本文に移動
全体  > 経済

急激なウォン安ドル高、韓国産業界に悪材料…「ウォンだけ下落した以前とは違う」

登録:2022-08-24 06:35 修正:2022-08-24 07:21
ドル高のなか、元・円・ユーロすべて下落 
コストを高め、輸出増大効果は不透明 
業種別に明暗分かれる…航空業界、外貨建負債が負担 
ゲーム・ウェブコミック、為替差益を期待「笑顔」 
内需比重が高い中小企業「泣き顔」
22日、13年4カ月ぶりに1ドル1330ウォンを超えた。1ドル1330ウォン超えは2009年4月29日以来。写真はこの日午前のソウル中区明洞のハナ銀行本店のディーリングルームの電光掲示板=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 ウォン・ドル為替レートがウォン安ドル高に進み、韓国の産業界全般に悪材料として作用している。 企業側としては、重大な経営変数が急変動した格好で、リスク管理費を高めるだけでなく、すでに高値が続いている輸入原材料・副材料の価格を追加で押しあげる要因になっている。一般的に、ウォン・ドル為替レートがウォン安に進めば、韓国製品の輸出競争力につながり、輸出が増える効果を期待できるが、今回は中国元、日本円、ユーロすべてがドルに対して安くなっているため期待しにくい。

 産業研究院のホン・ソンウク動向分析室長は23日、本紙の電話インタビューで「今のウォン安は、米国金利の上昇にともなうドル高によるもので、元、円、ユーロもすべて同じ影響を受けている」とし、「韓国の経済だけが良くなくウォンの価値が落ちた過去のウォン安の時とは違うと考えなければならない」と述べた。ウォン安がただちに輸出好調につながる価格競争力の確保を意味しないという説明だ。

 業種別では、航空機のレンタル代金をドルで支払い、外貨建て負債を多くかかえている航空業界の緊張感が強いとみられる。大韓航空は、今年上半期の純外貨負債約35億ドルを基準に、為替レートが10ウォンのウォン安になるごとに約350億ウォン(約36億円)の外貨評価損を被る。ある格安航空会社の関係者は「飛行機のレンタルなど外貨決済が多く、負担になる。為替ヘッジ商品などによってこれを補おうとしているが、(為替レートがウォン安になる分)短期損失が生じるのはやむを得ない」と説明した。

 電子業界もウォン安を好材料とはみない雰囲気だ。サムスン電子の関係者は「主要製品である半導体はドルで取引されるため、実績には肯定的な効果があるが、為替レートの急変などによる消費者心理の萎縮が懸念される」と述べた。LG電子の関係者も「インフレの懸念により消費者の実質所得が減り、購買力も落ちる状況が、より強い懸念をもたらしている」と述べた。ディスプレイ業界も似たような反応だ。LGディスプレイの関係者は「伝統的にドル高の時期は輸出増加効果を得られたが、最近は原材料費も同時に上昇し、以前とは違う」と明らかにした。

 自動車業界は、完成車メーカーか部品メーカーかによって、ウォン安ドル高による利害が異なる。輸出割合が高い完成車メーカーは、価格競争力の上昇を受け収益が増えている。為替レート効果のおかげで、7月の自動車輸出額は昨年同期比で23%増えた。一方、原材料を輸入しなければならない部品メーカーは、ウォン安ドル高になるほど損害が大きくなる。自動車産業協会のチョン・マンギ会長は「ウォン安になり完成車メーカーは大きな収益を得ているが、原材料や部品などを輸入する部品メーカーは大変厳しくなる可能性が高い」と述べた。

 鉄鋼業界は、ウォン安ドル高の影響は大きくないと説明する。ポスコなどの鉄鋼企業は、直接海外から原料を輸入し製品を輸出する。為替レートの変動による輸入費用の増加分と輸出による収益の増加分は近くなる。鉄鋼協会の関係者は「韓国の鉄鋼業界は1億トン以上の鉄鉱石原料を輸入しながらも、輸出量は昨年基準で世界4位だ。原材料の負担が高くなる分、輸出で利益を得るため、為替レートによる大きな影響はない側」だと述べた。

 海外での売上割合が高いゲームやウェブコミックなどのコンテンツ企業は、ウォン安ドル高傾向を歓迎する雰囲気だ。海外売上割合が80%を超えるゲーム企業のクラフトンやパールアビスなどは、売上をウォンに換算する過程で為替差益を得る可能性が高い。北米や欧州、日本市場などでウェブコミックのプラットホームなどを運営中のネイバーやカカオなども、コンテンツ事業での反射的利益を期待できる。カカオの関係者は「ゲームやウェブコミックなどの海外売上が成長する状況に加え、ドル高の恩恵まであれば、下半期はさらに好調な実績を期待できる」と述べた。

 旅行業界は、為替動向よりも新型コロナウイルス感染症の流行と規制による影響をより強く受けると説明する。新型コロナの流行拡大の傾向が小さくなった現時点での秋と冬の予約率が一段と上昇しているという点を根拠にしている。業界関係者は「ハネムーンやパッケージ旅行などは固定レート制で契約するため、為替レートの影響はあまり受けない。ただし、個人旅行客にとっては負担になるかもしれないが、数百万ウォンを払って海外旅行に行く場合、両替の際に5万ウォン程度の差が生じることは、大した負担にはならないだろう」と述べた。

 中小企業は、急激なウォン安ドル高によって打撃を受ける可能性が高い。内需企業の割合が高く、ウォン安ドル高はコスト上昇要因になる。中小企業中央会のキム・テファン国際通商部長は、「輸出の割合が高い中小企業にとっては好材料かもしれないが、原材料や副材料を購入し大企業に納品する場合、費用増加分を丸ごと負担し抱え込まなければならない状況」だと述べた。原材料と副材料の費用を納品代金に十分には反映しにくい韓国の元請・下請の関係とからみ、下請の中小企業の経営に負担を負わせることになるという説明だ。中小企業中央会によると、韓国の製造業分野の中小企業は約60万社あり、そのうち、売上の一部でも輸出で得る企業は10万社未満だ。

キム・ヨンベ先任記者、産業チーム総合 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1055906.html韓国語原文入力:2022-08-24 02:42
訳M.S

関連記事