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ワクチン・環境・流動性…世界経済、コロナ「デフレ」から「インフレ」に反転

登録:2021-03-01 08:00 修正:2021-03-01 09:57
現代経済研究院の報告書『グローバル・インフレーション時代の到来』 
ワクチン普及で「抑制された需要効果」、財政・通貨の拡大による流動性 
国際原油価格と鉄鉱石・銅原材料の価格が急騰傾向 
国際社会で低炭素環境コストが増加…「物価上昇圧力」
//ハンギョレ新聞社

 この1年間、全世界が新型コロナウイルス感染症の大流行による需要萎縮の衝撃によりデフレの懸念に陥っていたが、最近はむしろインフレへの懸念が高まっている。

 現代経済研究院が28日に出した報告書『コロナ発のグローバル・インフレーション時代の到来』によると、米国の最近の期待インフレ率は2.24%で、6年ぶりに最高値を記録した。報告書は「最近、米国や韓国など一部の国家では消費者価格が回復傾向を示し、主要国の景気浮揚政策およびワクチン普及の努力などにより、世界経済の回復への期待感が高まり、グローバル・インフレーションへの懸念も強まっている」と診断し、4つの要因を指摘した。

 まず、世界の主要国の通貨量の急激な増加だ。米国の通貨量(M2・市中流動性を示す通貨指数)は、2019年末の15兆3000億ドルから2020年末には19兆1000億ドルと約24.6%増加した。同期間のユーロ圏・日本・英国の通貨量の増加率も、それぞれ11.0%、9.2%、14.9%に達する。中国の2020年の通貨量は前年より10.1%増加し、2016年以降では増加率が最も高かった。財政支出も大きく膨張した。新型コロナへの対応のための追加財政支出は全世界基準で7兆8345億ドル(約835兆円)で、全世界のGDP比で7.4%だ。米国の追加財政支出が3兆5033億ドル(約373兆円)と最も多かった。GDP比で追加財政支出の比率が最も高い国はマカオ(25.3%)だ。全世界の流動性支援の規模は6兆414億ドル(約644兆円)で、GDP比で6.1%だ。日本が流動性支援の規模では1兆4280億ドル(約152兆円)と最も多かった。

 新型コロナウイルスのワクチン接種の進行と集団免疫の達成への期待感により、世界規模で「抑制された需要」(pent-up demand)が発生する可能性もある。米国の投資銀行のJPモルガンのグローバル製造業購買担当者景気指数(PMI・企業の新規注文・生産・出荷・在庫・雇用などの指数)は、2020年4月(26.2ポイント)で底を打ち、2021年1月には52.3ポイントに回復した。基準点(50ポイント)を上回り、景気拡張局面を示している。経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数も、同期間に92.2ポイントから99.6ポイントに回復した。ただし、今なお基準点(100ポイント)を少し下回っている。米国10年国債利回りは上昇を続けており、最近は1.5%を突破したことも景気回復への期待感を反映している。

 国際原油価格と産業用金属価格などの原材料の価格も急騰し、原価上昇インフレーションへの懸念が広がっている。国際原材料価格は回復傾向を続けており、最近は新型コロナ危機以前の水準に達した。世界の主要国の景気回復および中国の需要増加などを受け、最近になり鉄鉱石の価格が8年ぶりに最高値を記録した。新型コロナウイルスのワクチンの普及などにより景気回復への期待感が生じ、銅などの非鉄金属の価格も急騰している。経済学者より実物経済をよりよく予測し、いわゆる「ドクター・コッパー」(Dr.Copper・銅博士)と呼ばれ景気先行指標の役割を果たす銅価格は、2013年以降で最高水準を記録した。

 CRB指数(穀物・原油・金属・貴金属など19の主要商品の先物価格を利用して算出)は、昨年4月に119.9ポイントまで急落したが、1月には173.9ポイントまで上昇した。S&Pゴールドマンサックス原材料指数(エネルギー・金属・農畜産物など主要な24の原材料価格を利用して算出)も、同期間に258.8ポイントから429.0ポイントと大幅な上昇傾向を示した。国際原油価格は、主要国の景気回復および米国での寒波にともなう供給への支障などにより、最近の西部テキサス産油(WTI)価格が1バレル当り60ドルを突破するなど、新型コロナ危機の発生以前の水準を回復し、天然ガス価格も2020年2月の1MMBtu当たり2.2ドルから今年2月には2.88ドルに上昇し、新型コロナ前の水準を上回っている。

 環境コストの増加も物価上昇への圧力として作用している。欧州連合(EU)は、グリーン・ディール(Green Deal)への予算として1兆ユーロ(約129兆円)を、米国は環境・クリーンエネルギー産業に約2兆ドル(約257兆円)の投資を計画している。報告書は「国際社会の低炭素社会への転換が加速され、温室効果ガスの削減目標を達成するための企業の費用負担および投資拡大が物価上昇への圧力として作用する懸念がある」とし、「炭素排出権の価格上昇、炭素国境税の導入および環境・低炭素設備への投資拡大などにより、最終消費財の価格が上昇する可能性が高い」と診断した。

チョ・ゲワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/984785.html韓国語原文入力 :2021-02-28 13:16
訳M.S

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