今年9月、米国政府がグローバル半導体企業に要求した主要なサプライチェーン情報の提出期限が5日先に迫った。前例のない要求に困惑を隠せなかった韓国企業らは、敏感な情報の露出を最小限にし、資料を提出する見込みだ。
3日の本紙の取材を総合すると、サムスン電子・SKハイニックスなどの韓国企業は、顧客との契約書上の機密維持協約(NDA)に触れない線で、締切期限の8日までに米国商務省に資料を提出する。これに先立って米国商務省は9月23日(現地時間)、ホワイトハウスの半導体サプライチェーン点検会議後に、グローバル半導体企業に対し製品ごとの主要顧客名簿と売上比率、在庫、収率などの情報を含む調査回答を提出するよう通知した。半導体の需給現況の把握を越えて、営業機密も提出せよという趣旨と解釈され、論議が起きた。
韓国企業と米商務省との詰めの異見調整に入った韓国政府は、韓国の半導体企業の機密流出を懸念するレベルの情報を米国に提供する可能性は小さいとの立場だ。産業通商資源部のチェ・ウソク素材融合産業政策官は、本紙との通話で「(米国の要求は)企業が自主的に提出するもので、営業秘密の保護に関する法律など国内法に抵触しない。顧客との契約上、問題になりうる関連情報も、ほとんど提出されることはないと理解している」と述べた。
業界は、米国が資料提出を要求した名分である「サプライチェーン安定化」には共感しつつも、今まで経験したことのない状況が悩ましいという反応だ。韓国半導体産業協会のアン・キヒョン専務は「自国(韓国)政府もこの間こうした情報を要求したことがないので、企業の立場としては頭を痛めている。グローバル企業が供給者として半導体の供給安定化を助けるのは当然だが、思いもよらぬ手続きができたので悩んでいる」と話した。これと関連して、サムスン電子のキム・ギナム副会長は先月26日の「2021韓国電子展(KES)」で、記者団に対し「諸般の事項を考慮し、(米国の情報提出要求に)落ち着いて準備をしている」と明らかにした。
グローバル半導体企業が最も敏感と考える情報は、主要顧客名簿および生産量の資料だ。投資家の間ではサムスン電子とSKハイニックスの多くの顧客は広く知られているが、大型取引業者を除けばこれらの企業が主要取引先を公開したことはない。特に取引先別の製品供給実績は秘密にしてきた。また、サイズが大きい自動車部品とは異なり、半導体の在庫量は外部からでは正確な推定が難しく、個別企業はこうした点を活かして顧客との価格協議をしている。
世界最大の半導体ファウンドリ(受託生産)業者のTSMCを保有する台湾の場合、政府が乗り出して米国の要求に公に反対の立場を表明したが、最近TSMCが立場を変えて資料提出に応じるだろうとの外信報道が出てきた。顧客が注文したオーダーメード型の半導体チップを受託生産するTSMCは、汎用メモリー製品の比重が高い韓国企業よりも顧客情報の露出にさらに敏感であるため、異例の立場変化という評価だ。産業研究院のキム・ヤンペン専門研究員は「TSMCは本当に多様な顧客と契約を結んでいて、情報が公開されれば(顧客どうしで)ライバル業者受注問題が提起されるだろうし、それだけに大型顧客数カ所を除けば情報公開が(韓国企業より)難しい状況」だとし「TSMCと台湾も当初の米国の要求をすべて受容できないとの立場から、(情報提出の)一部は受け入れる側に変わった程度」と評価した。
韓国企業が当初はバイデン政権の“無理な要求”としていたサプライチェーンに関する調査回答を提出することにしたのは、この調査が韓国企業を狙ったものではないとの判断をしたためという見方もある。ある政府関係者は「(米国の半導体サプライチェーンの点検は)車両向け半導体不足のために始まったことだが、韓国企業はメモリー製品を主に販売している。(米国が必要な)非メモリー半導体とは関連が少ないので、米国では(メモリー半導体の主力企業を)あまり考えていないようだ」と述べた。キム専門研究員も「米国は、自国の主要産業であり関連従事者が最も多い自動車産業の正常化のために半導体サプライチェーンを問題にしているので、この問題が解消されれば(情報提出要求も)うやむやになるとみている」と話した。