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韓国政府のシステム半導体支援で…サムスン、10年間に2兆円強の減税特恵

登録:2019-05-02 21:09 修正:2019-05-03 08:04
技術研究費、最大30%控除 
設備投資額の1%も減免 
中小設計企業への支援は微々 
 
SKハイニックス ファウンドリは工場を中国に移転 
他のファウンドリ企業は小規模 
半導体設計ファブレス企業も劣悪 
サムスンとの協力に政府は支援を集中 
大企業と中小企業間の不公正慣行は相変わらず 
業界では「サムスンだけが1位になっても 
ファブレスが生き返るわけではない」
文在寅大統領が先月30日午後、非メモリー半導体ビジョン宣言式が開かれたサムスン電子華城キャンパスの部品研究棟(DSR)で、世界初の極端紫外線(EUV)工程7ナノで出荷されたウェハー・チップにサインをしている=華城/大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 政府のメモリー以外の半導体(システム半導体)支援政策は、“サムスン減税”が核心であることが分かった。サムスンが非メモリー半導体部門に10年間で133兆ウォン(約13兆円)を投資すれば、数十兆ウォンに及ぶ法人税控除の特恵を受けることになる。肝心な非メモリー半導体環境の“基礎土壌”である中小設計専門企業(ファブレス)には関係がない。結局、メモリー半導体偏重構造のせいで脆弱なサムスン電子の“新しい収益源作り”に、政府が減税で全面的な支援をするわけだ。

 政府は、最近出した「非メモリー半導体のビジョンと戦略」で、ファウンドリ(委託生産)企業支援対策の一つとして税額控除を前面に出した。非メモリー半導体の設計・製造技術に関する研究費を、租税特例制限法により最大30%控除対象とする「新成長動力・基礎固有技術」リストに含めることにした。サムスン電子が明らかにした研究開発費の規模は、今後10年間の投資額133兆ウォンのうち73兆ウォン(約7兆円)だ。30%で単純計算すれば、税額控除額は22兆ウォン(2兆円強)になる。すでに10ナノ以下のファウンドリ製造工程は、2月に税額控除リストに含まれた。ファウンドリ設備への投資額60兆ウォン(約6兆円)に対しても税額控除がなされる。大企業の場合、投資額の1%であるから、税額控除の規模は6千億ウォン(約600億円)に達する。サムスン電子が、研究開発費と設備投資の2種類の控除を受けるためには、それぞれ2021年末と2019年末と決められている終了期間を延長しなければならない。ソン・ユンモ産業通商資源部長官は「関係機関と深い共感が形成されている」とし、「(具体的な税制支援の内容は)近い将来、別途発表があるだろう」と話した。

 事実上、減税支援はサムスン電子だけのためのものということだ。サムスン電子とともに国内4大ファウンドリ企業である「SKハイニックスシステムIC」は、中国の無錫に工場を移転しているため、税制支援の対象でない。新規研究開発や設備投資を大々的にすることが難しいDBハイテックなどの小規模ファウンドリ企業も支援を受けられない。漢陽大学のパク・ジェグン教授(融合電子工学部)は、「ファウンドリは、メモリー半導体を生産した余剰の遊休設備を活用して作るのがはるかに有利であるため、新生企業が参入することは難しい」と話した。

 こうした特恵は、財閥グループを“共生”に誘引する“ニンジン”という評価もあるが、不適切だという指摘が多い。サムスン電子が長期にわたり大企業と中小企業間のタテの取引などによってメモリー半導体で大きな収益を得たなか、「遅れた未来投資」にまで政府が支援することは行き過ぎだということだ。建国大学のチュ・サンヨン教授(経済学)は「中小企業に対して国家が税金を動員して投資と研究開発を支援することは正当化されるが、十分な資金と情報で自前のイノベーション力を備えた大企業の投資まで政府が過度に牽引しようとするのは不適切だ」と指摘した。

 しかも、サムスン電子はすでにファウンドリ事業の強化に始動をかけた状態だ。2017年5月にファウンドリ事業部を新設し、昨年には台湾のUMCと米国のグローバル・ファウンドリ(GF)を抜いて“世界ファウンドリー2位”に上がった。市場調査機関ICインサイツの集計で、ファウンドリ1位の台湾TSMCの昨年の売上高は342億1千万ドルだ。サムスン電子のファウンドリ事業の昨年の売上高は104億ドルまで増えた。

 投資力が豊富なサムスン電子とは違い、ファブレスは技術開発費、高級人材、委託生産するファウンドリとの協力など、全ての面で劣悪だ。市場調査機関IHSによれば、昨年のファブレス市場の規模は850億ドルで、ファウンドリ(710億ドル)より大きいが、50位圏内に入る韓国のファブレス企業はシリコンワークス(売上高7億ドル)だけだ。しかし、政府が出した政策のうち、ファブレス支援策は相当部分がサムスン電子など大企業の協力と互恵に依存している。ファウンドリの開放拡大や民間企業23社で構成した「アライアンス2.0」を通した設計需要の創出、民間が主導する1千億ウォン(約100億円)規模のファブレス専用ファンドなどがすべてそうだ。ファブレス専用ファンドは、2015年にもエンジェル投資家を通じて構成を試みたが失敗した経緯がある。

 実際、ファブレス企業らは政府の対策に首をかしげた。大企業と中小企業の間に依然としてある不公正取引慣行、サムスンなど財閥中心の産業政策、民間ファンドの実効性に対する疑問のせいだ。技術集約半導体(SoC)分野のあるファブレス関係者は「ファブレスは、サムスンが同伴成長する努力をしてこそ“研究所”でなく“市場走者”になりうる」と話した。自動車分野のファブレス関係者は、「サムスンだけが1位になっても、ファブレスが生き返るわけではない。国内の200余りのファブレスに政府の研究開発費を割り振って、サムスンは一人で進むならば今回も失敗する」と話した。スマートフォン分野のファブレス関係者は「政府の投資のうち、ファブレスの持分がどれくらいになるのか分からない。民間が作ったファンドも成果のない長期投資はしないだろう」と話した。

チェ・ハヤン、シン・ダウン、ソン・ギョンファ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/892330.html韓国語原文入力:2019-05-02 08:23
訳J.S

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