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「力の論理」に襲われた自由貿易…岐路に立たされた「輸出韓国」

登録:2019-07-05 09:31 修正:2019-07-05 10:31
米中紛争に日本も通商戦争に加わる 
自国企業を中心に生産・供給の再編狙う 
「韓国の被害は大きいが、慎重に対応すべき」
日本が韓国に輸出規制を施行した初日の4日、日本の安倍晋三首相が今月21日に行われる参議院選挙を控え、福島県福島市で初の遊説を行っている=福島/共同・聯合ニュース

 今月6日は、米国と中国が自国の市場に入ってくる相手国の輸入製品に高率の関税爆弾を爆発させ、米中貿易戦争を開始してちょうど1年になる。日本政府は4日午前零時から韓国に対する半導体素材など3大戦略物資の品目別輸出統制措置を実行した。ドナルド・トランプ米国大統領の「自国優先主義」が触発した米中貿易紛争が長期化する中、安倍首相もトランプ大統領の通商報復を真似て、通商戦争に加勢したかたちだ。通商大国が世界の自由貿易の秩序を混乱に陥れ、合理的論理もなく「独占・寡占的輸出地位」など力の論理を背景にした貿易報復が横行している中、韓国の“輸出経済”も岐路に立たされている。

 日本の対韓国戦略物資輸出統制によって、三つの品目を韓国に輸出する日本企業はさっそくこの日から輸出契約一件ごとに許可申請を出さなければならない。これまでは最大3年分の物量に対して一度に国外持ち出し許可を受けることができた。日本経済新聞は同日、「(韓国企業の)SK関係者が、取引先である日本の部品・素材企業に、4日までに可能な限り多くの在庫を送ってほしいと要請した」と報じた。表向きは全面禁輸措置を取ったわけではなく、世界貿易機関(WTO)協定の相互互恵自由貿易の精神に反するという批判を免れようとしたものの、日本は事実上、韓国への戦略物資輸出を封鎖するという考えだ。輸出承認・許可審査に通常3カ月ほどかかるため、今回の処置による初の輸出制裁発動例が直ちに出る可能性は低い。しかし、安倍政権は韓国に対する“報復第2弾”として、先端材料の輸出に関し「信頼可能な」特定国家は許可申請を免除・優遇する「ホワイト国」リスト(27カ国)から韓国を除外する処置を来月にまた取り出すものと見られる。

 前日、ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、安倍政権の今回の輸出規制を取り上げた記事で、「安倍政権が表向きには自由貿易信奉者を名乗りながらも、トランプ大統領の(貿易報復)通商戦術を採用している」と批判した。ユ・ミョンヒ通商交渉本部長も4日、ソウル貿易保険公社で開いた「日本の輸出統制に関する関係機関対策会議」で、「日本の処置は国際規範に反しており、長い期間定着したグローバル供給システムを揺るがして、世界経済に大きな脅威として作用するだろう」と述べた。戦後の数十年間、グローバル標準規範として拡散してきた世界自由貿易秩序と規範を、安倍政権が壊しているということだ。「強制徴用賠償判決」を名分に掲げているものの、韓国の半導体産業など情報技術(IT)製品の国際分業秩序における生産・供給価値連鎖を、日本中心に再編しようという狙いがあるという分析もある。

 日本のマスコミも連日、安倍政権の貿易報復を批判する論評を一斉に掲載している。毎日新聞は同日付の社説で、「最大の問題は、日本が主張してきた『ルールに基づく自由貿易の推進』という理念に反することだ」としたうえで、「資源が乏しい日本は活発な貿易で発展してきた。ルールに基づく自由貿易は通商国家の生命線だ」と指摘した。同日付の東京新聞で、長内厚教授(早稲田大学ビジネススクール)は「日韓が共倒れになり、国際競争力が落ちれば、製造業の分野で中国が伸長する。日本と韓国はいがみ合っている場合ではない」と述べた。

 この1年間報復に報復を重ねてきた2大貿易大国(米中)の間の貿易紛争は、突破口をなかなか見出せないまま激化の一途をたどっている。米中通商戦争の長期持続が一つの“新たな悪循環体制”のように強固化され、世界経済の低迷をもたらしている中、韓国に及ぼす否定的な影響も顕在化し始めた。

 ハンギョレが世界貿易動向集計機関のオランダ経済政策分析局(CPB)の統計を調べてみると、新興国の中でも韓国が“最も大きくかつ広く”大国の通商戦争の被害を受けていることが分かった。この2月から4月までの3カ月間の輸出増減率を見ると、全世界で-0.5%(前年同期比)、新興市場経済で-1.0%、先進経済で+1.2%だ。韓国は同期間中、輸出減少率が平均-7.2%に達する。米中貿易紛争の波が商品の輸出に本格的に波及し始めた昨年12月から先月までの輸出は、7カ月連続で減少している。

 韓国が主に中間財を販売する中国への輸出が急減し、主要輸出市場の一つである米国の輸入が急減していることが最も大きな要因とされる。貿易戦争の影響で、中国の世界輸出は昨年10月(世界貿易量の年中最高値)の14.3%(前年同月比)から、今年5月には1.1%へと大幅に減速した。米国の全世界の輸入も、同じ期間に9.0%から-0.02%へと大幅に減少した。今年1~6月基準で、韓国全体輸出で各国市場が占める割合は、中国が24.3%、米国が13.6%、日本が5.3%だ。日本産製品の輸入額は韓国の全体輸入額の9.7%を占める。

 通商大国の自由貿易秩序の破壊行動が相次ぎ、世界貿易(輸出入)の伸び率に対する悲観もますます深まっている。今年の世界貿易の伸び率の見通しを3.6~3.7%と予測(昨年末)した経済協力開発機構(OECD)と世界銀行(WB)は、最近この見通しを2.1%(OECD・5月)~2.6%(世界銀行・6月)に大幅に下方修正した。世界貿易が減れば、韓国経済は直ちに直接的な打撃を受ける構造だ。通商当局の高官は「韓国は輸出で成り立っている経済だ。国際社会は韓国を『経済発展の過程で数十年間自由貿易の恩恵を受けた国』だと言う。こうした状況で、韓国が輸入規制を発動することも難しく、うかつに対応すれば、もっと大きな報復に遭う可能性もある」とし、対応の難しさを指摘した。

チョ・ゲワン記者、東京/チョ・ギウォン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/900582.html韓国語原文入力:2019-07-04 21:42
訳H.J

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