韓国政府がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大による輸出企業の被害を減らすため、貿易金融に3兆1千億ウォン(約2900億円)を追加投入する。また今回の事態で直撃を受けた中小・中堅企業に焦点を合わせ、金融および物流・通関への支援なども大幅に強化する。さらに、日本の輸出規制、COVID-19など対外的要因による貿易リスクを減らすため、グローバル・サプライチェーンを確保し、長期的に安定した貿易構造を構築していくという目標も掲げた。
政府は20日、チョン・セギュン首相主宰で拡大貿易戦略調整会議を開き、「COVID-19による企業の困難解消および輸出支援対策」を確定した。まず、輸出の道が塞がり、一時的な流動性危機に直面している企業を支援するため、貿易金融の規模を当初の計画より3兆1千億ウォン多い260兆3千億ウォン(約24兆円)に増やした。このうち半分以上の156兆ウォン(約14兆5千億円)を上半期に投入し、中小・中堅企業対象の貿易金融をこれまでで最大の105兆ウォン(約9兆8千億円)供給する。また、COVID-19と関連した被害企業への金融支援プログラムを拡大し、輸入者の代金未払いで被害を受けた中小・中堅企業に貿易保険金の80%まで仮支給し、補償期間も従来の2カ月から1カ月に短縮する内容を柱にした貿易保険迅速補償と輸出履行資金優遇処置を取る。
COVID-19の拡大を防ぐため、中国政府が省間移動を阻止したことで、材料の需給と製品の運送に支障をきたしている企業が部品の緊急調達のために航空運送を利用する場合、特例を与えて海上運賃を基準に関税を賦課することにした。航空運賃は海上運賃より15倍以上高い。
工場稼動を止めた中国内の韓国企業の操業再開を繰り上げるため、現在日本に対する159のホワイトリスト品目に適用する「許認可ファストトラック」を緊急需要品目に拡大適用し、操業に必要なマスクや手洗浄液など、保健用品なども送る方針だ。また、納期遅延などで紛争が生じた場合、迅速な対応が難しい中小企業及び小商工人を対象に、仲裁所要費用の50~95%(2億ウォン以下の小額事件)まで支援して無料相談を提供するなど、紛争解決サービスを支援することにした。
これと共に政府は、今回の事態を機に、グローバル・サプライチェーンの多角化と安全性を大幅に強化できるよう、中長期的な政策対応にも乗り出すことにした。半導体やディスプレー、自動車など6分野の品目と主要国家のサプライチェーンを分析し、危機警報の対応システムを稼動して、サプライチェーンの特性・品目の類型によって供給安定化に向けた差別化された政策を推進するということだ。また、自然災害や輸出規制など予想できない要因によりグローバル・サプライチェーンが崩壊した場合は、現行の材料・部品・装備の推進システムや特例制度、100以上の支援プログラムをフル稼働させる。中長期的には人件費などの負担で外国に出ていた国内企業のUターンの活性化や海外投資の誘致、危険分散のためのサプライチェーンの多角化を推進することにした。特にUターンを誘導し、Uターン企業が国内に早く定着できるよう、固定費用の削減、生産性向上などのインセンティブを拡大し、需要企業と連携するなど、各社に合わせた支援を強化する。
長期的には中小・中堅企業を中心に輸出の生態系を拡大するため、複雑な加入手続きを大幅に減らしたオンライン・ダイレクト貿易保険商品を発売し、2022年まで輸出中小企業の半分が加入できるように督励する方針だ。また、政府は中堅企業、段階別適合型支援などを内容とする「第2次中堅企業基本計画」(2020~2024)を立てることにした。
ソン・ユンモ産業通商資源部長官は「米中貿易紛争、日本の輸出規制に続き、COVID-19はこれまで効率性を基盤に構築してきた韓国グローバル・サプライチェーンに対する再認識を求めている」とし、「政府と民間が力を合わせて、輸出リスクの克服と貿易構造の革新を遂げていくことを望んでいる」と述べた。