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[寄稿]コロナ禍の1年、あまりにも韓国的な光と影 

登録:2021-01-06 07:43 修正:2021-01-06 08:22
シン・ジヌクㅣ 中央大学社会学科教授

 2020年は「コロナ時代」が変えるであろう私たちの暮らしと社会の未来に対する不安な予測から始まった。文明史的危機、巨大な断絶、混沌と不確実性、そして大転換のビジョンについて様々な論議があった。2021年を迎え、世界各国で新型コロナウイルスと戦ったこの1年がどうだったのか、韓国の対応方式はどのような特徴があるのか、新年の実践課題が何なのかを振り返ってみる必要がある。

 韓国では感染率だけで「西欧の先進国も大したことない」というふうに(コロナ禍の現状を)単純に捉える雰囲気がある。西欧社会の多くの弱点が明らかになったのは事実だ。しかし、コロナ禍は感染だけでなく、破産や失業、貧困、孤立などを含む多重の危険状況だ。したがって、私たちは防疫や経済、雇用、所得、分配など様々な面で立体的に新型コロナの影響を分析しなければならない。

 まず、防疫の面で、結果だけ見れば、韓国が成功的な事例であることは間違いない。ところがエコノミスト誌による国別新型コロナ対応分析で、各国の条件を考慮した防疫力を見ると、話が少し違ってくる。同調査は、各国の高齢者人口の割合や国際交流の頻度などの条件を考慮し、PCR検査数や死亡者数、医療の対応を測定した。その結果によると、オーストラリアやオーストリア、デンマーク、ドイツなどが最も優秀であり、韓国は“悪くない”程度だ。

 雇用面でも経済協力開発機構(OECD)の雇用予測によると、失業率が最も高い国は英米や南欧、東欧諸国だ。一方、ドイツやオランダ、ノルウェーなどの西欧諸国は低いほうだ。韓国は失業率が比較的低いが、失業率に含まれない非経済活動人口が急増している。

 所得面でも欧米福祉国家の力が目立っている。非営利研究機関「ユーロファウンド」の7月の調査結果によると、パンデミック以降所得が減少したという回答者が40%以上の国はイタリアやスペイン、ポーランドなど南・東欧諸国で、その比率が20%未満の国はデンマークやスウェーデン、オランダ、フィンランドなど西・北欧諸国だった。韓国保健社会研究院の調査結果によると、韓国は同時期32%ほどの人が所得の減少を経験したという。

 このようにコロナ禍の現実を多面的に見ると、韓国の現状が違って見える。韓国の防疫モデルが優秀なのか、経済を善戦したのかは物語の一部に過ぎない。より大きな枠組みで、この危機が私たちの考え方と政策に根本的な省察と転換の契機になったのか、それとも古い経路が続いただけなのかが、本質的な質問だ。

 韓国社会はいつも派手な総量指標と平均指標に目がくらみ、残酷なまでの分配指標を見過ごしてきた。コロナ禍でも同じだ。政府は新型コロナ感染者数と死亡者数、経済成長率、輸出増加率、国民総所得がいずれも最優秀レベルだと強調する。ところがこのような“数字”にこだわる韓国社会と韓国政治は、失業や過労、貧困、自殺、産業災害で倒れている数多くの“人”には手を差し伸べていない。

 政府の対応もあまり変わらない。革新と改革のレトリックが溢れる中、現実ではむしろ古い遺産が復活する契機になった。韓国政府は、強力な行政力で感染を抑え込み、市場の経済活動を正常に保つことに集中した。「韓国版ニューディール」計画は新産業の育成とR&D支援などで韓国企業と科学技術の国際競争力を高めることを目指している。

 これらの取組は、成長中心や企業優先、輸出主導、エリート育成を中心としていることから、古い発展国家の伝統を受け継ぐものだ。ただし、政治の分野では権威主義を民主主義に、軍事安保を保健安全に、発展国家を投資国家に変えた。一方、所得主導の成長、労働尊重、社会、包容福祉国家と、文在寅(ムン・ジェイン)政権初期の中心軸は依然として残ってはいるものの、位置づけは弱体化している。

 2020年のコロナ禍の中で、残念ながら“あまりにも韓国的な”明暗が再び浮き彫りになった。世界最高の防疫、最高の成長、最高の輸出、最高の国家自負心が光り輝く一方、世界最悪の貧富格差、最高の自殺率、最低の福祉支出、最長の労働時間、最多の労災死亡者が、まるで廃墟のように散らばっているのが、韓国社会の偽善的風景だ。

 2021年、韓国社会がコロナ禍を克服する過程はこのような過去に戻る復古ではなく、韓国社会の現実を直視することから始まる癒しと再生の過程でなければならない。果たしてそれが可能なのかについて、正直楽観することはできない。しかし「誰かは絶えず波に逆らって泳ごうと努力し、未来に向けた希望の戦いを止めなかった」というジグムント・バウマンの言葉のように、その誰かが至る所に存在することから希望の根拠を見出せるかもしれない。

//ハンギョレ新聞社
シン・ジヌクㅣ 中央大学社会学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/977340.html韓国語原文入力:2021-01-0602:40
訳H.J

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