融資需要に比べ、供給目標額が大きすぎるという評価だ。特に、政府が今回狙った中堅・中小企業の資産を全て集めても規模は数十兆ウォンにとどまり、融資需要が大きくないという分析が支配的だ。
金融監督院が29日に発表した電子公示によると、韓国取引所(KRX)の半導体指数を構成する48社の連結基準資産総額は3月末基準で29兆1218億ウォン(約3兆3500億円)だった。これは半導体指数の構成銘柄計50銘柄のうち、サムスン電子とSKハイニックスを除いて集計した数字だ。これらの企業が資産の50%ずつ融資を受けても15兆ウォンに過ぎないということだ。半導体指数の構成銘柄は流動性などを基準に選定される。
半導体企業の範囲をさらに広げても事情は大きく変わらない。韓国半導体産業協会の加盟企業のうち最も数が多い装備業者の資産総計は、各社の最近の公示基準で26兆5855億ウォンだった。素子・ファウンドリの加盟企業はサムスン・SKを除いて5兆934億ウォン、テスト・パッケージングは2兆7933億ウォンだ。個別企業の事業領域が半導体に限定されない場合が多い点を考慮すれば、実質的な半導体産業の規模はこれより小さいと推定される。
韓国政府が発表した17兆ウォンの大規模な支援策が、政府の意志を広報するだけの「数字」にとどまる可能性が高い。政府は産業銀行を通じて17兆ウォンの融資プログラムを新設し、半導体への投資資金を優待金利で支援すると明らかにしている。支援規模の70%以上を中小・中堅企業に割り当てるとも述べた。これは、半導体指数に含まれた中小・中堅企業が産業銀行から新たに資産の50%に達する規模の融資を受けてこそ達成しうる目標だ。
サムスンとSKを含めても融資需要が十分にあるとはみなしがたい。サムスン電子は外部から事実上資金を借りない、いわゆる「無借金経営」を固守している。昨年も銀行の代わりに子会社のサムスンディスプレイから20兆ウォンを借りる方策を取っている。すでにグループ次元の債務負担が大きいSKグループは、資金調達の多角化を図っているだけに、今回の融資に目を向けないであろう見込みが高い。産業銀行の融資金利がSKグループの他の資金調達ルートに比べて低い場合、低金利に乗り換えようとする貸還貸出(借り換え)需要があると予想される程度だ。
産業銀行の関係者は「まだ融資プログラムの資格要件や金利条件などが全く決まっていない状況なので、需要も予測しにくい」として「1~2年以内に17兆ウォンを全て供給しろということではないとみている」と話した。
産業銀行の内外では、融資の供給余力がどれくらいになるかもまだ不確実だという見方が多い。韓国政府は融資プログラムの新設のため、産業銀行に1兆7千億ウォンを出資する計画だとしながらも、出資形態は明らかにしなかった。現金ではなく株式など現物出資の形で進めば、資本比率の改善効果が落ちるだけに、融資余力も制限される。産業銀行はこの場合、融資余力が1兆7千億ウォンの7倍である12兆ウォンほど増えるとみている。