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韓国の半導体は好調?相次ぐ危機論…設計人材や材料・部品・装備に弱点

登録:2022-07-22 07:06 修正:2022-07-22 09:05
韓国政府、半導体産業育成対策を発表 
設計人材、クアルコム1社に2万人、韓国は200社合わせて1万人だけ 
基盤となる材料や部品、装備産業が脆弱で海外依存度も高い 
税額控除拡大、材料・部品・装備除き大企業だけに恩恵集中
サムスン電子平沢事業場の様子=サムスン電子提供//ハンギョレ新聞社

 韓国経済の中核とされる半導体市場は、著しい外形的成果を上げているにもかかわらず、危機論が絶えない。人材や技術、材料・部品・装備など産業の基盤を成す環境全般が脆弱であるとみられているからだ。韓国政府が21日、税制支援の強化や工場容積率の緩和、人材育成案をはじめ、多様な半導体産業育成対策を打ち出したのも、そのためだ。

 人材は量と質ともに業界の需要に及ばないというのが産業通商資源部(産業部)の分析だ。産業部は2031年までの10年間で15万人以上の追加人材が必要だと推算する。政府が同日の対策で目標に掲げた人材育成規模は、この推算も基づく。設計専門の人材が足りないという慢性的な問題もある。産業部は「(米国の)クアルコム1社の設計人材が2万人以上だが、韓国内ではファブレス(設計専門会社)200社以上が設計人材1万人をめぐって競争している状況」だと明らかにした。

 技術格差の面でも危機感が広がっている。メモリー市場では激しい競争のため地位が弱くなり、非メモリー分野で先導国に遅れを取った状態がそのまま続いている。非メモリー半導体(ファブレス、ファウンドリー、後工程)市場での韓国のシェアは、2021年基準で3.0%水準だ。設計専門ファブレス分野が特に弱いとされる。世界50大ファブレスの中で韓国企業はLXセミコンが唯一だという事実が端的な例だ。

 政府が同日の対策で電力、自動車用、人工知能(AI)など3大次世代非メモリー半導体に対する大々的な支援を通じて非メモリー半導体市場占有率を2030年までに10%に高めるという目標を掲げたのは、このような状況を反映したものだ。

 半導体産業の土台を成す材料・部品・装備分野の競争力が落ち、特定の国への依存度が高いという状況も、韓国の半導体産業の弱点に挙げられる。半導体業界は、装備の国産化率が約20%、材料の国産化率が約50%だとみている。特に装備分野では国内メーカーの世界シェアが4%にすぎないと推定される。2019年7月に始まった日本の輸出規制が今も続いている現実と相まって、危険性を高める要素だ。

 政府のこの日の対策は、国家経済の主軸を支えるという名分とは違って、議論を呼ぶところがいくつかある。半導体研究開発(R&D)分野に対して、最大週64時間まで特別延長労働制を認めているのがその一例だ。それ自体が労働界の反発を招き、他の領域に広がる口実になり得る。民主労総のイ・ジョンフン政策局長は「2019年に半導体の材料・部品・装備だけを特別延長労働の事由に明記する方針が発表された時、今後この制度が他の分野にも拡大するかもしれないと懸念したが、それが現実となった」とし、「食品業種も研究開発分野があるが、このような形で事由の拡大が続くと、他の業種の研究開発分野まで広がり、労働時間短縮が形骸化する」と批判した。

 容積率の緩和も、半導体団地だけに止まらない見通しだ。国土交通部関係者は「今後、半導体だけでなく国家戦略産業に指定された他の業種にも容積率インセンティブを適用することになる」とし、「他の先端業種も産業部に指定してほしいと申請することもあるだろう」と話した。化学物質施設基準に対する規制を年末までに大幅に改善することにした部分も、物議を醸している。

 対策の実現可能性についての疑問もある。非メモリー半導体の市場シェアを大幅に高めるという目標は、これまでも掲げられてきた。景気が低迷期に入っており、政府支援にともなう企業投資が計画通りに続くかどうかも不透明だ。産業部が集計した半導体業界の投資計画規模は、今後5年間で340兆ウォン(約35兆8千万円)を上回る。

 漢陽大学のパク・ジェグン教授(融合電子工学部)は、「半導体会社の施設投資の際、許認可に時間がかかり、莫大なインフラ構築費が必要だ。許認可を迅速に進める措置や国費でインフラを支援することは評価できる」と語った。半導体産業団地を造る際「重大で明白な事由」(例えば重大な公益侵害など)がない場合、許認可の「迅速処理」を義務化するよう国家先端産業特別法を改正し、半導体団地の電力や用水など必須インフラ構築費用を国費で支援することにした部分を指す。

 パク教授は「ただし、税額控除の恩恵を大企業側だけ2%引き上げるのでは不十分だ」とし、「半導体業の特性上、材料・部品・装備分野が強くなければならないという点を看過している」と指摘した。また、非メモリー半導体の強化と関連し、「車載用半導体のファウンドリファブ(委託生産施設)の新設案がない」ことも不十分で、補完しなければならない点に挙げた。

 半導体業界側では、インフラに対する国費支援や規制緩和、人材育成案に歓迎の意を示すと同時に、実際に履行されるかどうかに注目している。

 半導体業界関係者は「投資支援から人材育成まで広い水準の支援策が含まれており、歓迎する」とし、「特に容積率の上方修正は、生産能力拡大に大きく役立つだろう」と話した。研究開発分野の延長勤労の拡大についても「業界で常に要求してきたもので、特定期間の集中研究に役立つだろう」と付け加えた。業界の他の関係者は「インフラの国費支援などでは、お金の問題より電力を引いてきて土地補償をするのに時間が長くかかるのが問題」だと指摘した。人材育成案と関連しては「教育部がすでに発表したことをさらに具体化したという点で進展がみられる」としながらも、「修士や博士級の高級人材の問題は一日で解決できず、より精巧に整えなければならない」と語った。

キム・ヨンベ先任記者、シン・ダウン、チェ・ジョンフン、キム・フェスン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1051874.html韓国語原文入力:2022-07-22 02:46
訳H.J

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