第4次産業革命の主導権争いと地域貿易協定(RTA)の拡散が貿易紛争をもたらす可能性があると、韓国銀行が分析した。
5日、韓銀調査局国際経済部は「2020年以降グローバル経済の行方を左右する主要イシュー」の最初の報告書で、第4次産業革命の主導権争いや国際貿易秩序の再編などを5大要因と挙げながら、このように展望した。米国の場合、グーグルやマイクロソフトなど民間企業が第4次産業革命を主導している一方、中国は政府主導で人工知能(AI)とビックデータの分野で競争者として浮上した。米国のデータ革新センターの評価結果によると、モバイル決済やモノのインターネット(IoT)などの情報量の面で、中国は米国と欧州を追い越した。これに対し、米国は華為(HUAWEI)など中国の情報通信技術(ICT)企業を取引制限リストに載せるなど、牽制に乗り出している。ドイツや日本も、人工知能分野の投資を大幅に拡大している。このような第4次産業の主導権争いが激化する過程で、主要国間の貿易摩擦が誘発される可能性があると韓銀は予想した。
世界貿易機関(WTO)基盤の多国間貿易体制の弱体化と、地域貿易協定を通じた新しい国際貿易秩序の再編の動きも、世界経済の地形を左右する要因として挙げられた。全体加盟国の総意によって導き出される多国間協定とは異なり、両国または複数国間の地域貿易協定は2006年の202件から先月には302件に増えた。最近は、知的財産権やデジタル貿易など通商問題についての議論が活発に行われている。このような地域貿易協定の拡散が、力の優位に基づいた貿易秩序を招きかねないと、報告書は診断した。米政府は米国やメキシコ、カナダ協定(USMCA)で自動車部門原産地規定の強化と非市場国家との自由貿易協定(FTA)締結制限を通じ、自国市場の保護と中国への圧迫に力を入れている。
グローバルサプライチェーンの再編も5大要因に挙げられた。同報告書は特に、最終財の生産拠点が中国から低賃金労働力の豊富なASEAN地域に移転される分業構造の変化に注目した。2010~2018年における最終財の輸出割合は、中国が58.5%から52.8%に下落した反面、ASEANは33.5%から38.4%に上昇した。ASEANが中国から中間財を輸入し、最終財を生産する垂直的分業構造が行われているのだ。中国の産業高度化政策の推進や製造業の生産コストの速い増加と貿易紛争による関税引き上げの影響で、このような分業構造の変化は続くものと見られる。中国内の対米完成品輸出の割合が高いグローバル企業は最近、ASEAN地域への生産設備の移転を推進している。
中国の質的成長政策の維持も注目すべき事項である。中国政府は2010年代に入って短期浮揚策よりは消費中心の内需基盤の拡充や借入の縮小など、持続可能な質的成長戦略を推進してきた。韓銀は、雇用創出能力の優れたサービス業の発展や労働力の供給減少傾向を考慮すると、中国が景気刺激政策へと転じる可能性は低いと予想した。過度な企業負債比率や債権不渡り、中小銀行の不良負債の増加など、金融リスクの拡大への懸念から、流動性の過剰供給も避ける必要があると見ている。質的成長基調の維持による投資減少で、中国の世界生産基地の役割は弱まる一方、消費市場としての地位は高まると予想した。
地球温暖化など国際的な気候変動への対応も主要課題として取り上げた。特に今年はパリ気候変化協定によって、温室ガスの削減目標の更新と2050年までの長期低炭素発展戦略の提出期限であるだけに、関心が集まっている。欧州連合(EU)は、先月の首脳会議で、気候変動政策(グリーンディール2050)を発表し、関連事業に今年の予算(1687億ユーロ)の21%を割り当てた。クリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は、グリーン企業に対する融資の緩和や債券購入の拡大(グリーン量的緩和)を検討していると述べた。気候変動への対応による環境規制の強化は、主要産業の生産や貿易に影響を与えるだろうと、韓銀は予想した。造船産業の場合、液化天然ガス(LNG)の需要が増え、運搬船の発注が拡大するものと見られる。 技術力が高い国内造船業者の運搬船の受注割合が95%と圧倒的な中、中国と日本の企業の挑戦が激しくなるだろうと見通した。