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韓国政府、空売り封鎖で「個人投資家の支持狙う」…外国人投資家の離脱などの影響は

登録:2023-11-06 08:07 修正:2023-11-06 08:45
来年6月まで「空売り全面禁止」、影響は 
与党の総選挙用の注文に金融当局が「呼応」 
客観的データや根拠の提示なく 
「証券市場の不安を助長、ポピュリズム」との批判の声も
2021年5月、ソウル汝矣島の韓国取引所空売りモニタリングセンターで、職員たちが空売り状況を点検している/聯合ニュース

 韓国政府がついに空売り全面禁止を断行すると決めたことで、その影響が懸念されている。国内の証券市場の規制が国際的な流れとかけ離れた方向に進むことで、外国人投資家が離脱し、株価がむしろ下落しかねないという声もあがっている。実際の効果は「株価指数の持ち直し」という政策意図と正反対となる可能性があるという話だ。金融当局も空売り禁止の合理的な根拠を提示できなかったため、政策の信頼度が落ちたという批判も高まっている。

 金融委員会は5日、臨時会議を開き、来年6月末まで国内の全銘柄の空売りを全面禁止することを議決したと発表した。これに伴い、今まで可能だったKOSPI(韓国総合株価指数)200とコスダック(新興企業向け株式市場、KOSDAQ)150指数を構成する銘柄の空売りが6日から中止される。これに先立ち、金融委員会はコロナ禍の初期1年余り、空売りを全面禁止したが、2021年5月からKOSPI200とコスダック150銘柄に限り再開した。

 政府は空売り全面禁止の根拠として、最近株価が大きく乱高下しているという点を挙げた。高金利と経済成長の鈍化に加え、イスラエルとハマスの武力紛争まで浮上し、国内証券市場の変動性が高まったため、空売りを中断して変動性を抑えなければならないという論理だ。国内で違法(無借入)の空売りが繰り返し摘発されたことも、空売り禁止の原因として挙げた。

キム・ジュヒョン金融委員長(右)とイ・ボクヒョン金融監督院長が5日午後、ソウル世宗路の政府ソウル庁舎で、2024年6月末まで、国内証券市場の全銘柄に対する空売り全面禁止という臨時金融委員会の議決内容を発表した後、記者団の質問に答えている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 問題は、このような論理を裏付ける実証分析を全く提示できなかった点だ。学界ではむしろ空売りを禁止すれば株価の変動性が拡大するとみている。資本市場研究院が8月に発表した報告書によると、空売り取引の比重が上位20%の銘柄の価格変動性は、2020年の空売り禁止以後増加したことが分かった。価格が適正水準にどれだけ近いかを示す価格効率性も悪化した。金融当局が掲げた論理とは正反対の研究結果だ。同日のブリーフィングに出席したキム・ジュヒョン金融委員長は、これについて「空売りのメリットとデメリットや変動性と関連し、さまざまな研究結果がある」とし、「そのため(取材陣が)指摘したポイントも理解している」とだけ述べた。

 これまで繰り返された無借入(株式の借り入れなし)の空売りも、空売り全面禁止の根拠にするのは難しいとの評価も出ている。金融当局は「(違法な空売りで)国内株式市場の公正な価格形成に対する懸念が非常に高まった」としながらも、違法な空売りが株価にどのような影響を及ぼしたのかに対する分析結果は示さなかった。キム委員長は「客観的にデータを分析したことはない」とし、「ただ常識的に考えれば、とにかく違法な空売りが多ければ、なかった時よりは価格変動があるだろう」と述べただけだ。今回の政策について「ポピュリズム」以外には考えられないという批判が高まっているのもそのためだ。

 結局、市場では空売り全面禁止が韓国証券市場に対する投資家の信頼低下のきっかけになるという懸念が広がっている。政府が合理的な根拠なしに空売りを長期間禁止し、政策の予測可能性を自ら落としたという批判だ。外国人投資家の離脱で株価がむしろ下がるのではないかという見通しが出てくるのもそのためだ。他の一部の国でも、空売りを禁止したコロナ禍初期とは異なり、今は類似した事例を探すのが難しいことについても懸念の声があがっている。キム委員長は「(海外で空売り禁止事例が多くないという点は)私たちも認める」としたうえで、「韓国は特殊な状況にあるため(空売り禁止が)起きたと理解してほしい」と述べた。

イ・ジェヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/1115017.html?_fr=mt1韓国語原文入力:2023-11-06 06:21
訳H.J

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