米国政府がサムスン電子やSKハイニックスを含むグローバル半導体企業に対し、敏感な営業機密まで提出することを要求し波紋が生じている中で、韓国政府が18日に公式立場を出した。米国に対し懸念事項を伝え、今後も積極的に協議する予定という原則的な内容だ。米国の要求が韓国の経済主権を侵害する水準の深刻な事案である点を考えれば、消極的な対応と言わざるをえない。
韓国政府はこの日、ホン・ナムギ経済副首相の主宰で第1回「対外経済安保戦略会議」を開いた。ホン副首相は「企業の自主性(敏感な情報の考慮)、政府の支援性(企業負担の緩和)、韓米間協力性などに基づいて対応していく必要がある」とし、「特に政府は企業界との意思疎通の協力を格別に強化していく」と述べた。この発言だけを見ては、政府が米国の要求にどのように対応するかが分からない。米国との同盟関係を考慮して原則的レベルの立場を明らかにしたものとみられる。
こうした対応は、台湾政府が公に難色を表明したことと対比される。台湾には世界ファウンドリ(半導体委託生産)業界1位のTSMCがある。台湾の国家発展委員会のクン・ミンシン主任委員は先月30日、TSMCは顧客の機密データを提供せず、顧客と株主の権利を危うくする慣行には関与しないという断固たる立場を明らかにした。同委員会はTSMCの主要株主であり、クン主任委員は同社の理事会メンバーでもある。
米国は今回の要求が半導体供給不足問題を打開する次元だとしているが、要求内容をみると納得しがたいものが少なくない。提出項目には製品別に3つの顧客名簿と顧客別売上比率、主要チップの技術段階まで含まれている。自発的提出としつつも、非協力企業には強制的に収集できる手段があるとの警告までしている。米国のこうした無理なやり方は、半導体サプライチェーンから中国を排除していく一方で、米国内に安定したサプライチェーンを構築する意図と解釈される。米国は現在、半導体設計企業であるインテルに莫大な補助金まで与えながら、米国内に製造施設を拡充するよう誘導している。こうした状況で、サムスン電子の機密情報がインテルのようなところへ渡らないと誰が保証できようか。
企業の機密情報は、一度漏出すれば回復不能な被害を招く。韓国政府は、米国がどれほど重要な同盟だとしても、企業と国家の重要な利益に関連した事案では明確に一線を引かなければならない。米国も、両国間の信頼を深刻に傷つける今回の要求が、米国が推進中の技術同盟構築にも役立たないことを悟り、一日も早く撤回しなければならない。