政府は最近、モデルナの新型コロナウイルスワクチンの前渡し金を含め、ワクチンの購入で1兆ウォン(約948億円)の予備費支出を決定したが、今後モデルナのワクチンの支払い残金と流通のために予算がさらに1兆ウォン以上必要なことが分かった。政府は残りの予備費でまかなえるという立場だが、あらかじめ十分な予算を用意しておくべきだったという批判が出ている。
政府ではなく国会がワクチン購入費を編成
国会と企画財政部が7日に明らかにしたところによると、政府がこれまでにワクチンを導入するために編成した予算は1兆3000億ウォン(約1230億円)規模だという。昨年9月の第4次補正予算で編成した2000億ウォン(約190億円)と、既存の予算を転用して編成した2000億ウォンの計4000億ウォン(約379億円)に、今年の予算からワクチン購入のための予備費9000億ウォン(約853億円)が加わったものだ。
ワクチン購入の予算は、政府よりは国会が、与党よりは野党が先頭に立って編成している。国会予算決算特別委員会のチョ・ウィソプ首席専門委員は「昨年11月、国会で予算を論議する過程で、まず野党がワクチン購入費を編成すべきだと主張し、この主張を与党が受け入れ、9000億ウォンの予備費が編成された」と述べた。国民の力のチュ・ギョンホ議員も「政府案にはワクチン購入のための予算が一銭もなかったため、野党が主張してワクチン購入費の9000億ウォンが編成された」と明らかにした。これについて企財部の関係者は、「今年の予算案は、昨年8月の予算編成議論を経て9月に発表したが、当時は保健福祉部と疾病管理庁がワクチン購入に関する要求をしていなかったため、これを含めることができず、その後11月に製薬会社との交渉に進展があったため、これを根拠として予備費が編成された」と説明した。
予算決算委員会に先立つ国会保健福祉委員会でも、野党の主張によってワクチン購入費が一度編成されたものの、その後除外されるということも起きている。昨年11月5日、保健福祉委員会予算小委で、国民の力のカン・ギユン議員はワクチン購入費9650億ウォン(約915億円)を編成すべきだと主張し、疾病管理庁もこれに同意した。疾病管理庁のナ・ソンウン次長はこの日、ワクチン購入費9650億ウォンの編成について「受け入れる」とし、「ワクチンが来年、個別企業2社を対象として購入費を用意せねばならないため、3000万人になれば9650億ウォンが必要になる」と述べた。これを受け、福祉委予算決算審査小委員会では9650億ウォンのワクチン購入費が予算案に組み込まれた。しかし、福祉委の全体会議で可決されず、予算は編成されなかった。
政府がコロナ対応関連予算の編成に消極的だったために国会で増額されたケースは以前にもあった。昨年3月の第1次補正予算では、政府は150の陰圧病床を用意するために300億ウォン(約28億4000万円)の予算を組んだが、国会での議論の過程で300床に増え、予算も675億ウォン(約64億円)に増額された。昨年9月の第4次補正予算では、政府案になかったワクチンの購入費1839億ウォン(約174億円)が国会で増額された。政府は「防疫が経済だ」というスローガンを掲げて防疫を強調しているが、肝心の予算は不足したり、まったく無かったりの状況が繰り返されてきたかたちだ。
ワクチン購入費、少なくとも2兆3千億ウォン
今年のワクチンの購入量が当初の予想をはるかに上回ったことで、必要な予算は大幅に増えた。疾病管理庁のチョン・ウンギョン庁長は昨年11月4日、国会福祉委で「今年の補正予算と(予算の)転用で3500億ウォン(約332億円)程が確保されたが、その金額だけでは60%を確保できない」とし「来年度予算で予備費や補正予算として確保しなければならない状況」と述べている。当初、政府は集団免疫の形成のために必要な人口の60%程の3000万人分のワクチンを確保する計画だった。しかし、その後、国会で予算を議論する過程で4400万人分に増えたため、予備費が9000億ウォン追加された。企財部の関係者は「国会予算決算委での議論の過程で、モデルナを含むワクチンの購入費総額が1兆9000億~2兆ウォン(約1800億~1900億円)ほどとなるが、とりあえずモデルナへの前渡し金も支払うため、予備費9000億ウォンを追加し、総額1兆3000億ウォンを編成した」と説明した。結局、4400万人分の購入費だけでも7000億~8000億ウォン(約664億~758億円)がさらに必要となるわけだ。
さらにワクチン導入量は最近5600万人分にまで増え、追加された1200万人分の導入に約6000億ウォン(約569億円)の予算が必要になった。このため、目的予備費7兆ウォン(約6640億円)だけではワクチン購入が難しい状況に直面している。7兆ウォンのうち、第3次災害支援金として支出する予定の4兆8000億ウォン(約4550億円)と、最近ワクチン購入のために決定された1兆ウォンを除けば、1兆2000億ウォン(約1140億円)が残るが、追加で必要な財源は1兆3000億~1兆4000億ウォン(約1230億~1330億円)に達するからだ。政府は一般予備費1兆6000億ウォン(約1520億円)もあるため、これを利用できるという立場だが、あらかじめワクチンの購入のための予算を十分に確保しておくべきだったという指摘が出ている。
翰林大学江南聖心病院感染内科のイ・ジェガプ教授は、「米国はワクチン開発に直接投資もするなど、外国では十分な予算を充てて先行購入してもいるが、企財部は(ワクチン購入を)急いでいない」と語った。そして「緊急の状況とは言うものの、予算編成の際、企画財政部は予算編成の根拠を要求する。福祉部などでは変動性が大きいため根拠を作り出せず、予算案が作れなかったのだろう」とし「緊急の状況にふさわしい積極的な行政が必要だ」と述べた。